奥田 瑛二 (監督)
映画「今日子と修一の場合」について
2013年10月5日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
奥田瑛二監督作品の意気込みには、いつも圧倒されてきた。どの作品にも気迫があるのだ。この気迫はどこから来ているのかと思っていた。今までの奥田監督のインタビューで熊井啓監督と神代辰巳監督から映画を作るうえで影響を受けていたことは読んでいたが、いつかインタビューする機会を得られたらと思っていた。実現したことに感謝しています。(取材:わたなべりんたろう)
――このインタビューの前に出演されたラジオで、映画でやりたい企画が3本あるとおっしゃっていました。奥田監督作品はモントリオール映画祭など海外で評価されています。海外での奥田さんの話をしたいんですけど、海外と日本の映画に対する違いはどうですか。
奥田 違う。まったく違うと思う。
――こちらもインタビューとかしていると、グループインタビューになる場合があるんですけど、何聞いてるんだみたいな質問がそこかしこに出てきて、映画を観なくてもできるインタビューみたいな……インタビューする側が映画を観てどう思ったかがあまりない。海外が全部いいわけじゃないけど、海外の映画祭に参加してみて映画に対する海外の成熟度っていかがですか。
奥田 なんで日本で映画祭が、東京という世界的に大きな都市でありながら成熟しないのか。今おっしゃった通りですよね。そこには映画を語るための、映画を見せるための場所ではないということだよね。映画祭ってフェスティバルっていうぐらいだから、なんかこう、昔から祭りごとっていうのは、人間の本来的な喜びというか、神事だったりするじゃないですか。それがただのパーティーになっちゃってる。それがだめなんだよね。そういう意味で言うと参加することはやぶさかではないが、いつもこう毎年ああやってるんだなと思うことしかなくて、もっとなんか……釜山映画祭とか作り手の勢いが違うんですよね。俺の映画を見てくれっていう思いの突入がないんだよね。突入がないから爆発しないんだよそこで。
――奥田さんの世代だとそういう人は多いじゃないですか。映画人に特に多いですけれど、そうやって来ると今の若い人も含めて引いちゃう人が日本では多いんじゃないですか。
奥田 それもあるけど、ベネツィアにしてもカンヌにしても、モントリオールにしても、お客がやっぱり映画というものに対するリスペクトが凄い。日本はそこが足りない。だから僕が映画祭行って「あんたの映画すごいね、良かったわよ」と向こうのおじちゃんとかおばちゃんに言われて「ありがとう」と答えると「監督、あなたがありがとうと言わなくていい、私たちがあなたにありがとうと言わなくてはいけないんだから」って言われて、僕はいつもそうやって怒られましたよね。
――その点は大きいですよね。奥田監督は熊井さん、神代さんに影響受けてますよね。
奥田 めちゃくちゃ影響受けてます。
――やはり現場で演出にも影響は受けてますよね。
奥田 それはありますね。熊井さんもそうですし神代さんもそうですけど、テストやって本番に至る時の、すごく心地のいい緊張感があるんです。それが役者さん、そしてスタッフを吸引して行く。パワーっていうんですかね。これはすごいなと思っていて。そういうのが基本的なOKラインになっちゃってるから、よその作品出た時に、え、なんだこれ、と思う現場がとってもつまらないなと思ったりするんですけど。やっぱり、そういう良い緊張感の現場を僕も目指してやっているから、おかげでそういう現場が作れてる。それは嬉しいなと思いますよね。そこではやっぱりなんていうかなあ、人生が映画という、そういうものを背負っていて。それがあるかないかだけだと思う。だって酒飲んでてもライフイズシネマだしさ。飲まなくてもライフイズシネマだからさ。
――とてもお酒好きだと聞いてます。
奥田 そういうことですよね。飲まなくて風呂入っててもライフイズシネマで(笑)。
――生き様ってことですよね。
奥田 そういうことですよね。もう全く365日映画映画映画で考えてるわけだから。
――今日は忙しい中をありがとうございました。
奥田 いえいえ、こちらこそ。
( ゼロ・ピクチュアズにて 取材・撮影:わたなべりんたろう )
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- 監督:熊井啓
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