伊原剛志( 俳優 )
映画『A LITTLE STEP』について
<A LITTLE STEP 日本版予告編>
「硫黄島からの手紙」でハリウッド映画への進出を果たした伊原剛志氏が、アメリカで撮影した全編英語の作品を製作・脚本・主演をした短編があると知った。その作品「A LITTLE STEP」は、準備している長編のプリクエル(前編)にあたるという。俳優だけでなく、映画製作へ積極的に乗り出した理由を聞きたくて急きょインタビューを行った。
(取材:わたなべりんたろう)
63年11月6日、大阪府生まれ。高校卒業後、俳優を志し単身上京し、83年に青井陽治演出のパルコ劇場「真夜中のパーティ」で初舞台、84年に鈴木則文監督の学園アクション・コメディー「コータロー・まかりとおる!」で映画デビューする。96年にNHK朝の連続テレビ小説「ふたりっ子」でヒロインの幼馴染役を演じ、一躍全国的に知られる。
以後、順調に映画、テレビドラマ、CMに登場し、94年、坂東玉三郎演出「海神別荘」での演技は高く評価された。04年、フジテレビ「ラストクリスマス」、NHK大河ドラマ「新選組!」に出演。05年、重松清氏原作の映画「ヒナゴン」に主演。硬軟を巧みにこなせる演技派と評価を得る。06年のクリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」の西竹一中佐役でハリウッドデビューし、海外作品への進出を果たす(今作で日本映画批評家大賞助演男優賞を受賞)。
その後も「叫」、「ヒートアイランド」、「築地魚河岸三代目」などの作品に出演。06年、自身のこれまでの半生を書き綴った著書「志して候う」を発売。現在、4年ぶりの舞台としてシアタークリエ「ガス人間第1号」(10/3―10/31)に出演中。
<STORY>
小学生のアレックス(スカイラー・アレクサンダー)は埋めがたい寂しさを抱えていた。父は、昼間から酒を飲んではアレックスに買出しに行かせるようなだめ親父、母は残業に追われてアレックスとはすれ違いが続いていた。友達と遊んでは寂しさをまぎらわしていたが、アレックスは満ち足りなさを感じていた。テレビで見た“自分探しの旅”というフレーズが頭に印象的に残っていたアレックスは、手紙をくれた祖父を尋ねて両親に内緒で旅に出る。道すがら日本人旅行者・一郎(伊原剛志)と出会う。ある目的を持って久しぶりにアメリカを訪れていた一郎。単なる行きずりの出会いは数奇な運命の交差だった。
――今作の製作のきっかけは何だったのでしょうか?
伊原 3人の息子をもつ僕が、ずっと親子の父と子の話をとりたいと考えていました。自分の思い描く親子で大事なことは『どうやって親が子に背中を見せていけるのか?』ということではないかと思っていました。親の背中というのは、とても日本的なものと考えられるかもしれないですが、世界共通のものだと思っています。そして、その物語をアメリカで、自分以外のキャストは全てアメリカ人、そして全て英語でやりたいと、この企画をあたためていました。
――「硫黄島からの手紙」でのイーストウッド監督の現場を経験したことは、今作を製作するきっかけの一つになっているのでしょうか?
伊原 確かに「硫黄島からの手紙」はとても刺激を受けた現場だったので、きっかけの一つになっています。ただ、俳優としてだけでなく、作る側への興味は以前から持っていました。「硫黄島からの手紙」の後に、アメリカのエージェントもつき俳優組合にも入って、時間があればアメリカに行って生活をし、オーディションを受けたりしています。英語の修得には、まず現地で生活することが大事だと思っているのも、時間があればアメリカで生活をしている理由にあります。アメリカで今作の監督の(中村)哲平に会いました。
――こちらも助監督や美術助手を経験後に10年強のサラリーマン生活を経て、現在ライター及び脚本をして短編の製作もしています。海外の映画学部や映画学校で勉強をしている友人もいますのでいろいろと経験したり聞いていますが、今作の製作過程で海外と日本の映画製作の違いを感じたでしょうか?
伊原 アメリカは映画の産業として確立されている度合いと撮影に協力する態勢の違いは感じます。砂漠でのシーンはLA郊外の砂漠で撮影しているのですが、ここは有名な撮影場所でいつも警官が二人ついていました。警官は非番の日にアルバイトで撮影に立ち会うんです。だから、1日でも撮影が延びたり、変更になると経費がすぐに増えてしまう。今作では40人の方々が協力してくれています。みんなボランティアです。製作者もぼくなので、いろいろと節約をして弁当の手配も自分でしました。アメリカにも進出している牛角の社長さんを知っているので、牛角さんに協力していただきお弁当を作って出していただきました。劇中音楽を手掛けてくれたのは「踊る大捜査線」の音楽で知られる松本晃彦さんです。友人ということで無償でやっていただき感謝しています。音楽があがってきたときに、映像にとてもあっていて感激しましたね。
――具体的にはどうやって準備していったのでしょうか?
伊原 キャストはオーディションしました。撮影は1週間で初日は子供二人のシーン、最後はスーパーでのシーンでした。製作費は400万円でしたから、効率よく撮る方法をまず考えました。
――プロダクションのクオリティから製作費は2000万円ほどだと思いましたので、400万円とは驚きです。
伊原 その製作費にはみんな驚きますね。アメリカで観てもらった人もみんな驚きます。うまくいきました(笑)。今作はイーストウッド監督のプロダクションにも渡してあります。
――編集にも立ち会ったのでしょうか?
伊原 立ち会いましたね。完成版は28分ですが、始めは35分あったんです。自分のシーンはいらないと思ったので、どんどん切りました。
――やってみると分かるのですが、編集で映画はとても変わりますよね。
伊原 本当にそうですね。編集の面白さに気付きました。テンポをよくしたかったので、音楽の入れ方なども考えて仕上げていきました。
――今後はどんな活動をされていくのでしょうか?
伊原 日本だけでなく、変わらずに海外も視野に入れてやっていきます。海外の映画はブルガリアで撮った「Ninja」(09)があります。この作品には哲平も連れていきました。今年の夏は三池崇史監督の「十三人の刺客」を撮っていました。久しぶりにアクションで大暴れしています。10月には4年ぶりの舞台としてシアタークリエの「ガス人間第1号」に出ます。
――今作はプリクエルとのことで長編を楽しみにしています。
伊原 長編を作る場合は何億円もかかるだろうから難しいとは思いますが実現はさせます。 今作はどこまで自分ができるか実験したいと思って作ってみました。初めて製作というポジションから映画にかかわり勉強になったし、いろんな可能性も感じられました。まず今作を観てもらう機会をもっと作って、できるだけたくさんの皆様にご覧頂き何かを感じて頂ければ嬉しいです。
製作総指揮:伊原剛志 監督:中村哲平 脚本:中村哲平,伊原剛志 音楽:松本晃彦
出演:伊原剛志,スカイラー・アレクサンダー,ケネス・ヒュージス 他
<A LITTLE STEP 日本版予告編>
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