フェアウェル
さらば、哀しみのスパイ
7月31日(土)、シネマライズにて公開(全国順次)
9月、テアトル梅田にて公開
国際社会のパワー・バランスを塗りかえたソ連崩壊。
そのきっかけとなった20世紀最大級のスパイ行為〈フェアウェル事件〉。
歴史に埋もれた驚愕の実話がついに映画化!
20世紀最大のスパイ事件のひとつと言われるその驚くべき出来事は、1980年代初頭ブレジネフ政権下のソ連で起こった。KGBのグリゴリエフ大佐(実名:ウラジミール・ヴェトロフ)が、自らが所属するKGBの諜報活動に関する極秘情報を、当時、東西冷戦時代の敵陣営であるフランスに受け渡したのだ。しかもこの超大物スパイが提供した莫大な資料には、ソ連が長年調べ上げたアメリカの軍事機密や西側諸国に潜むソ連側スパイのリストなどが含まれ、まさに世界のパワー・バランスを一変させかねないほどの破壊力を秘めたトップ・シークレットだった。グリゴリエフのコードネーム〈フェアウェル(いざ、さらば)〉を冠して〈フェアウェル事件〉と呼ばれるこの史上空前のスパイ事件は、実際に当時のソ連を震撼させ、アフガニスタン侵攻の失敗とともに、のちの共産主義体制崩壊の大きなきっかけになったとされる。
なぜ〈フェアウェル〉ことグリゴリエフは、祖国を裏切るという死と背中合わせのリスクを冒したのか。〈フェアウェル〉からの情報は、どのようにしてフランス側へと渡り、超大国アメリカを動かしていったのか。そして〈フェアウェル〉は、いかなる壮絶な運命をたどっていったのか…。近年のフランス映画としては異例の国際的スケールを誇る大作『フェアウェル/さらば、哀しみのスパイ』は、巨大なミステリーが渦巻く歴史の知られざる真実へと観る者を誘っていく。
祖国と息子のために死のリスクを冒した実在の男〈フェアウェル〉の
孤高の魂を体現するエミール・クストリッツァ、渾身の名演技
〈フェアウェル〉は「世界を変えてみせる。祖国のために、そして次世代を生きる息子のために・・・」という途方もない信念を貫き通し、本当にそれを成し遂げてしまった実在のスパイである。共産主義の理想と廃れゆく現実の大きなギャップに失望した〈フェアウェル〉は、祖国の新しい未来と息子たちの生きる希望をたぐり寄せるため、自らの意思で国家の反逆者になっていった。本格的なスパイ・スリラーとしての緊迫感みなぎるこの映画は、ジェームズ・ボンド的なスパイのイメージを覆し、〈フェアウェル〉の極めて多面的で人間味あふれる実像に迫っていく。祖国と家族の未来を思い、西側への亡命の道を選ばず、金銭的な見返りすら求めなかった男の数奇な生き様。非情なるスパイの世界に身を置きながらも、ふとした瞬間に優しさ、切なさ、脆さを滲ませる〈フェアウェル〉の孤高の魂に触れたとき、観客の誰もが心揺さぶられずにはいられないだろう。
しかしグリゴリエフのキャスティングが初めからスムーズにいったわけではない。当初、ロシア人俳優であり監督であるニキータ・ミハルコフが配役されていたがスケジュールの都合で降板、プロデューサーとして参加が決まった。その後、あるロシア人俳優がキャスティングされたが、当時の在仏ロシア大使、後に文化大臣となる人物からのある電話により、なぜかその俳優も降板したのだ。「ロシアからしたらヴェトロフはヒーローではなく、祖国の裏切り者なのだ」という通告を受け、その圧力に恐れを抱いたミハルコフもプロデューサーを降板することになる。ロシアでの公式な撮影への道筋が断たれた瞬間だった。
