インタビュー
「今日子と修一の場合」/奥田瑛二監督

奥田 瑛二 (監督)
映画「今日子と修一の場合」について

公式

2013年10月5日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー

奥田瑛二監督作品の意気込みには、いつも圧倒されてきた。どの作品にも気迫があるのだ。この気迫はどこから来ているのかと思っていた。今までの奥田監督のインタビューで熊井啓監督と神代辰巳監督から映画を作るうえで影響を受けていたことは読んでいたが、いつかインタビューする機会を得られたらと思っていた。実現したことに感謝しています。(取材:わたなべりんたろう)
奥田 瑛二 1950年愛知県生まれ。「もっとしなやかに もっとしたたかに」(79)の主演に抜擢されて頭角を現す。「海と毒薬」(86)で毎日映画コンクール男優主演賞受賞。「棒の哀しみ」(94)ではキネマ旬報、ブルーリボン賞など九つの主演男優賞を受賞。初監督作品「少女」(01)はヴェネチア映画祭、モントリオール映画祭など世界各国の映画祭で高い評価を得る。第2作「るにん」はメソッドフェスト映画祭最優秀作品賞受賞、第3作「長い散歩」はモントリオール映画祭グランプリ・国際批評家連盟賞・エキュメニック賞の三冠受賞。09年には同映画祭の審査員を務める。「風の外側」(07、安藤サクラ主演)から6年ぶりの新作が「今日子と修一の場合」である。

【STORY】家族との幸せな時間を取り戻すため、他人に体を許してしまい、故郷を去ることになってしまった保険外交員の今日子。大学受験を控えるなか、暴力的な父から母を守るために事件を起こし、少年刑務所に服役することになった修一。同じ故郷である宮城県・南三陸町を離れ、東京で新たな決意とともに、生活を始めた2人にも、“あの瞬間”が訪れる……。


――奥田監督の作品はとても好きでデビュー作からリアルタイムで観ています。

奥田瑛二監督奥田 ありがとうございます。

――演出についてお聞きしたいのですが、生命保険会社の会議室でカンニング竹山さんが安藤サクラさんを励ますシーンは全部1カットですね。このシーンにあるような長回しが奥田監督作品には多いですが多分見てる人はあまり気付かない長回しで奥田監督の特徴だと思います。あのシーンに限定でもいいですし全体的でもいいんですが、どういう狙いがあるのでしょうか。

奥田 そうですね、自分を信じて撮っているということなんですけれども、自分を信じていると同時に俳優を信じている。それでいわゆる長回しでは1シーン1カットで行きながら、おっしゃった通りで見たい顔を構図よく1シーン1カットで撮って行く。これは神代辰巳さんの影響です。神代さんの場合もフィックスで長回ししてるわけじゃなくて、こう演出家の本能でカメラが移動して行く。キャラクターの心情を踏まえたうえでということだけど、そこが理想的な映画の撮り方じゃないかなと今でも思っているんです。デビュー作の製作時の2000年から13年経った今、いろいろと自分なりに進化はしてるんですけど進化しながらも原点回帰っていうのがあるんです。やっぱりテクニックだとか技とかそういうものがどんどん付いてるってのは、それは映画が分かれば分かるほどやれるんだけど、それがありながらもう一回原点に帰る、というのがこれからの自分の映画になって行くんだろうなと思うんです。それでできるだけ伝わるところはカット割りたくないっていうのが1番なんです。伝わらないところはカットを割って入り込んで行くけど、これで伝わるんだってところはやっぱりルーズショットでも何にしてもそのまま行きたい。カット割るんだったらカメラがそのままトラックアップして行きたいなという、そういう自分なりの信じて撮ってるっていうところじゃないですかね。

――シンプルな方向にこれから削ぎ落として行きたいと。

奥田 それでないと、多分映画では無くなる、シネマじゃなくなるというか、もう一度シネマというものを取り戻したい。大きいスクリーンに映るからシネマという訳ではないし、そこのところは十分にWOWWOWのドラマやったりして実験してわかったんです。だからもう一度、今度は映画ではどうあるべきかっていうことをやっていきたいっていうのがありますね。

――今作のオリジナルの音楽はピアニストの稲本響さんが担当で始めと終わりだけしか使われていません。そのことがリアリティを出す効果を強くあげています。

奥田 映画で音楽を絶え間なく流すのは好きじゃないですね。感動的なシーンに感動的な音楽を入れようと思って入れるような色気を出してはいけない。こういうテーマの映画は特にしてはいけない。例えばラブロマンスならいいですよ。こういう映画は人の根源的なものを表現したいと思っているし、作品が扱っている題材として津波だってあるわけだから。そういう時に作為的な音楽を使って映画としてスケベになってはいけない。それが観る側の人たちにとって息苦しくなるかもしれないけど、息苦しさの中に解放されるということも、そんなことも思いながら編集してましたよね。

――一つずつのシーンはゆったりされているので始めはもっと長かったのではないですか。

『今日子と修一の場合』奥田 ええ、最初は2時間36分ぐらいだったかな(今作の上映時間は2時間15分)。比べてそれほどで長くはないですね。もちろんそのまま被災地のラストのシーンだけを繋ぐと1時間半ありますから、そのラストのシーンは15分になったので夏と秋を撮った後にバッサリ切りましたよね。

――先にまず被災地でのシーンを撮ってから、ストーリーを組み上げていったという点でも、奥田監督作品で今までにない作り方の映画だと思います。

奥田 2012年の1月7日に現地におもむいたら、9日には頭の中にストーリーはできていたんです。 それがないとスタッフも招集できないし、俳優さんもキャスティングできない。だからそれはまだペーパーにはなってなくて、あらすじだけの段階でした。ラストを撮った後にラスト以外の前半を作るっていうのは、ある種とんでもない作業になるんですけど、そうせざるを得なかったというのが正直な話ですよね。だから、二人の周りの出来事、細かい部分とか生活はラストシーンを撮った後に5日位をかけて書き、最初の第1稿になりましたね。

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今日子と修一の場合 2013年/日本/134分/カラー/ビスタサイズ
企画・脚本・監督:奥田瑛二
出演:安藤サクラ,柄本佑,和田聰宏,小篠恵奈,和音匠,田部周,カンニング竹山,宮崎美子,平田満
プロデューサー:大日方教史 スーパーバイザー:安藤和津 音楽:稲本響 撮影:灰原隆裕 照明:太田博
美術:竹内公一 編集:野本稔 整音:久連石由文 ポストプロダクションプロデユーサー:篠田学
製作:ゼロ・ピクチュアズ 配給:彩プロ © ZERO PICTURES
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2013/10/16/12:35 | トラックバック (0)
わたなべりんたろう ,インタビュー
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