瀬川 浩志 (監督) 映画『たまゆらのマリ子』について【2/5】
2018年12月1日(土)~12月14日(金)、池袋シネマロサにて公開終了
公式twitter (取材:深谷直子)
――海外の映画祭でとても評判がよく、昨年のレインダンス映画祭では作品賞と脚本賞にノミネートされましたね。もともと映画祭を意識していたところもあるのでしょうか?
瀬川 戦略的とまではいかないんですけど、前作の『焦げ女、嗤う』はアップリンクさんで初めて劇場公開していただいて、劇場公開という目標を実現させることができたので、今回は海外の映画祭に挑戦したいというのは頭の中にはありました。脚本賞はビックリしました。脚本は提出していないので、字幕と作品で選んでいるんだなあと。
――ああ、そういうものなんですね。過激なだけではなく、繊細でちょっと文芸調の感じもあるし、サイコスリラー要素もあってすごく面白い脚本だと思います。外国人記者の映画評で、ロマン・ポランスキーの『反撥』(65)を引き合いに出すものがあったそうですね。
瀬川 古いスリラーは好きで、実際この映画には『反撥』の影響を受けているところがあるのかもしれません。あれも妄想に囚われる女性の物語で、壁から腕が出てきたりするんですよね。
――なるほど。そんな妄想に取り憑かれて大変なことになっていくマリ子役を、牛尾千聖さんが見事に演じていました。初めて見る女優さんでしたが、勢いのある演技が素晴らしかったです。
瀬川 牛尾さんのことは以前、出演していた「マレビトの会」の舞台を観に行って、そこで知り合っていました。「マレビトの会」は前衛的で、あんまり物語があるような芝居じゃないんですけど、牛尾さんの演技がすごくパワフルだったんです。見た目は柔らかい雰囲気の方なのに、舞台上では獣というか(笑)。パワーに魅了されて、いつか一緒にやりたいと思っていました。
――同じ京都出身なんですよね。
瀬川 そうです。知り合ったのは東京に出てきてからですが。
――台詞の関西弁の使い方が面白かったです。普段は標準語で話しているのに、心の中では関西弁で怒号しているという。
瀬川 今までも関西弁のキャラクターを描くことが多かったんです。映画を撮り始めたころは友達から「標準語の台詞が下手だから関西弁で書いた方がいいよ」とか言われていて、今はそんなことはないと思うんですけど、そのクセで毎回関西弁のキャラクターを出していたんです。で、今回も主人公のマリ子に関西弁を話させたんですが、今回は一人の人間の中での切り替えというか、本音のときが関西弁で普段は標準語という使い分けをして、作品の世界に活かせたんじゃないかなと思います。
――牛尾さんだから関西弁、というところもあったんでしょうか?
瀬川 ああ、そうですね。もうネイティブで好きに喋ってくださいと。そこの違和感は、特に関西人がうるさいので(笑)。
出演: 牛尾千聖 山科圭太 三浦英 後藤ひかり 加藤智子 福原舞弓 根岸絵美 西尾佳織 高橋瞳天 柳谷一成
監督・脚本・編集:瀬川浩志
撮影・照明:星野洋行 録音: 川口陽一、間野翼 制作:藤岡晋介 助監督:滝野弘仁
ヘアメイク:岡野展英、北野澤なおゆき 音楽: 中川だいじろー 整音:日暮謙 カラリスト:今西正樹
特殊造型: 相蘇敬介(株式会社リンクファクトリー)
© 「たまゆらのマリ子」製作委員会 公式twitter