そのようなトラブルののち、本作の忘れえぬ主人公〈フェアウェル〉を演じることになったのは、『パパは、出張中!』『アンダーグラウンド』で二度のカンヌ国際映画祭パルム・ドールに輝き、ヨーロッパ屈指の映画監督たる地位を揺るぎないものにしたエミール・クストリッツァ。俳優、ミュージシャンとしても精力的に活動する彼にとって、これが初の“主演”映画となる。フランス語とロシア語のセリフをこなし、〈フェアウェル〉の人物像に類い希なカリスマ性と人間の業を吹き込んだ演技力と存在感は、ただ圧巻と唸るほかはない。ラスト近くの息子への熱き想いは、父親という存在の哀しさと崇高さを重厚に滲ませる映画史に残る名シーンとなった。
一方、〈フェアウェル〉の秘密の共有者であるフランス人、ピエールに扮するのはギヨーム・カネ。監督としても権威あるセザール賞の受賞歴を持つ実力派俳優が、ソ連在住のフランス民間企業のエンジニアというごく普通の市民でありながら、危うくも刺激的なスパイ活動にのめり込んでいく男の複雑な心理を繊細に演じきった。国家の理想を超えて〈フェアウェル〉とピエールとの間に芽生える奇妙な絆、そして両者それぞれの家族との愛と葛藤のエピソードが、深遠なヒューマン・ドラマとしても傑出した本作の魅力をいっそう際立たせている。
珠玉の感動実話『戦場のアリア』で名高い
クリスチャン・カリオン監督のもとに国際的なスタッフ&キャストが集結
この野心的なプロジェクトを実現させたのは、2005年の『戦場のアリア』で絶賛されたプロデューサー、クリストフ・ロシニョンとクリスチャン・カリオン監督の名コンビである。とりわけ『戦場のアリア』に続く実話ものへの挑戦となったカリオン監督は、入念なリサーチと独自のヴィジョンに基づき、ソ連、フランス、アメリカの三ヵ国を結ぶ壮大なストーリーを堂々たる語り口で演出。『ノー・マンズ・ランド』『戦場のアリア』のウォルター・ヴァン・デン・エンデ(撮影)、『レスラー』『月に囚われた男』のクリント・マンセル(音楽)といった一流スタッフを率いて、重厚かつ詩的な情緒が息づく映像世界を紡ぎ上げた。クイーンの大ヒット曲「ウィ・ウィル・ロック・ユー」、ジョン・フォード監督の傑作西部劇『リバティ・バランスを射った男』、アルフレッド・ド・ヴィニーの詩「狼の死」などの引用や、かつて映画撮影が許可されたことのないパリのエリゼ宮殿を始めとする多彩なロケーション、そしてソニーのウォークマンなどの小道具も冷戦下の時代性や登場人物を効果的に肉づけしている。
エミール・クストリッツァ、ギヨーム・カネの脇を固めるインターナショナルなキャストの顔ぶれも見逃せない。『ヒトラー ~最期の12日間~』のアレクサンドラ・マリア・ララ、『太陽に灼かれて』のインゲボルガ・ダプコウナイテ、『スパイダーマン』のウィレム・デフォーがCIA長官を演じ、さらに『ルパン』のフィリップ・マニャンがフランソワ・ミッテラン、『ヘンリー&ジューン/私が愛した男と女』のフレッド・ウォードがロナルド・レーガンという当時の仏米の大統領を演じている。
7月31日(土)、シネマライズにて公開(全国順次)
9月、テアトル梅田にて公開
クリスチャン・カリオン:監督 インタビュー
――世間でほとんど知られていないスパイ事件を映画化しようと思ったのはどのような経緯からですか?
