中村 公彦 (監督) 映画『恋のプロトタイプ』について
▶公式サイト2014年8月2日~8日(金)まで、ポレポレ東中野にて一週間限定公開
5日・7日・8日に監督とキャスト陣によるトークイベント開催
(取材:わたなべりんたろう)
――でも主人公は童貞ではないんですよね。いわゆる童貞ものにしなかったのは何故ですか? そこは「スコット・ピルグリム」も想起しました。
中村 うーん、「童貞卒業」にあまりドラマ性を感じてないと言いますか……童貞を卒業すること自体はそんな大したもんでもないだろう、と思っていまして。後、今回の主人公とヒロインは「初体験の後、誰とも付き合わない選択をしている」設定にしたかったんですよね。これ重要だと思います。今の世の中、結構セックスレスな人いますよね。誰とも付き合わないで長い間過ごしている人も。それはもっと手軽な娯楽が今は他にあるからかも知れないし、恋愛やセックスにトラウマがあるのかも知れないし単純に忙しいのもあるでしょうが、そういう状況下で人はどうやって幸せを見出していくのかなと、そんなことをぼんやり考えながら脚本を書きました。
――ラストはビターというかバッドエンドに近い形で終わりますが、ハッピーエンドにしなかったのは?
中村 5年前に企画を書いた時は完全にコメディだったので、主人公とヒロインが現実の恋で結ばれて終わりという、ハッピーエンドで考えていました。だから今回の映画の最後の30分が新たに書き加えた部分になりますね。ラストがあの形になったのは、いくつかの要因があると思います。キャストがメジャーな俳優陣ではないこと、青春Hがセックスを描けるシリーズであることなどですね。それを踏まえた上で、作品のテーマがより明確になるようなラストを考えたら、ああなりました。昔から「少ない情報や経験で物事を決めつける奴」というのが本当に嫌いなんですよ(笑)。若い奴でも年寄りでもいますよね。「お前はそれを本当にやってみたのか? 検証したのか?」というのを作品を通して突きつけたかったんです。時代がだんだん巧妙になってきて大抵のことはシミュレーションできる世の中になったわけですが、それでもまだ身近な人のことすら分からなかったりするんですよね。『恋のプロトタイプ』を二回観ると分かるんですが、序盤で心平がこずえや義男に対して誇らしげに語ったことが終盤に全部本人に跳ね返ってくるようにしています。「ほら、お前は本当には分かってなかったんだろ?」と。もちろん心平もこずえも大して悪いことをしたわけじゃなくて、人生経験が足りなくてああいう形になってしまう。でも痛みを感じたことで、次はいい恋、いい付き合い方ができるかもしれないと。ハッピーエンドは決して嫌いではないですが、今回は観た人に色々と自由に感じてもらえるようにしたかったんです。
――では最後に今後の抱負をお聞かせください。
中村 とにかくようやくスタートラインに立ったばかりで、次の長編も決まっていない状態ですが、企画や脚本はいっぱいあるので死ぬまでにできるだけ映像化したいです。
――函館港イルミナシオン映画祭準グランプリの『指先に咲いた花』もまだ映像化されてないですよね。
中村 そうですね。他にもコンクールでいいところまでいったり自分でも面白い自信がある脚本が何本かあるので頑張ります。
――見応えのある映画を作り上げて長編監督デビューしたので、中村監督の今後の作品をとても楽しみにしています。
中村 ありがとうございます。作り続けるのみですし頑張ります。
( 取材:わたなべりんたろう )
恋のプロトタイプ 2014年/日本/カラー/87分/ビスタサイズ/ステレオ
監督・脚本:中村公彦
出演:櫻井拓也,星咲優菜,阿部隼也,堀有里,杉原憂,原田祐輔,米本千晴,山本宗介,原彩咲,世志男,柳東史,倖田李梨,津田篤
製作:松下順一 企画:高﨑正年 プロデューサー:小貫英樹,奥野邦洋 アソシエイトプロデューサー:田中忍
撮影:宮永昭典 録音:荒井保,國分玲,春本一大 音楽:與語一平 主題歌:CLipCLover 「タカラモノ」
助監督:清水理俊 制作プロダクション:東京レイダース 製作:娯楽TV 配給・宣伝:アートポート
© 2014 娯楽TV All Rights Reserved.
▶公式サイト