奥田 瑛二 (監督)
映画「今日子と修一の場合」について
2013年10月5日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
奥田瑛二監督作品の意気込みには、いつも圧倒されてきた。どの作品にも気迫があるのだ。この気迫はどこから来ているのかと思っていた。今までの奥田監督のインタビューで熊井啓監督と神代辰巳監督から映画を作るうえで影響を受けていたことは読んでいたが、いつかインタビューする機会を得られたらと思っていた。実現したことに感謝しています。(取材:わたなべりんたろう)
――こちらが初めて被災地に行ったのは2011年の4月でした。奥田監督が行った場所と同じ南三陸に映画を作る仲間と行ってボランティアをして、その後に最後まで職員が避難を呼びかけて屋上に逃げた人もみな津波に流されてしまって骨組だけになっている防災庁舎に行ったら圧倒されてしまいました。どこを見ても凄まじい光景で、撮ろうと思えば撮ることはできる。その時は別に何か撮るわけで行ったのではなく、実際、撮影機材は持っていかなかったんです。こちらの監督作「3.11日常」でも入れてあるんですけど現地をドキュメンタリーで撮るなら長期的に滞在して撮らなきゃいけないなと思いました。母親の介護をしていて、それはできない。でも自分なりにできるやり方で何か撮ろうと衝動的に思ったんです。では何をやるのか。で、3.11をきっかけに動いた人を撮ろうと、小出助教とか3.11直前の映画のイベントで知り合い、被災地でボランティアをすぐに始めた水野美紀さんなどを撮ったんです。奥田監督は今作を撮ったように、ストーリーを語る場合もある。そこには園子温さんみたいなやり方もある。3.11及びその後の状況の現在を忘れないためにも、もっとフィクションでも撮るべきだとも思うんです。今作は最後まですれ違って会わないわけじゃないですか。ここまで出会わないというのは映画会社に企画を出したら何なんだと言われると思うのですが。
奥田 文化庁の助成金の件があるので文科省の人に脚本を見せた段階で分からないって言われましたからね。
――確かにそうですよね。こちらも多くの方から文化庁助成金のする、しないの基準が分からないと聞きます。荒井晴彦さんは、その件を今発売中の「映画芸術」(13年7月発売号)で特集しています。エンドクレジットの映像協力で陸上幕僚監部広報室と航空幕僚監部広報室がありました。これは被災地のシーンでしょうか。
奥田 被災地のテレビ映像です。こういうことがあったんです。実際はすごいこうクリアな映像を使いたかった。ところが民放連ていうのがあって著作権を持っていて連合体以外は使用してはいけないという取り決めがある。われわれが映画で使いたいと言ってもテレビ局のプロデューサーがOKをしても3日後にゴメンとくる。NHKのニュース映像を民放連を通して1本使うだけで莫大な金額がかかる。
――数百万かかる。
奥田 そうです。そういうことがあって、ではどうするかと。これがもう1番の最後の最後まで悩み続けたんですね。今日子がテレビで被災地の映像を見るシーンがある。修一もある。そこは外せない。でそこは探しまくった。結局YouTubeから許可を得ました。
――それは個人が撮ったものでしょうか。
奥田 そうですね。それをはめ込んで編集でオーバーラップさせて心象風景というか、心の中の津波に置き換える。やり方を編み出す訳ですよね。それから自衛隊の映像の許可は自衛隊に直接行きました。映像が鮮明なのがあって、それは無料で自衛隊からお借りして使って半年後の出来事の映像を資料として使わせてもらいました。
――自衛隊に申請したんですか。
奥田 申請したらすぐ貸してくれました。
――脚本読んでどうとかはなかったんでしょうか。
奥田 ないです。
――アメリカ映画は脚本を読んで内容によって軍が協力したりしなかったりします。「地獄の黙示録」は協力しないけど、「トップガン」は協力するみたいな。
奥田 自衛隊の広報を紹介してもらったのは、いわゆる僕の知り合いの人です。当然飛び込みでは無理なので。
――いきなり電話とかではダメですか。
奥田 やっぱりダメじゃないですか。日本的に根回しというものが必要になる。
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