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ブリューゲルの動く絵

http://www.bruegel-ugokue.com/

2011年12月17日(土)より渋谷・ユーロスペースにて公開 他全国順次

ピーテル・ブリューゲル Pieter Bruegel (1525/30年頃-1569年)
16世紀ネーデルラントの最も偉大な画家。聖書の世界や民衆の祝祭、子供の遊びなどを主題とする版画や油彩画は、人間に関する深い哲学的な省察に基づいている。他方、農民を描いた油彩画は、親近感のある眼差しで生き生きとした彼らの生活を描き、当時から異色の画家として注目された。また諺を通じて民衆の知恵を表現し、寓意的な主題で人間の弱点、無知、愚行などを批判的に描写し、ネーデルラントを治めていたハプスブルク家の支配者や人文主義者たちからも高い評価をうけた。
生地や生年についてはいまだ定かではない。アントワープで修業し、聖ルカ組合に親方として登録。その後、数年間イタリアに滞在したが、イタリア・ルネサンス絵画の影響は生涯、あまり受けなかった。彼はむしろネーデルラントの伝統的な絵画を再評価したように思われる。帰国後、アントワープでヒエロニムス・コックの国際的な版画店のために、数多くの版画の下絵素描を制作した。とくに広場での群衆構図の手法をも培った。油彩画時代には農民の四季の労働や人物を中心とする道徳教訓的な寓意画の世界に専心した。1563年にブリュッセルに移住、師であるピーテル・クック・ヴァン・アールストの娘マイケンと結婚。1569年没。

INTRODUCTION

摩訶不思議 寓話の世界に迷い込む
16世紀フランドル絵画の巨匠ブリューゲルの、
壮大な絵画の世界をめぐる旅

ブリューゲルの動く絵 1ブリューゲルの絵が動く!16世紀の巨匠ピーテル・ブリューゲルの名画《十字架を担うキリスト》の、その計り知れない絵画の中に入りこみ、フランドル絵画の世界を旅するような、今までにない体感するアートムービー。画家ブリューゲルに導かれ、フランドルの民衆の慎ましいながらも人間味のある日常生活をなぞりながら、やがて名画に秘められた意味もが解き明かされてゆく。人々の暮らしの音、風車の回る音と荘厳な天地が奏でる音響につつまれて、時空をこえ壮大な絵画の世界を飛びまわるような、まさに映画ならではの絵画体験を味わえるのが、この『ブリューゲルの動く絵』だ。

ピーテル・ブリューゲルの《十字架を担うキリスト》は、十字架を背負いゴルゴダに向かうキリストの受難の物語を、1564年のフランドルを舞台にして描き出した傑作。『ブリューゲルの動く絵』では数百人がひしめき合うこの絵画から、十数人にスポットが当てられ、彼らの当時の生活の様子と聖書の物語が絡み合いながら繰りひろげられる。絵画について語る画家ブリューゲル(ルトガー・ハウアー)と、それに応えながらこの世の不条理を問いかけるブリューゲルの知友にして最大のコレクター、ニクラース・ヨンゲリンク(マイケル・ヨーク)、そして磔にされるキリストの運命を嘆く聖母マリア(シャーロット・ランプリング)。語り部であるこの3人以外は明確なセリフがないながら、描かれる人々や出来事は、ブリューゲルの絵画同様ありあまるほど雄弁に何かを語りかけてくる。観客はその声に耳をかたむけているうちに、ブリューゲル、そしてこの『ブリューゲルの動く絵』が、現代社会にも通じるこの世のあり様をも描いていることに気づくだろう。

