真利子哲也監督真利子　お客さんの中にも監督に質問したいという方がいらっしゃると思いますので、お願いします。

観客1　言葉についての質問です。監督は日本語が分からないとのことですが、固定の長回しで撮られていて、OKショットとNGショットの違いの決め手は何だったのですか？

チャン　撮影のときは俳優たちの演技から感じる感情を読み取るようにしました。カットをかけたあとに日本の撮影監督や助監督にこれでいいかということは伺いましたし、通訳にも文法的なチェックはしてもらいましたので、自分で「これでいいんじゃないかな」と思ったら俳優にも同じような感情で演じてくれていたのかを確認して、その場で確認しながら選択したような流れがありました。

観客1　もうひとつ質問がありまして、字幕で観る韓国の観客と日本の観客とでリアクションに違いはあるのか教えてください。

チャン　韓国では今年の6月に公開され、客層としては20代の女性がいちばん多かったんです。その方たちは第2章の男女のロマンスを楽しんでくださっていて、特にユウスケが積極的にアタックするシーンで笑いが起こったりしていたんですが、今日観ていただいたらそれとは違う意外な場面で笑いが起こっていましたね。「樹里」という喫茶店で男性が話しているシーンだとか、小学校で康さんが「ヨシコ」と初恋の女の子の名前を呼ぶシーンで笑いが起こったりしましたが、それは韓国では全然なかったことなので、そこはだいぶ違うなあと思いました。

真利子　今公開のお話がありましたが、『ひと夏のファンタジア』は韓国で公開され、3万人以上の動員という異例の大ヒットを記録しました。自分もインディーズでやっている身からするとそれがとても嬉しくて。特に有名な俳優が出ているわけではなく……と康さんの前で言うのは憚られますが（苦笑）、技術のある俳優が出ている映画で、そこが韓国でも認められたんだと聞いております。

チャン　康さんにも感謝していますし、岩瀬亮さんと一緒に映画を作れてありがたく思っています。『イエローキッド』に出ているのを見て、そこからの繋がりなんですが、今回キャスティングすることができてありがたいと思っています。また、韓国で公開される前に、自分では映画祭で上映するとか映画好きの方は好んでくれる作品かなと思っていたんですが、一般の人たちにあれほど受け入れてもらえるとは思っていなかったので、とても嬉しく思っています。

観客2　五條市役所の者です（場内より笑）。チャン監督には暑い中に撮影に来ていただき、映画を完成させていただいたことにお礼を申し上げます。康さんの演技も大変印象に残っております。地方都市はどこでも問題を抱えているものだと思いますが、康さんが五條を訪れた印象はいかがでしたか？

康　撮影前に一人で五條に行ってみようと思って行き方を調べたんですが、バスが途中までしか通っていなく、タクシーも何日か前までに予約をしなければならないようなところで、「一人では行けないところなんだ」と思いました（苦笑）。スタッフが車を出して行くということで僕も連れて行ってもらえたのですが。

観客2　この映画では市内の喫茶店や食事どころがたくさん取り上げられ、おいしく食事をしたりお酒を飲んだりというシーンが多く見受けられましたが、そのようなことは監督の中でどういう位置づけをされていますか？

チャン　今回の映画を撮ったのは五條の広報をしようという目的ではなかったのですが、自然にご飯を食べるシーンもたくさん入れたような気がします。自分でも映画を観ると「五條に行ってビールが飲みたいな」という気持ちになったりしますし、映画を観てくださった韓国の方で五條に行かれる方も多く、「『ひと夏のファンタジア』ツアー」と称して五條を訪れる方もたくさんいたと聞いています。SNSにも「テフン監督とミジョンがビールを飲んでいた店」などの写真がたくさんアップされていて、自分が意図していたことではなかったんですが、そういう反応があったことはよかったなあと思いました。

康　日韓合作ということでどうなるのかなと思っていたんですが、やっていくと演技や行動で伝わっていくものがあって、こうして交流ができるんだなと思いました。

チャン　タケダユウスケは東京から五條にやってきたという役どころでしたが、今日東京で上映できてよかったと思います。日本での公開も進めていただいているので、気に入ってくださったらまわりの方にお勧めしてください。