2009年度マイ・ベストムービー【1/2】
おさかひろみ
1.宗教もお金も自慰も犯罪も、愛の前ではちっぽけで、愛のためならいいんじゃないか!?私だってむきだしたい。この映画みたいに真っ赤な愛をゾクゾクと!
タイトルが現れた瞬間の興奮から未ださめません。
2.北国の冬は女の輪郭を顔のうぶ毛や乳房の毛穴に至るまではっきりと浮き上がらせるが、悴んだ手では隣にいる者の体温を信じるのに時間がかかる。
わたしたちだって本当は日々迷い、揺れているのだ。だが、服を脱ぎ、全てをさらけ出しても尚、頑なである紀美とクラクションの不意討ちに、でっかい雪玉でも投げつけられた気分です。
3.マリアもただの人間で、人を許してばかりじゃもたないんだよね。
うっかりしてると忘れてしまう大事なことを、いまおか監督は見逃さない。
最後のラブシーンがとにかく素晴らしい。だからみんなにみて欲しい!
時間が止まったように美しいあのセックスみたいな時間に、あなたもわたしも生きているうちに出会えたらいいな。
4. わたしは映画が大好きで、時に映画館で死んでもいいと思うほどだけど、本当はそれよりも、好きな男の子のこと考えたり、好きな友達と朝までしゃべったり、実家で家族とお母さんのカレー食べたりしてる時間が何より大事で、だからみた後に「面白かった。」だけじゃなく、「あー○○したい。誰かと。」と思わせてくれる映画はとにかく偉くって、南極料理人はまさにそれ!誰かとご飯が食べたくなります。
5.わたしはいつも映画の中に普通の人をみたいんですが、ライブテープはそのごく普通の人たちでいっぱいで、それは松江監督も前野さんもおんなじでした。皆普通のなまものたち。
奇跡はいつもこんなふうに、映画じゃなくて今生きてる当たり前の1秒の中にあるんだよね。絶対。
『かえるのうた』や『ライブテープ』みたいに、大事なのは映画館を出たあとなんだと背中を押してくれる、優しい動力を持つ映画の奴隷みたいです、わたしの胸と能と涙腺。もうどうしようもない。
鎌田 絢也
- 2009年度のアメリカ映画10本
- 『チェンジリング』(クリント・イーストウッド監督)
- 『イングロリアス・バスターズ』(クエンティン・タランティーノ監督) ▶レビュー
- 『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』(サーシャ・ガバシ監督)
- 『カールじいさんの空飛ぶ家』
- 『アバター』(ジェームズ・キャメロン監督) ▶レビュー
- 『私の中のあなた』(ニック・カサヴェテス監督)
- 『バーン・アフター・リーディング』(ジョエル・コーエン;イーサン・コーエン監督)
- 『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』(マーティン・スコセッシ監督)
- 『ボルト』
- 『パブリック・エネミーズ』(マイケル・マン監督) ▶レビュー
2009年度の映画鑑賞テーマは、『アメリカ映画をシネコンのレイトショーで』だった。六本木ではもはや常連中の常連である。だが、まだ名前で呼ばれたことすらない。何故か?大抵はコンセッションでハイネケンを2杯頼み、腹が減ればソーセージサンドも数本買い込む。かなり貢献しているはずなのですけれども……
今年のアメリカ映画――。と語りながら、あくまで劇場で見ることができた数本に限って勝手に言っているわけで、それ相当の偏見であることは間違いない。ましてや、2008年に同じテーマでアメリカ映画に注目していたわけでもないので、年度別比較を楽しめる豊かさも持ち合わせていないが、個人的にはとても有意義な一年を過ごしたと言いたい。
恐縮ながら、本年のベストムービー・オブ・アメリカを挙げました。こうして10作品を並べてみると、ドラマ4本、SF1本、コメディ1本、ドキュメンタリー2本、アニメ2本と随分バラエティーに富んだラインナップだなぁと思う。
アメリカという映画大国では、今日もどこかで新たな作品が企画され、明日には餓えた私たちのもとに、TVのチャンネルをひねるような便利さで様々な番組を届けてくれるだろう。こうしたザッピング感覚が、アメリカ映画の醍醐味なのかもしれない。
アメリカ映画界の今年のハイライトを挙げるならば、ジェームズ・キャメロンの3D-SF超大作『アバター』の登場を真っ先に称揚したくなる。映画がテクノロジーと共にある娯楽メディアであることを、映画技術者の威信をかけて取り組んだキャメロンの献身ぶりは、実に感動的な姿勢であった。