プロデューサーのクリストフ・ロシニョンが、僕にこのプロジェクトを勧めてくれたんだ。彼は、エリック・レイノーが書いたシナリオの権利を獲得したところだった。エリックはアメリカで映画化をめざしてたんだが、うまくいかなかった。丁度その頃ジャック・アタリの「Verbatim」(回想録)の第1巻を読んでいたんだけど、その中で、フランソワ・ミッテランとロナルド・レーガン彼ら二者の関係において、フェアウェル事件がそれぞれの任期当初から、命運を左右するほど重要だったことが強調されていた。
オリジナルのシナリオでは、基本的にモスクワや情報局内の事件のことが、詳細に描かれていた。そこで僕はクリストフに、ふたつの点で書き直しを要求したんだ。ひとつはインターナショナルなキャスティングをするから、主要人物たちのセリフはオリジナルの言語をきちんと使うこと。これは前作『戦場のアリア』を撮ったときもそうだった。もうひとつは政治的要素に再度スポットを当てて、登場する政治家たちが個性を持った人物になるよう肉付けをすること。クリストフはこのアプローチにすぐに賛成したよ。
――どのようなリサーチをしましたか?
まずは最初のシナリオのことは忘れるようにしたよ。とてもすばらしいものだったけどね!ストーリー自体と正面から向き合う必要があったんだ。エリックはフランスの情報局に関連する重要人物たちとのインタビューを数時間録音していた。そこでそこから始めたんだ。それとロシア側の視点から詳細に書かれた、セルゲイ・コスティンの「ボンジュール・フェアウェル」という本も読んだよ。この事件については記録が少なくない。ロナルド・レーガンが書いてるように、これは〈20世紀の戦後スパイ事件〉としては最も大きなもののひとつなんだ。
冷戦研究の専門家たちは、ソビエトの崩壊には3つの大きな出来事が関係していると考えている。その地滑りは70年代からゆっくりと始まっていた。まず最初に考えられるのは78年のヨハネ=パウロ2世の誕生。これがカトリックのポーランドに火をつけた。グダニスクにソリダルノスクができたことは、ローマにポーランド人の法王が誕生したこと抜きには考えられない。2番目はアフガニスタンでの戦争。これはソ連にとってのベトナム戦争のようなもので、モスクワには大打撃だった。ソ連軍にとって初めての負け戦だった。無敵神話という考えが、ソビエトの人々の間でも崩れたんだ……そして最後に〈フェアウェル事件〉。KGBの情報を西側諸国に提供することで、ソ連の最終兵器、つまり諜報力を奪ったんだ。そしてついにシステムの根幹を揺るがした。
――この事件の主要人物、キーとなるような人に会いましたか?
情報局、特にフランス側の局員たちと会う気はなかった。ミッテランとレーガンのことを調査するために、ジャック・アタリには何度か会った。そしたら奇妙なことが起き始めたよ。「〈フェアウェル事件〉に関する映画プロジェクトが準備中」ってニュースが漏れ出したんだ。それでも個人的な話を僕にするためにかつての関係者が集まってくれた。彼らの、身を明かさない、というのを条件にね。皆この事件について自分たちの視点を僕に教えてくれた。それはすごい内容だった。
――資料書類や直接入手した情報が十分揃った中、逆にそこから距離を置いて、もっとフィクション寄りにしようと思いましたか?
確かに一時混乱したときはあった。多くの情報がどうにも辻褄が合わなかったんだ。客観的にも整合された物語に辿りつくのは、どんどん難しくなったように見えた。その中である証言者が、こっそり笑顔で僕に話したんだ。〈フェアウェル〉の死体は見つからなかったって。実際、彼の家族はKGBから死亡証明書を受け取っていない……。それからは、確証できない出来事については避けるようにした。実のところ、僕たちは誰も〈フェアウェル事件〉の全貌、特にソ連側について知ることはないだろう。事実に邪魔されてストーリーがぶれ続けた、と認めるには少々時間がかかった。前作の『戦場のアリア』で、僕はともかく事実を追及した。1914年の12月に敵地キャンプで起きた親交を、できる限り正確に取り上げたかったんだ。〈フェアウェル〉については、これと同じではないのは分っていた。ジョン・フォードの映画『リバティ・バランスを射った男』に出てくる最後のセリフが頭に浮かんだよ。ジェームス・スチュワートは、自分はリバティ・バランスを殺さなかった、と新聞記者に話すんだ。世間は誰も皆、そう信じこんでるのに。すると記者が答えるんだ。真実と伝説なら、私は伝説を記事にする方が好みだ、とね……。
――では、どのような視点を強調したかったのですか?
