アリ・フォルマン監督×山村浩二氏

アリ・フォルマン (映画監督) × 山村 浩二 (アニメーション作家)
映画『コングレス未来学会議』について【2/4】

東京アニメアワードフェスティバル2015招待作品
2015年6月、新宿シネマカリテ他全国順次公開

公式サイト 公式Facebook (取材:深谷直子)

山村浩二山村浩二山村 実験的でサイケデリックで非常に面白い映画なんですが、実際に作り上げていくのはなかなか容易ではなかったと思います。どのようなスタートの切り方をされたんですか?

フォルマン 私は脚本を書くのは早いほうで、例えば『戦場でワルツを』は4日間で書き上げたんです。山小屋にこもって書いたのですが、日曜日に行って金曜日に帰ってきたときにはすっかり完成していたというほど早いんです。書く前に頭の中でできあがっていたと言えると思うんですが、『コングレス未来学会議』の場合はそうではありませんでした。テルアビブの港の古いボートが私のスタジオなのですが、そこで8ヵ月間苦しみぬいてようやく書き上げたのです。そんなにも苦しんだのは、SFであるアニメーション部分の世界観を構築するためにルールを作り上げなければならないからです。例えば、ピルを飲むと誰に姿が見えて誰に見えないのか?といったルールを自分で編み出さなければならないので、それで非常に時間がかかりました。
また、実はこの作品の主役には当初ケイト・ブランシェットをキャスティングしていました。アニメーションでのキャラクター作りなども進めていましたが、あるときLAでロビン・ライトに偶然会うことがあり、そのときに彼女が主人公だ!と思ったんです。真正面から見据えた顔は、美しくもありもの悲しくもあり、壊れやすいものが彼女にはありました。ケイトとの契約をキャンセルするのは大変でしたが、この映画のオープニングショットはロビン・ライトだともうイメージできていたんです。一目ぼれと言えるかもしれません。そこから企画が動き始めました。
撮影については、実写部分はアメリカで撮影したのですが、スタッフも優秀な人たちばかりで、とても速く効率的に俳優に演じてもらうことができ、特に苦労はありませんでした。大変だったのはアニメ部分です。資金集めのために様々な国や都市の助成制度を利用したのですが、それは資金を出してくれたところで制作してお金を落とさなければならないことになっていて、60分のアニメを9ヵ国で制作しなければならなかったんです。それぞれのスタジオで仕事の仕方もテクニックもバラつきがあり、技術的な問題も芸術的な問題も出てきました。例えばロビンの愛人のディランはイスラエルやドイツのスタジオでは男性的でタフなキャラクターとして作られましたが、ベルギーやルクセンブルグのような国では女性的なキャラクターとして描かれ、シーンによってそのようなバラつきがあるのを一貫したキャラクターにまとめるという大きな苦労がありました。また、ひとつのショットを完成させるのにも複数の大陸にまたがっての分業を行うことになり、俳優を使った元素材になるような映像はアメリカで撮って、ラインテストは自分のスタジオで行い、動画はドイツやベルギーなどでやって、彩色はフィリピンで……といったように、ひとつのショットが完成までに旅をして回り、ようやく手元に来たときには8ヵ月も経っていて、しかもバラつきなどがあったのでまたそれを修正しなければならず、本当に大変でした。

山村 この作品のアニメ部分は、一見コンピューターグラフィックスを使っているように思われるかと思うんですが、すべて手描きのアニメーションで作られています。そして、先ほど演出の仕方を見せていただいたんですけど、アニメ部分もまず役者に演じてもらってビデオで撮影し、それをアニメーターに見せて、もう一度描き直させるということをしているそうです。この方式は監督が『戦場でワルツを』から続けている演出方法でしょうか?

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コングレス未来学会議 2013年/イスラエル・独・ポーランド・ルクセンブルク・仏・ベルギー合作/120分
監督・脚本:アリ・フォルマン 原作:スタニスワフ・レム『泰平ヨンの未来学会議』
出演:ロビン・ライト,ハーベイ・カイテル,ジョン・ハム,ポール・ジアマッティ,コディ・スミット=マクフィー,ダニー・ヒューストン,サミ・ゲイル
日本語字幕:和泉珠里(日本映像翻訳アカデミー) 字幕監修:柳下毅一郎 配給:東風+gnome
© 2013 Bridgit Folman Film Gang, Pandora Film, Entre Chien et Loup, Paul Thiltges Distributions, Opus Film, ARP
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2015年6月、新宿シネマカリテ他全国順次公開

泰平ヨンの航星日記〔改訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF レ 1-11) 泰平ヨンの航星日記〔改訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF レ 1-11)
2015/04/06/19:22 | トラックバック (0)
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