監督は、NYの伝説のアーティスト・バスキアを描いた『バスキア』(ジュリアン・シュナーベル監督)の原案・脚本を手がけたほか、ニューヨーク近代美術館やヴェネツィア・ビエンナーレでビデオアート作品が展示されるなど、アート界でも世界的な評価を得ているポーランドの鬼才、レフ・マイェフスキ。彼の作品を見た美術批評家のマイケル・フランシス・ギブソンがその映像に魅了され、ブリューゲルの《十字架を担うキリスト》を分析した自著The Mill and the Cross を贈ったのが本作の始まりだった。ギブソンの深い洞察力に触発されたマイェフスキは、このフランドルの巨匠に匹敵する映像世界を創造しようとギブソンと共に脚本を書き始め、3年を費やし本作『ブリューゲルの動く絵』(原題『風車と十字架』)を完成させる。マイェフスキの類まれな想像力と、最新のCG技術と3Dエフェクトを使いこなした職人技によって、遠近法にしたがって絵画の風景の中を俳優たちが動きまわるという静止画と動画の競演がみられる。まるで人々と彼らの起こす出来事がタペストリーのように幾重にも織り重ねられた、絵画と映像が融合した空間が紡ぎだされた。
画家ブリューゲルに扮するのはルトガー・ハウアー。冷酷な悪役で定評のあるハウアーがこれまでのイメージをうち破り、美術史上の哲人役を堂々とした風格で演じている。また聖母マリア役にシャーロット・ランプリング(『まぼろし』、『メランコリア』)、ブリューゲルのコレクター、ヨンゲリンク役にマイケル・ヨーク(『オースティン・パワーズ』)ら映画界の実力派俳優たちが脇を固めている。

ブリューゲルの動く絵 2本作の絵画空間に入り込むような映像は①ブルーバックで撮影した俳優たち、②ポーランド、チェコ、オーストリア、そしてニュージーランドでロケしたシーンや風景、③マイェフスキ監督自身がキャンバスに描いた巨大な背景画、この3つの方法でデジタル撮影された映像を組み合わせることで創り出された。背景画とロケーション映像とをいくつか重ねた上に、ブルーバックで撮った俳優を置き、ニュージーランドで撮影した雄大な空のデジタル映像が加える…といった具合に、一つ一つの要素を丹念に重ね合わせることで、ブリューゲルの絵画に見られる遠近感を再現している。
ブリューゲルも、フランドル農村の風景の中にイタリア旅行で対峙したアルプスの雄大な山脈を導入するなど、合成風景的な手法を使っていた。本作はたんなる名画をめぐるノンフィクションではなく、マイェフスキ監督が当時随一のコンテンポラリーアーティストであったブリューゲルに制作プロセスを語らせることで、画家と映画との斬新なコラボレーションが生まれたといえよう。
Story

16世紀、フランドル地方のアントウェルペン(現在のアントワープ)の夜が明ける。人々は目覚め、そびえたつ岩山の頂きに建つ風車小屋の帆がゆっくりと回り始める。画家ピーテル・ブリューゲル(ルトガー・ハウアー)は書きかけのスケッチを片手に、まだ眠る子どもたちを家に残し村へとでかけた。村の素朴な農民たちや、フランドルの壮大な自然の風景は、ブリューゲルにとって絵画の源泉でもあった。その日は、朝露にぬれた蜘蛛の巣に、ある絵の構図のヒントを見いだした。
そんなのどかな農村の風景は、馬にまたがりやって来た赤い服の兵士たちの出現で一変してしまう。宗教的異端者を認めない支配者につかえる兵士たちが、何の罪もない若い男をなぶり殺し、見世物のように車輪刑にしたのだ。男の妻はなすすべもなく泣き崩れるが、周囲の人々は無関心を装いその様子をただ見ているだけだった。

ブリューゲルの友人、そしてコレクターでもあるニクラース・ヨンゲリンク(マイケル・ヨーク)は、この支配者たちの暴挙を憂いていた。ヨンゲリンクはブリューゲルにこう問いかける「このありさまを表現できるか?」。
その問いに応えるように、ブリューゲルがおもむろに風車小屋へ合図を送ると、風車はぎしぎしと音をたてながらその動きをゆるめはじめた。やがて回転が止まるとともに、ヨンゲリンクの目前にひろがる光景はぴたりとその時間を止め、フランドルの風景の中に聖書の物語が現れる。

ブリューゲルの動く絵 3そこでは、イエス・キリストや聖母マリアが聖書の世界から舞い戻り、キリストの受難の物語―イエスが処刑地であるゴルゴダの丘まで十字架を背負い歩くキリストの道行―が繰り広げられていた。聖人たちは「フランドルの運命を嘆き、過去から戻ってきた」のだ。
最も重要なものは見逃される―。ブリューゲルはヨンゲリンクが憂いでいるフランドルのあり様を、キリストの受難の物語に重ねあわせてみせた。車輪刑にされた若い男のように、ひしめき合う人々の中に埋もれるイエスの姿は、見逃してしまいそうなほど小さなものだ。だが今朝見つけた蜘蛛の巣のようなその構図は、巧みに観る者の眼をイエスのもとへ導いている。

