インタビュー
まだ、人間/松本准平監督
写真 SUNAO ©Offic e Matsuzawa 2012

松本准平 (監督)

閉塞する現代を描写し、3・11の出口を預言する話題作
「まだ、人間」劇場公開前特別インタビュー

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2012年5月26日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

松本准平 1984 年、長崎生まれ。東京大学で建築設計を学び、同時に、お笑い養成所に通い芸人を志す。その後、仲間とNPO 法人を立ち上げて、政治的・社会的な影響を持つ映画の製作を開始。建築においてはル・コルビュジェとエイゼンシュテインのモンタージュ理論を取り上げて、建築のシークエンシャルな体験を分析研究。NPO法人においては、成人式で流すためのメッセージ性の強い映画を製作し、新聞などで取り上げられた。
以後、社会の闇の中でもがく人々を描いた作品を数本製作。中編「デーアフターつもろー」は、自主制作ながら有名キャストを積極的に起用。続く長編「エデン」では、社会ではなく、人間そのものの闇を見つめ、物議をかもす過激な内容となった。劇場デビューとなる今作「まだ、人間」はこれまでの作品を総括し発展させた形をとり、現代の東京を舞台に、人間の矛盾を抉り出し、同時に確かな希望を見つけようとする群像劇。現代に生きる上での個人的な想いや葛藤を、力強くぶつけた鮮烈な作品となった。
STORY
一人は、金に憑かれたエリート。 一人は、恋人の死の謎を追う女。 一人は、キリストに縋る同性愛の青年。 絶望の闇の中で<絶対愛>を希求する──魂の乱反射。 「まだ、人間」の劇的終幕<カタストロフィ>まで、あと132分。
「東京の真ん中はからっぽ。僕たちの真ん中にはいったい何があるんだろう。」 一人の男が殺され、そして金が消えた。 大手企業のエリートサラリーマン達也は、儲けのため彼に不正流用した金を探して、 死んだ男の婚約者であったルカと出会う。金を探せば犯人も見つかると考え、動き 出す二人。 一方、達也はその捜索の途中で、大学の後輩であるリョウと出会い、金のない彼を 自宅に住まわせていた。同性愛者のリョウは密かに達也への想いを胸に抱く。しか し、リョウには知られざる過去があり… 乱れ、足掻き、もがいて、交錯していくそれぞれの想いや言動は、やがて魂の絶叫 へと変わり、三人は思いも寄らない展開へと吸い込まれてゆく。

家族・経済・社会――人が描いたあらゆる神は死んだ。
「まだ、人間」が映し撮った、現代という時代

『まだ、人間』1 『まだ、人間』2 (松沢直樹:以下松沢)  神は死んだ――かつての哲学者が放った言葉ですが、本作は、この言葉がぴったり当てはまるように思うんです。私は、本作を2回観ていますが、今日の試写を見て、改めてそう思いました。

(松本監督:以下松本) どういうことでしょうか?

松沢 今の日本は、日本が経済成長を続けていた時代の常識に縛られているように思うんです。経済がいつまでも成長し続けることはありえないことだし、飽和点に達していることは、みんな薄々感づいている。加えて、3・11の震災と原発事故で、皆が思い描いていた社会の実現が、ほぼ不可能になった。それにもかかわらず、自分たちが思い描いてきたことが、実現不可能になったということを、なかなか直視しようとしない。
本作の3人の登場人物が造り上げていくストーリーは、今の日本社会の縮図のように見えてくるんです。山本という人物を通じて、婚約者だったルカ、金を貸した達也、達也の大学の後輩のリョウがつながっていくわけですが、本作の後半では、その関係に必死にすがろうとする3人が描かれていますよね。
この3人の姿は、世代に関係なく共感を呼ぶと思うのですが。

松本 今の時点では、若い人のほうが、共感してくれる方が多いように思います。もっとも、年配の方は、専門的な視点で映画をご覧になる方にしか見ていただいていないので、ふだん映画に接しない方に見ていただいた時、どんな反応がかえってくるのかわからないですけど。
映画の文法に従って作られた作品ではないですからね。たとえば、3人の背景をもっと緻密に描くといったこともその一つですが、僕はそうしない方針で本作を撮りましたので。

まとまりの良い映画を作るよりも時代のムードを、丁寧に拾い上げることをテーマに

松沢 本作を最初に見せていただく前に、この作品にはカタルシスはないとおっしゃっておられたのはそういうことでしょうか。

松本准平監督松本 そうですね。たとえばこの作品では、性的な描写を含む人間の愛情を撮っているわけですが、一般的な恋愛の形を丁寧に映していったほうが、映画の文法にも沿いやすくなりますし、多くの方に受け入れられやすい作品になるでしょう。そのことよりも、今という時代のムードを丁寧に拾い上げて描写することを選んでいます。

松沢 私は、逆にそのことでカタルシスを得られる気がするんです。さっき、日本の高度経済成長期のことを引き合いに出しましたが、日本は第二次世界大戦に敗れた際に、今までの価値観や倫理観が通用しなくなったことを、明確に告げました。いわば、「神は死んだ」ということを明確に告げたわけですね。今また同じような時代に近付いていながら、誰もそのことを明言しようとする人はいません。
本作は、そのことを明確に告げているように思います。ショックを受ける方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの方にカタルシスを与えるのではないでしょうか。

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まだ、人間
監督・脚本・編集・製作:松本准平
企画 : 松本准平 辻岡正人 音楽:鈴木光男 撮影:関将史 録音:日暮謙 主題歌 :チーナ
出演:辻岡正人,穂花,上山学,でんでん,根岸季衣,大澤真一郎,増田俊樹,三坂知絵子,柴やすよ,加藤亮佑
2011/日本/カラー/FullHD/BD上映/ステレオ/132分 配給:ティ・ジョイ ©2011 『まだ、人間』フィルムパートナーズ
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2012年5月26日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

2012/04/28/19:49 | トラックバック (3)
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