また、個人的には『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』のような、大した期待も抱かずに見た映画に感動して涙することができるという冥利は筆舌に尽くしがたいものがある。映画の豊かさに触れた後の一服が、得も言われぬ優越であることを思い出す。
2009年も映画は素晴らしかった。また来年も素敵な映画と出会いたい。
佐野 亨
- 『チェンジリング』(クリント・イーストウッド監督)
- 『レイチェルの結婚』(ジョナサン・デミ監督)
- 『グラン・トリノ』(クリント・イーストウッド監督)
- 『アンナと過ごした4日間』(イエジー・スコリモフスキ監督)
- 『母なる証明』(ポン・ジュノ監督)
- 『へばの』(木村文洋監督)
- 『花と兵隊』(松林要樹監督)
- 『熟女 淫らに乱れて』(鎮西尚一監督)
- 『行旅死亡人』(井土紀州監督) ▶レビュー
- 『TOCHKA』(松村浩行監督) ▶レビュー
昨年はベストを選出する機会がなかったが、もしあったとしたら、僕は『その日のまえに』(大林宣彦監督)一本を挙げていただろう。それほど、あの映画は僕にとって、他のあらゆる映画を排斥するほど強い求心力をもっていた。そこから考えれば、今年は「ただ一本」という映画に出会うことは、ついになかった(もっとも、そんな映画が毎年あるはずはないのだが)。しかし、全体的な印象としては、傑作・佳作に恵まれた一年だったと思う。
イーストウッド、スコリモフスキ、ポン・ジュノ。この3人に共通しているのは、このうえなく端正な映画づくりを実践しながら、同時に、その端正さをあっけらかんと破壊しかねないような、ひどく不安定な瞬間を抱え込んでいる点である。技巧の先にある世界。それを豊かさと感じられなくなったとき、映画は死ぬ。
『レイチェルの結婚』は、日本ではあまりにひっそりと公開されたのが気の毒だったが、音楽がつくりだす空気感、そこに浮かび上がる家族の疵をみごとにとらえた作品。ジョナサン・デミの誠実な演出が光った。
日本映画は酷い年だった、といわれるが、自主映画やピンク映画において、勇気ある映画的探求を試みた作家たちがいたことを忘れてはならない。ここに挙げた作品は、いずれもメジャーが見失った映画の本質に、鋭く肉迫したものばかりである。
ベスト女優賞は、『空気人形』(▶レビュー)のペ・ドゥナ、および『愛のむきだし』『プライド』の満島ひかりに進呈したい。
鈴木 並木
- 『アンダーカヴァー』(ジェームズ・グレイ監督)
- 『SR サイタマノラッパー』(入江悠監督)
- 『遭難フリーター』(岩淵弘樹監督)
- 『チェチェンへ アレクサンドラの旅』(アレクサンドル・ソクーロフ監督)
- 『我が至上の愛~アストレとセラドン~』(エリック・ロメール監督の遺作)
- (五十音順)
2009年は、期待して見に行ったり、評判を聞いて駆けつけたりした新作にことごとく首をひねらされるという、こと新作との出会いにおいては不幸な年でした。2010年は、世間並みの感覚を身につけることに全力を注ぎ込みたいです。2008年12月下旬以降に公開されたものの中から、印象に残ったものをいくつか拾ってみました。
『アンダーカヴァー』は、マーク・ウォールバーグが耳を撃たれた際の主観的な音処理だとか、豪雨の中でのカーチェイスだとか、決して目新しくはないことをきっちりとやって、とんでもない高みに何度か達していた気がします。
『SR サイタマノラッパー』は、ゼロ年代のひとつの潮流でもあった北関東映画の到達点であり、神代辰巳の『鳴呼!おんなたち 猥歌』に肉薄する「音楽と人」な映画。
『遭難フリーター』、そのための映画だからそれでもいいのかもしれませんが、内容しか話題になっていなかったのは少し惜しい。無人の東京の夜をとらえたショットが一瞬だけアンリ・ドカの撮ったパリに見えたりもしたので(ほめすぎか?)、眼はいいひとのはず。監督の岩淵青年への今後の期待をこめて。