客観的な映画作りなんて存在しない。独自の方法でフレームに納めたり、あるショットより別のショットを選んだりするというのは、あるひとつの視点を伴う。だから客観性はないし、ただひとつの真実なんていうものもないんだ。ひとつの視点を持つというのは、本当に大事な理念のひとつで、その理念を中心に僕はこの映画を構築した。例えば、レーガンは業務の後に西部劇を見てリラックスするのが好きだった、というエピソードを読んだんだ。そこでちょっと一歩引いて、どんな演出にするかをじっくり考えた。それで僕は『リバティ・バランスを射った男』の有名な夜の決闘場面を引用したんだ。初めの視点はジェームス・スチュワートなんだけど、次にジョン・ウェインの視点になる。そうすることで全てが変わってしまうんだ。
『フェアウェル/さらば、哀しみのスパイ』で、僕たちは定期的に鏡のこちら側から反対側へと移動した。そうすることで物事を異なる視点で見ようとしたんだ。アメリカ人の視点では、これは勝利の結末となる。ひとつは「スターウォーズ」計画という歴史的な視点。ふたつ目は〈フェアウェル〉の運命という個人レヴェルの視点だ。
――登場人物に対してはどのような方向性をつけましたか?あなた独自のキャラクターに、どうやって作り上げましたか?
まず最初にシナリオの中で、ミッテランとレーガンという名前だけはそのまま使用した。そうすることで距離を保った。船出をするためにね。それから、僕と観客両方が共感できるような、人間らしさのある大統領になるよう、それぞれのキャラクターを掘り下げたんだ。
――ギヨーム・カネの演じるキャラクターは、いわゆる“ミスター・普通の人”で、それがスパイゲームに巻き込まれてスリルを味わうという、観客がすぐに共感できる人物像ですね。
信頼できる情報源によると、少なくともふたりのフランス人が、モスクワの〈フェアウェル〉にコンタクトを取っていたということがわかった。そのうちのひとりは、本当にトムソンのエンジニアだった。僕は彼のアマチュアリズムが本当に気に入ったので、映画の中ではこのキャラクターひとりだけを中心に据えたんだ。情報局は特定しにくい“一般市民”にちょっとした頼みごとをすることはよくある。ジャーナリストが本国の諜報部や情報局に情報を提供するのは日常茶飯事だ。その代償として、彼らはスクープを得る。勿論、この状況は今でも続いているよ。
――エミール・クストリッツァは、己の信念に全てを捧げる、情熱的で勇気あるキャラクターを演じています。彼の持つ情熱をレオ・フェレの歌で表現するというアイディアは、どのようにして生まれたのですか?
〈フェアウェル〉は60年代終わりにパリに滞在していて、フランスの文化に大きく傾倒していた。ロシア人カップルが「メランコリー」にあわせて踊るというアイディアは、かなり早い段階に思いついたんだ。詩に関しては、若い頃使ってた「ラガルド&ミシャール」(訳注:中高生向きの教本)の選集を拾い読みしてたら、アルフレッド・ド・ヴィニーの「狼の死」という詩を見つけたんだ。とても心を動かされて、僕の目的にぴったりなものに思えた。僕にとって、〈フェアウェル〉は孤独な人物だった。一匹狼、って言うわけだ。彼がこの孤独に耐えられたのは、彼自身が自らに与えたミッションだったからだ。
――フランス映画ではこれまでは政治家、特に人々の記憶に未だ残っているような人物の実生活を描くことは、ほとんどありませんでした。ミッテランとレーガンを描くことに抵抗はありましたか?
