斎藤 久志 (監督) 映画『空の瞳とカタツムリ』について【3/5】
2019年2月23日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
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――中神さんは表情が素晴らしかったですね。じっと見つめる目が印象的でしたが、中神さんから出てきたお芝居なんですか?
斎藤 僕は「こんな顔をして」とかは言っていませんから。勝手に俳優さんたちがそうなっただけで僕は何にもしていません。
――テイクはかなり重ねたとのことですね。
斎藤 テイク数はわかりませんが。まずカメラが回るまでにリハーサルに時間をかけて、多いものは10を超えていたものもあるでしょうけど、今はデジタルなのでフィルムの時代よりはラクになりました。
――撮影で大変だったことはありますか?
斎藤 映画というのは何を撮るんでも結構大変なんです。今回の映画が特に大変だったということってないんですけど、低予算の映画なので撮影日数が短い。そんな中でそういうことをやっていると寝る時間がどんどんなくなってくるんです。とはいえ24時間寝ないで撮るとかいった無茶なことはしていないので、多少予定より時間はオーバーしましたが、その中でどう判断するかということですね。まあ、これも毎回のことなんですが。
――撮影日数は10日間だそうですね。ラスト近くの公園のシーンは風が強くとても寒そうでした。
斎藤 寒かったですね。その日に限らず外は基本的に寒かったです。その中で池に落ちたり俳優さんたちは大変でした。
――荒井美早さんの脚本には「三位一体」や「神様」など、宗教的な要素も入っているのかなと思いました。映画を撮るうえで何か意識したことはありますか?
斎藤 言葉は言葉で大事だと思うんですけど、映画なので、直接的な言語や世界みたいなことと同時に、そこにそういう生身の子たちが存在するんだということがちゃんと見えるようにやっていましたね。その言葉が浮かないように、リアルに見えるにはどうすればいいのか?ということがいちばん大変でしたかね。
――みんな真摯に恋愛や性に向き合っている感じがしました。潔癖症だとか、誰とでも寝てしまう女の子だとか、生きにくそうな人たちなんですけど。
斎藤 キャラクターにはデフォルメしている部分がありますが、誰にでも、例えば潔癖症の十百子のように、性に対する、あるいは他人に対する距離がうまく取れないというのはあると思うし、夢鹿のようにどこまで自分が許していいのかわからないというのもあることなんだと思います。それをたまたまこういうふうに、潔癖症だとか誰とでも寝る女の子だとか描いているけれど、そんなに特殊な人たちの話じゃないと思っています。それに、あれは“「誰とでも寝る」と言っている女の子”ですよね。映画が小説と違うのは、そういうふうに言っているけど、本当のところがどうなのかわからない、映画の中には複数の男性との行為も描かれているけれど、本当にそれが楽しくてやっているかどうかはわからないというところですね。文字面だけというのとは違って、縄田さんという女優が浮かべる表情や、観客にどういうふうに見えてくるかで変わってくる。それが映画の面白さだと思いますね。言葉ではないことで、ニュアンスが変化していくというのが。
出演:縄田かのん,中神円,三浦貴大,藤原隆介,利重剛,内田春菊,クノ真季子,柄本明
監督:斎藤久志 脚本:荒井美早 企画:荒井晴彦 タイトル:相米慎二
プロデューサー:成田尚哉 製作:橋本直樹,松枝佳紀 撮影:石井勲 音楽:阿藤芳史 照明:大坂章夫
録音:島津未来介 美術:福澤裕二 編集:細野優理子 衣装:江頭三枝 ヘアメイク:宮本真奈美
整音:竹田直樹 音響効果:井上奈津子 助監督:岸塚祐季 制作担当:三浦義信
製作:ウィルコ/アクターズ・ヴィジョン 配給:太秦 © そらひとフィルムパートナーズ
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