アリ・フォルマン (映画監督) ×
山村 浩二 (アニメーション作家)
映画『コングレス未来学会議』について【2/4】
東京アニメアワードフェスティバル2015招待作品
2015年6月、新宿シネマカリテ他全国順次公開
公式サイト 公式Facebook (取材:深谷直子)
山村 『コングレス未来学会議』はそういった幻覚の世界に巧みに導きながら、それでもどこかで現実との接点を常に考えさせ、その両方で頭脳を刺激されながら最後まで観てしまう映画だと思います。そろそろ時間も迫ってまいりましたので、最後に小さな質問ですがせっかく日本に来ていただいたのでぜひお訊きしたいと。この映画の中には「ミラマウント・ナガサキ」という名前の製薬会社が出てきたり、ボブスという、恐らくスティーブ・ジョブズをパロディにしたようなカリスマ的な社長が日本の着物のような服を着たりしていますが、そのへんは何か具体的なアイディアがあったのでしょうか?
フォルマン まず私は日本の大ファンであることを申し上げます。東京に来るのはこれで3回目で、外国から来た人はみんな礼儀として「日本が好きです」と言いますが、私のは本当に本音なんです(笑)。最初の質問の製薬会社のことですが、今はどんなことでも治療でき、例えば失恋をしたらそれも薬で治すという時代です。そこに私は言いたいことがあって薬品産業と娯楽産業を組み合わせました。ただ製薬会社を日本の会社にして脚本を書いていたときには、まさか日本の経済が落ち目になるとは思っていませんでしたが(苦笑)。もうひとつの着物は単なるジョークです。今アメリカの巨大メーカーは世界を食い物にしながらも一方でニューエイジなふりをしている。「ピース」とか「メディテーション」とか「スローライフ」とかいったことを口では言いながら、実際には中国で下働きの労働者を搾取してiPhoneを作ったりし、また寄付などの社会貢献も一切しない、そういうスティーブ・ジョブズのジョークとしてあのキャラクターを描いたわけです。ジョブズは時代のアイコンともなっている人物ですが、すごく金儲けをした人でもあるんですよね。そのことを肝に銘じておかなくてはなりませんし、着物はその当てつけかもしれません。
山村 面白いお話を最後に聞かせていただきました。どうもありがとうございました。
――(司会者) では最後に日本のお客さんへのメッセージをお願いします。
フォルマン まずこの映画を観て気に入ったという方は、ぜひお友達に伝えてほしいと思います。この映画はぜひ日本で成功してほしいと思っています。日本人の考え方というのは他の国とは違う部分もあると思いますし、SFファンも多いと聞いていますので、こんな変わった映画でも気に入ってもらえるんじゃないかと思います。二つめは新作についてです。私は今『アンネの日記』の子供向けのアニメーションの企画を進めていて、その一部を日本で制作したいと思っています。それが成功することを願っているところです。
山村 『コングレス未来学会議』は昨年のこの映画祭での受賞のあとに日本での配給が決まり、今年は監督に来日していただけました。ぜひこのユニークな映画を日本でも多くの観客の方に観ていただきたいなと思います。そしてフォルマン監督は新作で日本との制作にも具体的に興味を持たれているようですので、それもこの映画祭の交流の中で実現できたら素晴らしいことだと思います。
( 2015年3月22日 TOHOシネマズ日本橋で 取材:深谷直子 )
監督・脚本:アリ・フォルマン 原作:スタニスワフ・レム『泰平ヨンの未来学会議』
出演:ロビン・ライト,ハーベイ・カイテル,ジョン・ハム,ポール・ジアマッティ,コディ・スミット=マクフィー,ダニー・ヒューストン,サミ・ゲイル
日本語字幕:和泉珠里(日本映像翻訳アカデミー) 字幕監修:柳下毅一郎 配給:東風+gnome
© 2013 Bridgit Folman Film Gang, Pandora Film, Entre Chien et Loup, Paul Thiltges Distributions, Opus Film, ARP
公式サイト 公式Facebook
2015年6月、新宿シネマカリテ他全国順次公開
- 映画原作
- (著):スタニスワフ・レム
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- 監督:アリ・フォルマン
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