インタビュー
斎藤久志監督/『空の瞳とカタツムリ』

斎藤 久志 (監督)
映画『空の瞳とカタツムリ』について【1/5】

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2019年2月23日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

第19回東京フィルメックスの特別招待作品として上映された注目作『空の瞳とカタツムリ』が、2月23日よりいよいよ公開される。男となら誰とでも寝る夢鹿と、極度の潔癖症で夢鹿以外の人間に触れられない十百子、さらに夢鹿に惹かれる友人の貴也と、十百子に近づく鏡一という男女4人が不器用に交わろうとする姿を、相手を傷つけながら交尾する雌雄同体のカタツムリと重ねて描く、生々しく神秘的な恋愛映画である。新進脚本家・荒井美早の脚本を、『サンデイドライブ』『なにもこわいことはない』の斎藤久志監督が映画化。体当たり演技を見せた主演の縄田かのん、そして映画初出演の中神円の脇を、三浦貴大や柄本明らの実力派が固める。情熱ある表現者たちが作り上げる痛ましくも清冽な世界は、生きにくさを覚えるすべての人、特に性に悩みを抱える人たちに勇気を与えてくれるだろう。斎藤久志監督にお話をうかがった。 (取材:深谷直子)
斎藤 久志 1959年生まれ。85年、PFFに『うしろあたま』が入選。スカラシップを獲得し『はいかぶり姫物語』を監督すると同時に、審査員だった長谷川和彦氏に師事する。92年テレビ「最期のドライブ」(監督:長崎俊一)で脚本家デビュー。97年『フレンチドレッシング』(原作・やまだないと)で劇場監督デビュー。その後の主な監督作品として、『サンデイドライブ』(00)、『いたいふたり』(02)、『なにもこわいことはない』(13)などがある。
STORY 誰もが一度は通る痛みを、鮮烈に描いた新しい愛の物語――祖母の遺した古いアトリエでコラージュ作品を作り続ける岡崎夢鹿(縄田かのん)は、消えない虚無感を埋めるため、男とならだれとでも寝るが、一度寝た男とは二度と寝ない。一方、夢鹿の美大時代からの友人である高野十百子 (中神円)は極度の潔癖症。性を拒絶し、夢鹿にしか触れられない。そして二人の友人、吉田貴也 (三浦貴大)は夢鹿への想いを捨てきれないまま、堅実に生きようと努めていた。学生時代とても仲がよかった三人。しかし月日が経つにつれ、バランスは少しずつ崩れていった。そんな中、十百子は夢鹿に紹介されたピンク映画館でアルバイトを始めるが、行動療法のような日々に鬱屈していく。その映画館に出入りする青年、大友鏡一(藤原隆介)は、満たされなさを抱える十百子に心惹かれていく。
斎藤久志監督画像1 『空の瞳とカタツムリ』画像
――本作は、相米慎二監督の『風花』(00)のタイトル変更案だった『空の瞳とカタツムリ』というタイトルから作られたという、変わった成り立ちを持つ作品のようですね。詳しく説明していただけますか?

斎藤 本作の企画者である(脚本家・監督の)荒井晴彦さんが、この映画の製作としてクレジットされているアクターズ・ヴィジョンというところで、昔書いた脚本をテキストにして俳優ワークショップをやっていたんです。それで映画を作ろうということになったときに、「こういう映画は俺よりも斎藤が撮った方がうまいから」と声をかけてもらいました。で、動き出したんですが、その脚本には原作があって、その原作権が取れなくて企画が流れてしまったんです。でもこうして動き出したものをどうにかできないか?と、成田尚也プロデューサーが、荒井晴彦さんの娘である荒井美早さんに脚本のオファーをしました。相米さんのタイトル変更案を使って、元々の荒井さんの脚本がそうだったので女の子二人の恋愛の物語として、オリジナルを作ろうということになったんです。

――ワークショップから作られた映画とはお聞きしていましたが、荒井さんのワークショップだったのですね。

斎藤 そうです、僕はそこには関わっていないんです。また、最近の『カメラを止めるな!』(17)や『恋人たち』(15)のように、ワークショップそのものが映画を作っているのではなく、ワークショップをきっかけにして作られ、ワークショップからオーディションをかけてキャストを選んだというものなので、その成り立ちも少し違います。

――監督はご自分で脚本を書かれることもありますし、他の方の書いた脚本を撮ることもありますね。この作品は荒井美早さんの初めてのオリジナル映画脚本になりますが、監督も美早さんとやり取りなどして一緒に書いていく感じだったのでしょうか?

斎藤 いや、基本的には美早さんが書いています。「一緒に書きましょう」ということもちょっと言われたりしましたが、できたら彼女が書いた方がいいと思っていたので、基本的には彼女が全部作っています。

――『空の瞳とカタツムリ』というタイトルから、よくここまで発想を膨らませたなと思います。女性同士の恋愛の話にしようというのが元々あったとのことですが、雌雄同体であるカタツムリの特徴がストーリーにピッタリ合いましたね。

斎藤 カタツムリから「恋矢」というものを持ってきたりとか、全部美早さんの発想です。女性同士の恋愛の話というのは、荒井晴彦さんが書いていた脚本がそういうストーリーで、縄田かのんさんが主演することが決まっていたので、それを前提にして進めようということでした。

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空の瞳とカタツムリ (2018年/日本/カラー/DCP/5.1ch/120分)
出演:縄田かのん,中神円,三浦貴大,藤原隆介,利重剛,内田春菊,クノ真季子,柄本明
監督:斎藤久志 脚本:荒井美早 企画:荒井晴彦 タイトル:相米慎二
プロデューサー:成田尚哉 製作:橋本直樹,松枝佳紀 撮影:石井勲 音楽:阿藤芳史 照明:大坂章夫
録音:島津未来介 美術:福澤裕二 編集:細野優理子 衣装:江頭三枝 ヘアメイク:宮本真奈美
整音:竹田直樹 音響効果:井上奈津子 助監督:岸塚祐季 制作担当:三浦義信
製作:ウィルコ/アクターズ・ヴィジョン 配給:太秦 © そらひとフィルムパートナーズ
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2019年2月23日(土)池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

2019/02/19/22:11 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー

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