インタビュー
田中情監督

田中 情 (映画監督)

映画「シンクロニシティ」について

公式

2011年6月11日(土)より渋谷UPLINK Xにてロードショー

女たちにカネを無心しながらモラトリアムを生きる画家志望の男・岡崎と、援助交際でカネを稼いでは彼に貢ぐ女・緑子。ズルズルと関係を続ける二人だが、突然振りかかる暴力の連鎖が彼らの人生を変えていく……。『シンクロニシティ』は現代社会のひずみとそこでの重苦しい青春を描く作品だが、不器用な若者たちが人生に立ち向かう瞬間の鮮烈さに心打たれ、その横では百々和宏や田渕ひさ子ら気鋭のオルタナ・ミュージシャンが軽やかに演技するのに驚かされる。 製作費150万円の低予算の自主映画ながら、様々な楽しみ方ができる良質エンターテインメントに仕上がった本作。新鋭・田中情監督に、異色の経歴から映画作りに対するとても率直な想いまでをうかがった。(取材:深谷直子

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田中情監督3――演出について伺いたいんですが、この作品は脚本的には決め台詞のようなものはないですよね。ずっと日常の普通の会話が続いていく感じで。でも説明に頼らず役者が演技で感情を見せていくというのをすごく感じましたね。リハーサルはかなりされたんですか?

田中 富澤(タク)さんが時間的な都合でできなかった以外は全員リハーサルをやりましたね。大体みんな1回か2回はリハをして、緑子役の宮本(一粋)さんは演技は素人ですがほとんど主演ぐらいの重要な役だったので、1カ月ぐらいリハをしました。

――宮本さんは冒頭のシーンから印象的でしたが、当て書きなんですか?

田中 いや、当て書きではなくたまたまですね。宮本さんには元々は別の役をお願いするつもりだったんですが、緑子役がなかなか決まらなかったんですよ。で、宮本さんに会って、いけるかもしれないなと思って。

――そうなんですか。冒頭のシーンの横顔がとてもきれいなので、彼女を見せるための映画でもあるのかと思っていました。無表情で透明感があって、ロリータな雰囲気ですよね。

田中 そうですね、透明感ありますね。あと内面の何かドロドロした感じも出せてるなと。

――撮影が長回しなので演技は大変じゃないかと思ったんですが、みんな自然で。しかもミュージシャンなどが本人のイメージとはちょっと違う役柄を結構なり切って演じていますよね。先ほど出たひさ子さんも面白いし、モーサム・トーンベンダーの百々さんもよかった。

田中 百々さん上手いですよね。評判いいんですよ。

――指の動きとかイヤらしい感じで、でも狙っている女性をみんな岡崎に取られているという(笑)。

田中 そうそう、それは結構面白いなって。岡崎と百々さん演じる緒方との絡みはこの重い作品の中で救われるシーンなんですよ(笑)。

――百々さんが映画出演のことを語っているインタビューがあったんですが、現場のクリエイティヴな空気感が面白くて刺激を受けたということを言っていました。

『シンクロニシティ』4田中 まあ好きにやってよという感じでしたけどね。みなさんアクが強くて一筋縄じゃいかないじゃないですか。上から押さえつけても撥ね返されますから。撮影は大変でしたね。やっぱり一人だったので、調整とか。

――撮影監督の田邉顕司さんは『GOEMON』(09/監督:紀里谷和明) などメジャー作品を手がけている方ですね。

田中 ええ、彼は『キリトル』を気に入ってくれて参加したいと言ってくれました。

――ほとんどワンシーン・ワンカットで撮られていますが、ブランコのシーンはすごく動きがあるし、ホテルのシーンでは固定で覗き見しているみたいで、長回しでもシーンによって撮り方を変えていますよね。カメラワークは監督が考えたんですか?

田中 そうです、全部自分で考えて「こう撮ってくれ」と。カメラマンは二度と僕とやりたくないらしいです(笑)。みんな僕とはやりたくないと思うんです、もう懲りたと。

――いやいや(笑)。次回作は決まっているんですか?

田中 構想はありますが、具体的にはまだ動いていないですね。またハードな作品です。

――『シンクロニシティ』と同時上映で、広澤草さん主演の短編映画『蝶と女と鴉と男』(10)という作品もありますね。

田中 最初から2本同時上映するつもりだったんですよね。『シンクロニシティ』が80分で、短編が10分で。撮ったのは去年の1月かな。で、そのときにもう『シンクロニシティ』を撮ることは決めていて、同時上映するって公言してたんですよ。自分を追い込むために。公開できてホッとしてるんですけど、言っておいてダメだったら映画業界にいられませんでしたね。何とかできたのでよかったです。

――タイトルの『シンクロニシティ』とはどういう思いで付けたんですか?  