このプロジェクトを引き受けたのは、実を言うとふたりの大統領を描く映画が作れるからだったんだ。政治の世界が好きなんだ。でも大統領の半生を描いたオリヴァー・ストーンの『ニクソン』に該当するような映画はフランスになかった。僕はスティーヴン・フリアーズの『クイーン』も大好きなんだ。一大スキャンダルの最中のイギリスの権力の回廊を、あの作品では真に俯瞰して見ていると感じることができる。あの映画を見た後、僕はスクリーン内のミッテランとレーガン像が、実物に迫るよう模索しようと決意したよ。
――ミッテランとレーガンの対話は電話でのやりとりとカナダでのG7でのシーンですが、実際にふたりの間でなされた会話でしたか?
大統領たちはお互い、よく電話をしたんだ。ミッテランは自分の話す相手に対して直接関わり交流することを好んだ。フランスの共産党の未来についての協議は、1981年パリで、当時副大統領だったジョージ・ブッシュとミッテランの間で行われた。それから7月のG7サミット、ここでミッテランはレーガンに〈フェアウェル〉から届いた最初の資料を渡すことになる。このふたつの出来事を、僕はひとつにまとめて際立たせた。まるでモンテベロでふたりの大統領が一騎打ちするみたいな感じにね。
――見ている間、このエポックな時代背景にどっぷりと浸かっていました。どのようにしてセットを選び、作業したのですか?
映画のほとんどの舞台は、モスクワだ。そこで僕たちはモスクワで何週間もロケハンした。僕とセット・デザイナーのジャン=ミシェル・シモネーは、まだソ連時代の雰囲気が完璧に残ってるアパートをたくさん訪ねた。家具や壁紙、絨毯、壁の絵の額、その他色々……たくさん写真を撮った。当時の本物の壁紙や、ソ連製の家具もかなりの量を手に入れることができた。
――再現されたセットは素晴らしいものです。屋外のシーンはどこで撮影したのですか?
夏のシーンはウクライナのキエフとハリコフ、冬のシーンはヘルシンキと北極圏で撮影したんだ。モスクワでは訳あって撮影できなかった。ウクライナの街では、住宅街や広場を通ったけど、これらは正に80年代のソビエトの典型だったんだ。
――キャスティングはどのようにして決まったのですか?
ギヨーム・カネの役は、最初から彼を念頭に置いてシナリオを書き直した。彼とはまた一緒に映画を作りたかったんだ。彼ならこの事件の間、どこか曖昧なこのキャラクターに緊張感と情熱をもたらしてくれると感じたんだ。クストリッツァの役については、当初決めていたロシア人の俳優が降板した時に、「非ロシア人」という解決策を考え始めたんだ。
――主人公たちの妻を演じたふたりの女優についてはどうでしたか?
僕が思うに、インゲボルガ・ダプコウナイテはニキータ・ミハルコフの『太陽に灼かれて』でとにかく輝いた存在だった。その繊細さ、演技の細やかさには本当に感動した。エミールと一緒のシーンに、彼女は深みを与えてくれたよ。レオ・フェレの音楽に併せてダンスを踊るシーンを撮影した時は、とても圧倒された。アレクサンドラ・マリア・ララはドイツ映画『ヒトラー ~最期の12日間~』で知ったんだ。彼女なら、このストーリーに苦悩する要素を加えてくれると感じたんだ。
――ミッテラン役のフィリップ・マニャンと、レーガン役のフレッド・ウォードはパロディに逸れることなく、とても信憑性があります。
そのせいで本物のふたりの大統領の顔を忘れかけてしまったくらいです。フィリップ・マニャンは、その視線と振る舞いに、どこかミッテランぽいものをずっと感じてたんだ。それからは、マニャンは大統領に関する資料をいろいろ研究して、録音資料、特にマルグリット・デュラスとの素晴らしい対談テープを聞き込んでいた。フレッド・ウォードについては、スージー・フィギスが事前に選考していて、僕はロサンゼルスにいる彼に会いに行った。というのは、彼はレーガンを演じたくはなかったんだ。彼は僕に、この大統領の葬儀では存命している全アメリカ歴代大統領が参加し、アメリカ人にとって一種のアイコンだったんだと説明してくれた。けれど民主党員として、フレッドはレーガンという人物を演じることに抵抗があるという。何時間も話した後、最後には彼も引き受けてくれた。
――音楽に関してはどのようなアプローチをしましたか?
