インタビュー
アリ・フォルマン監督×山村浩二氏

アリ・フォルマン (映画監督) ×
山村 浩二 (アニメーション作家)
映画『コングレス未来学会議』について【1/4】

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東京アニメアワードフェスティバル2015招待作品
2015年6月、新宿シネマカリテ他全国順次公開

戦場でワルツを』(08)のアリ・フォルマン監督が、東京アニメアワードフェスティバル(以下TAAF)2015の短編コンペティション部門の審査員として来日を果たした。それに合わせて6月に日本公開を控えるフォルマン監督の2作目『コングレス未来学会議』(13)のTAAFでの追加上映が急きょ決定、スペシャルマスタークラスとしてアニメーション作家山村浩二氏との対談も行われて、朝早い時間帯にもかかわらず盛況となった。
本作は、ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの『泰平ヨンの未来学会議』を大胆に翻案して映像化したもの。ロビン・ライトが本人役で登場し、40歳を超えて女優としての旬を過ぎた彼女が新しい映画ビジネスの契約を持ちかけられるというパラレルな世界が描かれていく。そのビジネスとは俳優の肉体や表情、感情をもスキャンしてCGで作り上げたキャラクターで映画を撮るというもので、自分の肖像権を製作スタジオに売り渡すことになる俳優本人は二度と演技ができなくなる。悩んだ末に、難病の息子を抱える彼女は生活のために契約を受ける。その契約が満了となる20年後。老女となったロビンが“未来学会議”で提示された新しい条件での契約とは……? 寂寞とした実写からサイケデリックなアニメへ。現実と夢想、生身とバーチャルが交錯する多層世界での映像体験に圧倒されどおしだった。
この日の聞き手を務めた山村浩二氏は、昨年のTAAFで本作を長編コンペのグランプリに選出した審査員の一人である。長らく温めていた疑問を的確にぶつけるとフォルマン監督も丁寧に謎を解き明かしてくれ、とても興味深い内容の対談となった。 (取材:深谷直子)

『コングレス未来学会議』STORY 2014年、ハリウッドは、俳優の絶頂期の容姿をスキャンし、そのデジタルデータを自由に使い映画をつくるというビジネスを発明した。旬を過ぎて女優の仕事が激減したロビン・ライトにお声がかかった。シングルマザーとして難病をかかえる息子を養わなければならない彼女は巨額のギャラと引き換えに20年間の契約で自身のデータを売り渡した。スクリーンでは若いままおロビンのデータが、出演を拒んできたSF映画のヒロインのを演じ続けた―――そして20年後、文明はさらなる進歩を加速させていた。ロビンはある決意を胸に、驚愕のパラダイスと化したハリウッドに再び乗り込む。

アリ・フォルマン監督アリ・フォルマン監督山村 アリ・フォルマン監督に日本に来ていただけて光栄です。

フォルマン こんなに早い時間からたくさんの方が観に来てくださって……、ちょっとショックを受けています(笑)。

山村 本当に空っぽじゃないかってさっきまで心配していたんですけど(笑)。僕は昨年この映画祭で長編コンペの審査員をさせていただいて、『コングレス未来学会議』を驚きと喜びとともに拝見しました。そのときの審査員たちとは「監督がもし来てくれたら質問攻めにしよう!」と話していました。今日初めてこの作品を観た観客のみなさんの頭の中にも多分クエスチョン・マークがたくさん浮かんでいると思いますが、まずは4年かかったと言われている制作のプロセスをぜひ監督からお話しいただきたいと思います。

フォルマン この作品の原作権を購入したのは『戦場でワルツを』を制作した直後でした。当時はどういった映画にしようかということはまだ決めかねており、唯一実写とアニメの複合体のハイブリッドな映画になるだろうということだけが分かっていました。原作は、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、ポーランドの共産主義政権下における社会のメタファーになっており、舞台を南米に移してドラッグによる独裁という物語として書かれた作品です。私自身は共産党政権というものを経験したことがなかったので、どのように描こうかと考えていたときにカンヌ国際映画祭に行きました。カンヌには巨大なマーケットも併設されているのですが、そこに一人のおばあさんがいました。私は彼女が誰だか分かりませんでしたが、私のエージェントが70年代にビッグ・スターだったアメリカの女優だと教えてくれて、大変ショックを受けました。たった30年前に大スターだった女優が現在では何者でもないただの人に成り下がってしまった。彼女の想いはどんなものだろうか?ということを思い続け、その日ホテルに帰ったあと、物語が浮かんできたのです。今日観ていただいた映画の中にはアブラハマシティのミラマウント・ホテルで誰もロビン・ライトを彼女だと認識できないというシーンがありますが、過去の人になってしまった女優の物語を描くこと、年老いていく女優がいちばん魅力のある姿でスキャンされてデータ化されていくという、そういう話を映画にしたいと思ったんです。

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コングレス未来学会議 2013年/イスラエル・独・ポーランド・ルクセンブルク・仏・ベルギー合作/120分
監督・脚本:アリ・フォルマン 原作:スタニスワフ・レム『泰平ヨンの未来学会議』
出演:ロビン・ライト,ハーベイ・カイテル,ジョン・ハム,ポール・ジアマッティ,コディ・スミット=マクフィー,ダニー・ヒューストン,サミ・ゲイル
日本語字幕:和泉珠里(日本映像翻訳アカデミー) 字幕監修:柳下毅一郎 配給:東風+gnome
© 2013 Bridgit Folman Film Gang, Pandora Film, Entre Chien et Loup, Paul Thiltges Distributions, Opus Film, ARP
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2015年6月、新宿シネマカリテ他全国順次公開

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2015/04/06/19:21 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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