奥田 瑛二 (監督)
映画「今日子と修一の場合」について
2013年10月5日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
奥田瑛二監督作品の意気込みには、いつも圧倒されてきた。どの作品にも気迫があるのだ。この気迫はどこから来ているのかと思っていた。今までの奥田監督のインタビューで熊井啓監督と神代辰巳監督から映画を作るうえで影響を受けていたことは読んでいたが、いつかインタビューする機会を得られたらと思っていた。実現したことに感謝しています。(取材:わたなべりんたろう)
――昨年末にロンドンでマイク・フィギスに会って来たんですが、目的はフィルムとデジタルの過渡期としてインタビューしに行ったんです。その時に助成金の話などにもなったんですが、やはり日本は国にしても一般的にも映画の文化に対する理解度がないというか薄いのを再認識としてですが痛感したんです。好きな人だけがやってればいいじゃないかというようなところがある気がします。
奥田 そのために僕は弱小として戦って来たわけですよね。なぜかって、映画には信念がなきゃ撮ってはいけないと思ってて、僕はね。今は映画は誰でも撮れるけれども、その中に信念を持って成長して行く媒体だと思うんです。最初は興味と憧れだけで、そう思ってなくてももちろんいい。でも必ずや信念というものを芽生えさせる。それは新藤兼人さんもそうだったし、今村昌平さんもそうだし、熊井啓さんもそう。それは我々が育った環境の先達であるわけだから。そういう人たち、若松孝二さんもそうですけど、その信念を守って生きていかなきゃいけないんじゃないと思うんです。映画に携わる人間としてね。それが根底にあるから、それを私は娘に伝えると同時に奥田組スタッフにも伝えて行く。そういうところの豊かさていうのは持たなきゃいけない。そういうことですよ。だから決して貧しいとは僕は思わないし、なぜならば金儲けにはならないけども、生涯自分のやりたいことに邁進して夢を持って生きられる。生涯の中でプラスマイナスゼロになりゃいいと思っているわけですよ。映画は丁半博打だけど、丁半博打やってるわけでもない。これ以上の大きなギャンブルはないわけだから、そんな大きいギャンブルで金儲けようなんて思ったら大間違いだよね。
――多分そういう人はもっと儲かる娯楽映画作りますよね。原作物だったり人気俳優や人気者を主演にして。
奥田 そうですよね。そこにはどうしても気持ちがいかないから、性格なんですよ。気持ちがいかないからしょうがないんだよ(笑)。
――たまにはそういう自分のことを面倒くさいと思ったことはありませんか。
奥田 やめようと思ったことはありますよ。もう映画作るのやめて俳優でいこうかと。でも爺いになってどうなんだよ、いやあやめよやめよ、爺になっても用意スタートかけてた方が楽しいぞ、っていうね。
――実は奥田家では桃子さんを先に知り合っていてお聞きしてるんですけど、大変な中でやられていて、いつも日本映画の状況と闘っていると聞きました。今作はシネコンの新宿ピカデリーで上映するわけだし、いつにもまして闘いですよね。
奥田 闘いです。
――最近は新宿ピカデリーは「共喰い」がヒットしました。是枝監督の「そして父になる」も週間興行で1位になりました。
奥田 あれはカンヌで受かって俺のは落っこったんだけど。ヴェネチアは『風立ちぬ』が入って僕のが落ちたっていうね。
――ベルリン映画祭なども出したのでしょうか?
奥田 ベルリンこれからだよね。これはもう間に合わなかったんでね。映画祭はその二つだったんですけどね。まあそういうこともありながら、新宿ピカデリーという大きな劇場なのでお客さんが入って欲しいなと思うよね。
――最近の映画館は多分、その映画を観る目的で見に来る人がいるが多いと思いますけど、自分の世代だと映画館にふらっと入って観終わったら何か人生を学んでいたみたいなのがありました。
奥田 それはね、重要なことですよね。
――シネコンで上映するとそういう偶然性があるので、少しでも多くの方が今作を観てくれるといいなと思います。Rいくつなどの年齢制限指定作品ではないですよね。
奥田 無いです。
――映画は娯楽でもあり文化の入口です。
奥田 その入口にたまたま入って考える映画、誰かに喋れば、ええそうなの、じゃ来週観に行ってみようと連鎖していければ勝ちだと思っているんだけど。だからその映画が文化であることの付き合い方でこれからの人生は違うと思うよね。
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