『フェアウェル/さらば、哀しみのスパイ』では、過去の自作とは違うものが欲しかった。シンプル・マインズやジョー・ジャクソン、ピンク・フロイド、そして何と言ってもクイーンといった音楽が。そこで僕はダーレン・アロノフスキーの映画で音楽を担当してるクリント・マンセルにアプローチした。彼のポップ=ロック・カルチャーは僕が捜してたものとぴったりだったからね。この作品では、音楽はとても重要な役割を果たしている。僕はソビエト連邦が崩壊した理由のひとつに、ソ連の若者が西側の娯楽を求めていたからじゃないかと思ってる。イゴールがひとり気取って歩いてるシーンで「ウィ・ウィル・ロック・ユー」が流れるのは、これから何が起ころうとしてるかを象徴している。ダムは決壊して、音楽、映画、コカコーラが、ワルシャワ条約機構の加盟国になだれ込んでくるだろうとね。どんな壁も人の願望を防ぐことはできない。現在では中国が、大きな波が押し寄せるのを食い止めようとしているけどね。
スタッフ
監督・脚本:クリスチャン・カリオン
プロデューサー:クリストフ・ロシニョン,ベルトラン・フェーヴル,フィリップ・ボファール
原案脚本:エリック・レイノー 原作:セルゲイ・コスティン「ボンジュール・フェアウェル」 音楽:クリント・マンセル
プロダクション・マネージャー:ステファン・リガ 撮影:ウォルター・ヴァン・デン・エンデ 編集:アンドレア・セドラツコヴァ
美術:ジャン=ミシェル・シモネー サウンド・エンジニア:ピエール・メルテン 音響デザイン:トマ・デジョンケール
録音:フローレン・ラヴァレー キャスティング:スージー・フィギス キャスティング(仏):ジジ・アコカ
衣装:コリンヌ・ジョリー メイクアップ:マビ・アンザローヌ
<キャスト>
グリゴリエフ大佐/エミール・クストリッツァ
ピエール・フロマン/ギヨーム・カネ
ジェシカ/アレクサンドラ・マリア・ララ
ナターシャ/インゲボルガ・ダプコウナイテ
シューホフ/アレクセイ・ゴルブノフ
アリーナ/ディナ・コルズン
ミッテラン大統領/フィリップ・マニャン
ヴァリエ/ニエル・アレストリュプ
レーガン大統領/フレッド・ウォード
ハットン/デヴィッド・ソウル
フィニーCIA長官/ウィレム・デフォー
イゴール/エフゲニー・カルラノフ
アナトリー/ヴァレンチン・ヴァレツキー
2009年/フランス映画/113分/アメリカンヴィスタ/ドルビー SRD
字幕翻訳=丸山垂穂
(c)2009 NORD-OUEST FILMS
公式サイト:http://www.farewell-movie.jp/
7月31日(土)、シネマライズにて公開(全国順次)
9月、テアトル梅田にて公開
- 監督:クリスチャン・カリオン
- 出演:ダイアン・クルーガー, ベンノ・フユルマン, ギョーム・カネ,
ダニエル・ブリュール, ゲイリー・ルイス - 発売日: 2006-11-02
- おすすめ度:
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主なキャスト / スタッフ
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