『チェチェンへ アレクサンドラの旅』は、祖母が孫の仕事場を訪れるだけの話。このおばあちゃんは、およそ映画に描かれたすべての母・祖母類の最終進化形と言えます。映画以外の要素が一切混入していない、いわば「純映画」である本作、2009年もっとも不当に見過ごされた1本ではないでしょうか。これをしかるべき観客に届けることができなかった映画ジャーナリズムの罪は軽くないと思いますが、未来の目利きたちがこの映画を独自に発見して心を躍らせる様子を想像すると、それはそれで楽しい。
『我が至上の愛~アストレとセラドン~』、あっけにとられたまま見終えてしまったけれど、もしかするとものすごく挑発的な映画だったのではありますまいか。21世紀に撮ったほかの2本(『グレースと公爵』『三重スパイ』)とあわせて、その異常で不敵でチャーミングな面がまえを、再検討し続けたい。
富田 優子
- 1.『愛を読むひと』(スティーブン・ダルドリー監督) ▶レビュー
- 2.『グラン・トリノ』(クリント・イーストウッド監督) ▶レビュー
- 3.『チェンジリング』(クリント・イーストウッド監督)
- 4.『誰も守ってくれない』(君塚良一監督)
- 5.『カティンの森』(アンジェイ・ワイダ監督) ▶レビュー
- 6.『ジュリー&ジュリア』(ノーラ・エフロン監督)
- 7.『ハゲタカ』(大友啓史監督)
- 8.『ずっとあなたを愛してる』(フィリップ・クローデル監督)
- 9.『風が強く吹いている』(大森寿美男監督) ▶レビュー
- 10.『ミルク』(ガス・ヴァン・サント監督)
- 特別賞『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』(ケニー・オルテガ監督) ▶レビュー
2009年は劇場で136本の映画を観ることができたが、それでも公開された全ての映画を観たわけではない。残念ながら見逃してしまった作品も多々ある。そんな筆者がベストを選ぶというのもおこがましい気もするが、自分が観た範囲内でのベストということで、何卒ご容赦願いたい。
さて、そのベスト10を選ぶのは非常に難しい作業だった。実はこの10作品を決める時、自分が思いつく作品をまず15作品列挙してみた。それを1~2日空けて、3回同じ作業を繰り返したが、日によって名前の挙がった作品が異なるものもあり、とても悩ましかった。結果的には列挙された作品のなかからこのベスト10を選んでみた。
ただ1~5位は3回とも順位、作品とも全く変動はなかった。筆者的にはこの5作品が2009年を代表する作品だったと言えよう。逆に6位以下の作品はどんぐりの背比べ的な色合いが強く、あまり順位にこだわる必要はないのかもしれない。
ざっと振り返ると、2009年は意外にもハリウッド発の映画がランキングの多数を占めた。賞レースを賑わせた『愛を読むひと』『ミルク』、クリント・イーストウッド監督作品(『グラン・トリノ』『チェンジリング』)など上質の感動やささやかな希望に包まれた作品が多かったのが印象的だ。一方、3本の邦画がランクインしているものの、2009年の邦画も相変わらず社会派作品が少なく物足りない感も。そのなかで『誰も守ってくれない』『ハゲタカ』は現在の社会の抱える問題点を掬い上げ、骨太かつスリリングな作品に仕上がっていたことが高評価に繋がった。
また、ベスト10の他に特別賞として『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』。この作品は賞レースやこのような形でのベスト10に入れるのは相応しくないような気がしてあえて外していたが、急逝したマイケル・ジャクソンの魅力をあますところなく伝えていて、「惜しい人を……」とその死を悼まずにはいられない。
最後に、残念ながらベスト10には入れられなかったが、絞り込み作業で候補に挙がった作品を記載しておきたい。『フローズン・リバー』(東京フィルメックスで上映、劇場公開は2010年1月予定)、『私の中のあなた』『昭和八十四年~1億3千万分の1の覚え書き~』『戦場でワルツを』『フロスト×ニクソン』『シリアの花嫁』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』『SING FOR DARFUR』。どれも心に深く残る作品だ。2010年も多くの素敵な映画に出会えることを期待したい。
佐野亨 ,おさかひろみ ,富田優子 ,鎌田絢也 ,鈴木並木 ,年度別ベスト
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