今週の一本
(2007年 / アメリカ / フランシス・ローレンス)
動く標的、撃ち落とせ!――いま、なぜか、リチャード・マシスン。

佐藤 洋笑

アイ・アム・レジェンド1 以下の文章は、リチャード・マシスン原作(「吸血鬼」別名「地球最後の男」)、フランシス・ローレンス監督作品『アイ・アム・レジェンド』鑑賞後の、あるアクション/クライム・ムーヴィー・ファン、しかもSFもちょっとかじっている二人――仮に黒岩と大門と呼びます――の雑談の抜粋であります。

大門 クロさん『アイ・アム・レジェンド』どうでしたか?

黒岩 いやあ、それにしても、いま、なぜ、リチャード・マシスン原作なのか……ネタ切れか(笑)。ヴィンセント・プライス主演の『地球最後の男(The Last Man on Earth)』(1964年)、チャールトン・ヘストン主演の『地球最後の男オメガマン(The Omega Man)』(1971年)に続き三度目の映画化か。まあ、日本人としてはこの原作を翻案した藤子・F・不二雄センセのSF短編『流血鬼』というのも忘れちゃイカンですね。ともかく、スティーヴン・スピルバーグ監督の『激突!』の原作や、ロジャー・コーマン制作の『恐怖の振子』『黒猫の怨霊』『忍者と悪女』といったエドガー・アラン・ポーもの、そして、「トワイライトゾーン」などのTVドラマの脚本も多く手がけたSF、ホラー、ファンタジーの巨匠ですからね。困ったときには頼りになりますよ。それに、今バリバリに活躍している、40代から50代の映画人には、オレのような30代の人間よりよほど思い入れがあるでしょう。

アイ・アム・レジェンド2大門 あ、『ある日どこかで』もこの人の原作なんだ!スゴイ人ですね。

黒岩 …フフフ、そうかい。君もリチャード・マシスンって名前聞いてもピンとこない世代か、若者か。じゃあ、君のほうはどうだった『アイ・アム・レジェンド』?

大門 まあ、宣伝での"ヒューマン"な売りとは大分異なる映画だなあ、と(笑)。――近未来に蔓延したウィルスのおかげで人類はほぼ滅亡し、ウィル・スミス演じるマッチョな科学者が一人生き延びて、人類再生への道を探る…のはいいとして、実は人類の大半はウィルスに感染したおかげで肉食の凶悪な野獣と化している。その中で銃乱射しながらウィルは今日もたくましくサバイバルしているという…最初はリドリー・スコット監督とアーノルド・シュワルツェネッガー主演での企画だったそうですが、それだけで映画のテイストは理解できるんじゃないかと(笑)。

黒岩 まあ、原作の主人公が篭城する夜の一軒家を大挙して包囲・攻め寄せてくる吸血鬼軍団っていうイメージは、明らかにジョージ・A・ロメロの映画とかに影響を与えているので、この映画がゾンビ大量虐殺ド派手アクションになっていてもおどろくことはなにもないような気がするんだが、それにしても原作の旨味みたいなものをバッサりカットしたつくりになっていたな。有る意味すがすがしくも感じるよ(笑)。

アイ・アム・レジェンド3大門 旨味というと?

黒岩 まあ、あまりネタバレは好みじゃないので、詳細は避けるが、ウィルスに感染した連中が、まったくコミュニケーション不能の野獣と化しているっていうのが、最大のポイントよ(笑) 原作では彼らの築いた世界の前に主人公の価値観が揺さぶられるっていうのが作劇の大きなポイントだったし、それを忠実に映画化したヴィンセント・プライス版はもちろん、あのタカ派のチャールトン・ヘストンが世紀末英雄伝として作り変えてしまった『オメガ・マン』であってもそのポイントは押さえていたんだが、今回はもう割り切ったゾンビモノだからな(笑)。まあ、コケおどしの連続。「アイ・アム・レジェンド」っていうのは原作では皮肉な意味合いを持つ決めゼリフだっだが、ヘストン版と本作はそれを履き違えたというか、真に受けたというかの使い方でな。言葉って難しいよ。

大門 なるほど、じゃあ、主人公が孤独を紛らわすために店員代わりにマネキンを並べてみたり、空軍基地の飛行機の翼から摩天楼に向かってゴルフの打ち放しやってみたりなんていう孤独の描写はこの映画の独創なんですね。

黒岩 まあ、いいわけみたいなもんだろ。一応、感動を売りにしているわけだからな。アイ・アム・レジェンド4しかし、それもとって付けたっていうのが正直なところだろ。まあ、そんな映画でもてらうことなく共演者はほとんど犬一匹という状況で押し切っていくウィル・スミスには正直首をたれたくはなるが…。

大門 うーん、今回は本当にクロさんも困っていますね。じゃあ、あれでいいんじゃないですか、ウィル・スミスのファンなら必見の一本!(笑)。

黒岩 …だな! …と、言いたいところだが、まあ、これは脚本の問題だとは思うが、突然ボブ・マーリーのCDをかけながら正義と真実の人みたいな自分語りを始めるウィル・スミスにはココロある映画ファンの多くは引くだろう。実際、客の入りは封切直後なこともあって、平日とは言えソコソコだったが、途中退場が目立ったしな…。うーん…。

大門 …うーん…。

黒岩 …………………………………………………………………………飲むか!

大門 ……………クロさん、好きなんだから、もう!ネぇちゃん、生ビールジョッキ二つ!

(2007年12月某日 歌舞伎町・「三平酒家」にて)

(2007.12.18)

アイ・アム・レジェンド 2007年 アメリカ
監督:フランシス・ローレンス 脚本:マーク・プロトセヴィッチ,アキヴァ・ゴールズマン 撮影:アンドリュー・レスニー
出演:ウィル・スミス,サリー・リチャードソン,アリス・ブラガ (amazon検索)
(C)2007 Warner Bros. Entertainment Inc.
公式

2007年12月14日、日米同時公開!
サロンパス ルーブル丸の内他全国ロードショー

アイ・アム・レジェンド 特別版(2枚組)
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発売日:2008-04-24
おすすめ度:おすすめ度4.0
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2007/12/18/16:14 | BBS | トラックバック (7)
「あ」行作品 ,佐藤洋笑 ,今週の一本
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