16世紀に舞い下りた聖母マリアは、イエスの受難の日々を思いその悲運を嘆く。その中にはイエスを裏切った弟子ユダの姿もあった。わが子イエスが十字架に磔られるのを最期まで見守るマリア。だが物見高い民衆たちの姿は、イエスが十字架から降ろされる頃にはどこにもなかった。
イエスが風車小屋の岩山のふもとに埋葬され、一日の終わりとともに世界が闇につつまれると、天地を揺さぶるほどの雷音が轟く。この世界はどうなってしまうのだろうか―。嵐の中の閃光に、聖母マリアやヨンゲリンク、そしてブリューゲルの顔が次々と浮かびあがる。

一夜あけたフランドルには、しかし、いつもと変わらないのどかな光景が広がっていた。子どもたちは喜声をあげ駆けずりまわり遊んでいる。どこからか道化が陽気な音楽を奏でながらやってくると、つられて農民たちも歌い踊りはじめる。ブリューゲルが見つめるその踊りは、やがて輪となって動きだす。いつまでも躍動しつづける生命の輪。復活にむけた新しい一日がはじまる。

C R E D I T

監督/製作:レヒ・マイェフスキ
脚本:マイケル・フランシス・ギブソン,レヒ・マイェフスキ,マイケル・フランシス・ギブソン著『The Mill and The Cross』より着想
製作総指揮:アンゲルス・シレジウス 共同プロデューサー:フレディ・オルソン ライン・プロデューサー:マウゴジャータ・ドミン
撮影監督:レヒ・マイェフスキ,アダム・シコラ 衣装デザイン:ドロタ・ロクエプロ 美術:カタジーナ・ソバンスカ,マルセル・スラヴィンスキ
メイク・デザイン:ダリウス・クリシャック,モニカ・ミロフスカ 音楽:レヒ・マイェフスキ,ヨゼフ・スカルツェク
編集:エリオット・エムス,ノルベルト・ルジク 助監督:クシシュトフ・ウカシェヴィチ,ドロタ・リズ
雲のフォーメーション撮影(NZ):ジョン・クリストフェルス 衣装スーパーバイザー:エヴァ・コチャンスカ
美術監督:スタニスワフ・ポルチェク 視覚効果:オデオン・フィルム・スタジオ 視覚効果スーパーバイザー:パヴェウ・ティボラ
3Dアニメーション:マリウス・スクジェプチンスキー 合成:ダウィド・ボルキェウィッツ,ワルデマー・モルダルスキ
サウンド・デザイナー:レヒ・マイェフスキ ラボ:WFDiFワルシャワ
キャスト:ピーテル・ブリューゲル/ルトガー・ハウアー 聖母マリア/シャーロット・ランプリング ニクラース・ヨンゲリンク/マイケル・ヨーク
2011年/ポーランド、スウェーデン/英語/96分/カラー/DCP/Blu-ray/16:9(1:1.77)/ステレオ/5.1ch
日本版字幕:小野郁子/字幕協力:森洋子  PG-12 配給:ユーロスペース+ブロードメディア・スタジオ
配給協力:コミュニティシネマ・センター 宣伝:セテラ インターナショナル 協賛: 駐日ポーランド共和国大使館
©2010, Angelus Silesius, TVP S.A http://www.bruegel-ugokue.com/

2011年12月17日(土)より渋谷・ユーロスペースにて公開 他全国順次

ブリューゲルの宴
ブリューゲルの宴 (イメージの森のなかへ) [大型本]
レディホーク/Blu-ray
レディホーク [Blu-ray]
  • 監督: リチャード・ドナー
  • 出演: マシュー・ブロデリック, ルトガー・ハウアー, ミシェル・ファイファー
  • 発売日:2011/04/22
  • おすすめ度:おすすめ度4.5
  • Amazon で詳細を見る

2011/12/14/22:45 | トラックバック (0)
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