※作品の結末に触れるネタバレ的言及があるためテキストを白反転させています。
作品鑑賞後にご確認下さい。

――ああ、「37分ワンカット」と謳われている作品なんですが、それってもともとの設定をオーバーしちゃっているということだなと。これは実は30分の生放送テレビ番組として作られているという設定なので、本当はそれぐらいに収めたかったということですよね？

上田　まあそうですね。衛星番組という設定ですけど。

――前半のワンカット部分はそういうテレビ番組として作ったもので、後半でその舞台裏を見せていく……というのが『カメラを止めるな！』の全貌なんですが、映画とテレビが交錯しているのが面白いですよね。テレビ番組は自主映画の撮影隊のお話で、映画自体はテレビの世界を描いているという。

上田　そうですね。ちょっと不安だったのは「再現Vの監督をバカにしているんじゃないか？」ということを言われないかな？ということなんですけど、むしろ37分ワンカットの撮影は再現Vの監督とかじゃないと絶対できないことだろうと思って。映画監督がクオリティを保ちたいと思って「こんなの撮れません」と断ってしまうものも、再現Vの監督は仕事として何があっても最後まで完成させるという。妥協できるというところがカッコいいなと思ってちょっと憧れますね。それを主人公の日暮に託して書きました。

――テレビのプロデューサー役の俳優さんがすごく面白かったですね。

上田　ああ、竹原（芳子）さんですね。映画とかに出るのは初めてなんです。1回だけ蛾の役をやったことがあるそうなんですけど、人間の役は初めてって（笑）。

――（笑）。飄々としていて、調子のいい業界人の感じが出ていました。新鮮な顔ぶれの名役者揃いですね。監督役の濱津（隆之）さんも豹変ぶりが面白かったです。

上田　そうですね。そこも本当に奇跡的だったなって。僕らの年のシネマプロジェクトは24人の俳優を選抜して二人の監督のワークショップを受講してもらい、それから相談して12人ぐらいずつに分けて作品を作ったんです。で、僕の組はちょっと爆弾みたいな俳優ばっかり預かって（笑）。上手いとかじゃないけどその人が持っている個性が強い人を選んだ感じですね。俳優としても二役できるから大変だけどやり甲斐があったと思います。

――ハリウッドでリメイクとかもあり得そうな面白さなんですが、人気のある俳優を揃えたところでこの面白さは出ないんですよね。このメンバーの持ち味を活かしてこその脚本になっているなあと。

上田　脚本を書くときはいつもキャラクターが物語を動かすように書かないといけないなと思っています。今回もキャラが決まってから「こいつだったらこう動くだろう」って展開が微調整されていった感じですね。

――撮影は、まず前半のワンカット部分を撮ってから、その再現という形で後半なぞっていった感じでしょうか？　一緒に撮っているかのように思えますが。

上田　そこは最初「どうしよう？」ってなったところなんですが、一緒には撮れないということになって再現していますね。それも再現Vの監督というところに引っかけたかったというのもあります。