『JOINT』小島央大監督画像

小島 央大 (監督) 映画『JOINT』について【3/4】

2021年11月20日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開

公式サイト 公式twitter (取材:深谷直子)

小島央大監督画像2
――この映画は4章に章立てされているので、そこにも掛けられている感じですよね。「名簿」「ベンチャー」「ルーター」「エンドデバイス」という言葉と、その意味が各章の冒頭にテロップで入るのですが、こういう作りにしたのは?

小島 「個人情報」がこの映画の中で重要な要素として織り込まれているんですが、個人情報というのは「その人がどういう人か」を定義するものであり、映画自体も「どういう生き方をするか」ということをテーマとしていて、リンクしているので、個人情報にまつわるキーワードを章のタイトルにしました。章立てしたいというアイデアも元々あって。章立てというのはちょっとテレビ番組っぽいというか、映画でしているものはあまりないんですけど、テレビシリーズ、ネットフリックスシリーズのようなのが今は逆に新しいんじゃないかな?と思って作っていった感じですね。

――個人情報についてもやはり勉強になるというか。「ルーター」というのが怖いなあと思いましたね。知らないうちに情報を吸い上げられているだけではなく、植え付けられてもいるということで。気軽に利用してしまいますが。

小島 そうですね、自らアクセスして情報をあげている状況になっていることが多いです。便利さが増すとともに脆弱性の問題も出てきて、それを利用して詐欺が新しい手法を開発していくと。別に僕個人の情報がヤクザに知られたからと言ってそんなに困らないんですが、情報というのは家族などまわりの人とつながっているから、集合体としていろんな情報が結びついた状態になると怖いんです。

――映画の中で、自分や親類に前科があるのが知られて状況が不利になっていくという場面もいくつかありますよね。他人事として聞いていた武司が、その後自分自身で同じ目に遭って追い込まれていくという因果応報的な話になっていたりして。

小島 バチが当たりましたね(苦笑)。

――ロケ地もとても雰囲気ある場所ばかりでした。かなり探されたようですね。

小島 そうですね、東京をカーナビなしで動けるぐらい回りました。

――場所がよいというだけではなく、空間の見せ方がうまいなあと思ったんですが、建築学を学んでいたからセンスが備わっているというのもあるんでしょうか?

小島 なくはないと思います。光の入り方だったり……、光ってかなり心情に結びつくというか、空間に光がどれだけ入ってくるかというのは人間の感情と密接につながっているところがあるので、そこは建築哲学的なものと結びついているかもしれません。空間デザインというより、空間が人に及ぼす影響みたいな。天井が狭いとか蛍光灯がチラつくとか、意識しないことで感情が何かしら左右されていると。

『JOINT』場面画像5 『JOINT』場面画像6
――なるほど。高さにも表れますよね。ベンチャー企業の社長が高層ビルの広いオフィスに移ったときは自然と高揚したポーズや表情が浮かんでくる感じで。

小島 武司が最初に狭いビジネスホテルに泊まっているところでは、あの空間にいるだけで何かしら鬱屈したものを抱えてしまうと。あと換気口にお金を隠している感じとか、やはり状況や感情に結びつけた空間の使い方をしているというのはあります。設計できるわけではないですけど、そういう場所を見つけていきました。

――出所したばかりの前科者がどうやって生活を立て直していくかというのがリアルに描かれていましたね。まずは肉体労働でお金を稼いで、ああやって隠して貯めていって。

小島 銀行口座が開けないですから。

――ああ、そういう問題があるんですね。

小島 前科者は銀行口座も開けないですし、クレジットカードも持てないのですごく困るんです。住居も支援なしでは借りられない。日本だとそういう壁があって、特にヤクザに厳しいです。ヤクザをやめても社会に信用されず、就職もできない。入れ墨が入っているから銭湯にも行けない。だから元ヤクザを支援する団体もあるんです。もちろんヤクザがいい人たちとは言えないですけど、人間であるのには変わりないから、悲しいことですよね。

――一度転落するともうそこから這い出すことができなくなってしまって。

小島 日本の社会はそこに厳しさがありますね。特に暴対法ができてからはヤクザにとっては生きづらい世の中だなと。元々ヤクザにはヤクザなりの道徳感があったんです。落ちこぼれが自分を受け入れてくれないところで中途半端に暴れるのだったら、うちの組に入って年功序列を学んで、礼儀を学んで、義理と人情を噛み締めろ、みたいな。それが極道、道を極めるということで、行き場のない者に生き方を教える学校のようなところだったんです。組織としてそういった行き場のない人間たちが集まっていたという。今もそういう要素はあるんですけど、ヤクザがカッコイイと思って憧れて入る人もいると思うし、いずれにせよ暴対法の影響もあり、以前とは変わってきているとは思います。

――なるほど。ヤクザは行き場のない人たちの受け皿として機能しているという。それは必要ですよね。

小島 そういう人たちもいるよという話かなあと。半グレは半グレなりに生きていて、前科があって身動きが取れないことに苦労している。

――一方ではラクにお金を稼ぎたいという人もいると思うし、荒木のような武闘派はただただ暴れたいだけのような。

小島 荒木に関しては何かしらトラウマがあるんだろうと、そういうキャラクターです。暴力性が溜まっていて、それを解放してくれる組織がヤクザだから。彼にはそういう生き方しかない。

――なるほど。やはり一人一人その生き方には理由があって、それぞれが生きづらさを抱えながらも生きていると。とても身近な問題に感じられます。海外の映画祭での反応はいかがでしたか?

小島 やはり新鮮に感じるみたいですね。ヤクザ映画のファンは海外にも多いのですが、その感じとは違う新しさがあるとよく言われます。あとはキャストがいいと言われます。

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JOINT (2020年/日本/118分/シネスコ/5.1ch/カラー/デジタル)
出演:山本一賢,キム・ジンチョル,キム・チャンバ,三井啓資,樋口想現,伊藤祐樹,櫻木綾,鐘ヶ江佳太,林田隆志,
宇田川かをり,平山久能,二神光,伊藤慶徳,片岸佑太,南部映次,尚玄,渡辺万美
監督:小島央大
エグゼクティブプロデューサー:キム・チャンバ 脚本:HVMR 撮影監督:寺本慎太朗 照明:渡邊大和
録音・整音:五十嵐猛吏 衣装:YK.jr ヘアメイク:安藤メイ 助監督:長橋隆一郎
ラインプロデューサー:翁長穂花 キャスティング:山本一賢,櫻木綾 録音助手:伊藤ゆきの
オンライン編集:橋本悠平 配給:イーチタイム ©小島央大/映画JOINT製作委員会
公式サイト 公式twitter

2021年11月20日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開

2021/11/17/20:43 | トラックバック (0)
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