『シンクロニシティ』5田中 みんなにポリスの曲名から取ったのかとか言われるんですけど、まあありがちでちょっとダサイかな、とも思うんです。でもありがちなこのタイトルが結構重要で。『キリトル』から立て続けにこの作品を撮ったんですが、なかなかタイトルが決まらなくて。でも作品の成り立ちを考えているときにパッと浮かんできたこの『シンクロニシティ』がいちばんしっくりくるなと思ったんですよね。普通、映画を撮る人というのは、映画が大好きで学生の頃から8ミリを回して、映画学校に行って、助監督をやって、というルーツがあるじゃないですか。僕はまったくそういうルーツにはないのに映画を撮ってしまった。まず上京していなければ映画作りはやっていないし、いろんな出会いの積み重ねもあってできたことで、ちょっとズレてあのときあの人に会えなかったらこれは作られなかったなっていうのがいっぱいあるんですよね。それで『シンクロニシティ』っていうのがいいのかな、と。まさか自分が映画を撮るとは思っていなかったんですよ。

――なるほど、群像劇とも言える作品なので、同時多発的な偶然性という意味にも取れると思うのですが、監督の中での縦の時間軸での偶然性という意味で、映画作りへのパーソナルな想いを込めたタイトルだったんですね。映画はこれからも撮っていきたいと思っていますか。

田中 そうですね、撮っていないと不安です。食っていけないので平日はバイトして、週末はTV局でCGの仕事をして、という休みなしの日々です。本当によっぽど映画が好きじゃないとやっていけないですよ。『シンクロニシティ』はこれから公開ですが、早く終わってほしいと思います。とっとと終わらせて忘れたいんですよね。これ書いていいですよ、「こんなの忘れて早く次に進みたい!」(笑)。

――本当にこれから公開なのに(笑)。でもきっとそういうのはあるんでしょうね。作ったのは1年前で、そこで力を出し切ったのに公開まで長いですもんね。

田中 1年前に作ったまま、亡霊みたいにぶら下がっていて。他のみんなは各々の時間がどんどん進んでいるじゃないですか。でも僕だけ去年のままですよ。

――そうか、自主での映画制作というのは辛いものですね。

『シンクロニシティ』6田中 撮り終わってからがしんどいんですよ。寝汗とかかきますよ。公開が決まらないというのは本当に切羽詰まるものなんですよね。

――ほかの映画監督の方とはルーツが違うと感じているとのことでしたが、交流はあまりないんですか?

田中 ないですね。みんな映画学校とかから来ているけど僕は全然違うところからなので、まず反りが合わない。……でも今度面白い映画監督たちが集まって短編映画の上映会をするんですよ。6月23日なんですけど(「新世代監督・傑作短編上映イベント」@サラヴァ東京)。僕の『蝶と女と鴉と男』と、『婚前特急』(11)の前田(弘二)監督の作品と、友人でこのイベントのオーガナイザーも務めるドキュメンタリー作家の佐々木誠くんの作品と、あと2人の監督が参加してすごく濃いメンツで上映会をして、終わったらトークショーというのをやりますね。

――それは面白そうですね。ほかの監督と交流があると刺激になっていいでしょうね。最後にお客さんへのメッセージをお願いします。

田中 老若男女、ちびっこ以外の多くの方に観ていただきたいですね。全然共感できないという方もいると思うし、ちょっとここは何かあるな、と思う方もいて、好きか嫌いかどっちかに評の分かれる映画だと思うんですけど、それでいいです。忘れられるのがいちばん嫌なんですよ。自由な楽しみ方をして、何かしら持ち帰っていただけたらと思います。

新世代監督・傑作短編上映イベント
2011年6月23日(木)、サラヴァ東京にて 19:00開場 19:30~23:00
公式
話題の映画監督たちの短編作品を一挙上映。全監督出演のトークイベントもあり。サラヴァ東京ならではの異色の顔合わせが実現!
出演監督: 前田弘二(「婚前特急」),卜部敦史(「scope」),田中情(「シンクロニシティ」),ドキドキクラブ(元マッドシティー),佐々木誠(「Fragment」)

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( 2011年5月30日 中野で 取材:深谷直子

シンクロニシティ 2011年/日本/カラー/99分/ステレオ/HD
企画・製作・監督・脚本・編集・監督:田中情
出演:小林且弥,宮本一粋,百々和宏,田渕ひさ子,富澤タク,りりィ,高木三四郎,星野あかり,橋本一郎,松田百香
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2011年6月11日(土)より渋谷UPLINK Xにてロードショー

ビルと動物園 スペシャル・エディション [DVD]
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パーク アンド ラブホテル [DVD]
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  • 監督:熊坂出
  • 出演:りりィ, 梶原ひかり, ちはる, 神農幸, 津田寛治
  • 発売日:2009-07-25
  • おすすめ度:おすすめ度4.0
  • Amazon で詳細を見る

2011/06/09/21:05 | BBS | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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