五十嵐 匠 (監督) 映画『二宮金次郎』について【4/5】
2019年6月1日(土)より東京都写真美術館ホールにて公開ほか全国順次公開
公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)
――監督としては、この作品を西部劇を意識して作られたところもあるそうですね。
五十嵐 デヴィッド・パットナムがプロデュースした『キリング・フィールド』(84)や『ミッション』(86)などの作品には、異文化の土地に白人をポトッと落とし、そこで彼が一生懸命がんばって出ていくという形があって、僕は今回荒れた農村に二宮金次郎という人間をポトッと落とし、どうあがいて復興させていくか?という形にできないかなと思った。桜町領の百姓たちは人心荒れた人間たちとして描きました。
――なるほど。そういう作品の構想は以前からお持ちだったんですか?
五十嵐 佐々木譲さんの『二風谷決闘録』を映画にしたいと考えたことがあって、それはアイヌの集落の話で、西部劇なんですよ。日本で西部劇を作るとすると北海道なんです。アイヌが関わってきて、『許されざる者』(13)もそうなんですが。それをやりたいと思っていたことがありました。アイヌにも興味があるんですよ。ただ、金集めがなかなか難しいんですよね。多くの人が観てくれるような、ちょっとエンターテインメントの要素のあるものをなんとか作れないかな?とは思っています。そういうものはどうしても教育的なものに思われちゃうから。
――ぜひ観たいですね。アイヌが舞台になるエンターテインメントを。この作品も、教育臭がなく面白い映画になっています。金次郎が五平を池に投げ込むところは意表を突かれました。大男だったんですね。
五十嵐 身長は合田さんと同じなんです。185、6センチあって。でもプロレスラーみたいな大男です。
――長生きもされていますよね。あの時代に70歳まで生きられて。
五十嵐 歩くからです。歩きながら各地を回った種田山頭火も長生きでしたね。日光の復興にかかわった晩年には48ヶ所くらいも歩いたんです。距離もあるので、それは健康になりますよ。
――たみというろうの女の子と金次郎との交流も描かれていましたが、これは創作した部分ですか?
五十嵐 それは完全に創作です。金次郎の生きざまを、そばで黙って見ている存在を入れられないかなと思いました。言葉じゃなくて。
――なるほど。金次郎はまったく偉人然としたキャラクターではなく、村人にとって煙たい存在でもあっただろうなと感じました。
五十嵐 金次郎の村々での調査は非常に徹底していたと聞いています。トイレの汚物でその家庭が何を食べているのかを調べるということもしていたそうです。食料事情や経済事情がわかると。それは嫌でしょう?
――嫌ですね(笑)。熱心なのはわかりますが、そこまで立ち入られたら文句が出ますね。
五十嵐 でもそれだけ緻密に調査をしているから忠真に「年貢を安くしてやってください」とプレゼンできるんです。金次郎自身の家計簿を見ると、お白粉が十六文とか銭湯が十文とか細かいんですよね。なんと思われようとやることをやる、とても厳しい人なんだと思います。
――方言がとても自然でしたが、メインのキャスト以外は地元の方が多いのでしょうか?
五十嵐 栃木の劇団にあたったり、日光と小田原でオーディションをやったりして集めました。できるだけ地元の人と一緒にやりたいと考えていました。メインの撮影は約40日で、プラス実景の撮影に1年。田んぼを5枚、二宮先生の映画を撮るんだったら好きに使っていいと言って日光のみなさんはこころよく貸してくれました。
出演:合田雅吏,田中美里,成田浬,榎木孝明(特別出演),柳沢慎吾,田中泯,犬山ヴィーノ,長谷川稀世,
竹内まなぶ (カミナリ ),石田たくみ (カミナリ )
監督: 五十嵐匠 脚本: 柏田道夫 原作: 「二宮金次郎の一生」(三戸岡道夫 栄光出版社刊)
音楽: 寺嶋民哉 プロデューサー:永井正夫 撮影:釘宮慎治 照明:山川英明 美術:中澤克己
録音:瀬川徹夫 編集:宮島竜治 衣装:大塚満 メイク:宮本真由美 助監督:羽石龍太郎
製作: 映画「二宮金次郎」製作委員会 協力:全国報徳研究市町村協議会 製作プロダクション:株式会社ストームピクチャーズ 配給:株式会社映画二宮金次郎製作委員会 © 映画「二宮金次郎」製作委員会
公式サイト 公式twitter 公式Facebook