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クリムト1

クリムト

10月28日より、Bunkamuraル・シネマ、
シネスイッチ銀座ほかにてロードショー!

INTRODUCTION

19世紀末、ウィーン。
時代に嫉妬されたひとりの天才画家がいた。

クリムト2「エロス」と「―死―タナトス」、クリムトが描いた究極の愛
19世紀末、オーストリア。時代より遥かに先を行ったひとりの天才画家がいた。――グスタフ・クリムト。彼の作品には「エロス」 が充溢している。官能と情熱に満ち溢れた世界、あでやかで豊かな色彩、描き続けた「宿命の女ファム=ファタル」…。 キャンバスの中の女性はなまなましいほどの肉感をたたえながら、恍惚の表情を浮かべてさえいる。「モデルに触れないと描けない」画家は、 触れることで対象から何を導き取り、感じ、絵筆を執っていたのか。
当時、ウィーンには彼の子どもが30人もいたという。
1900年パリ万国博覧会において「哲学」で金賞を受賞し、仏アール・ヌーヴォーの先駆者ともなったクリムトだったが、 パリでの賛辞は故郷ウィーンでは"ウィーン文化全体に泥を塗るひどいスキャンダル"と罵倒されてしまう。
それは、先進的なパリとは対照的に、保守的なウィーンではタブーとされていた裸体、妊婦、性描写をこともなげに描いたクリムトに対する、 時代からの嫉妬だった…。

クリムトと旅する19世紀末ウィーン文化
クリムトに扮するのはその演技に絶大な信頼を寄せられているジョン・マルコヴィッチ。 久々の主演で夢とうつつ現の狭間に身を置いた画家の危うい精神世界までをも、見事に演じきっている。監督・脚本は『見出された時― 「失われた時を求めて」より―』のラウル・ルイス。鬼才との呼び声高い独特の演出、 寓意に満ちたカメラワークはまるでクリムトが描いた絵のようにきら煌めきを放っている。
また、クリムト本人がデザインを手がけた衣装の再現や『クリムト』のために作られた100点を超える衣装の数々、 そして19世紀末のカフェハウスのインテリアなど、細部にいたるまで当時を意識した世界観はまさに美の洪水。 クリムトを通して私たちを絢爛豪華な世紀末のウィーンへといざな誘ってくれる。

Story

クリムト3 1918年。芸術の都ウィーンの栄光は、まさに終焉を迎えようとしていた。そして、 絵画に新たな潮流を生み出した稀代の画家、グスタフ・クリムト(ジョン・マルコヴィッチ)もまた、 命の灯火を消そうとしていた。脳卒中で倒れ病院に運ばれたクリムト。しかし彼を見舞うのは愛弟子のエゴン・シーレ(ニコライ・ キンスキー)ただ一人。発作に苦しみ、朦朧とした意識の中、クリムトの目には、栄光と挫折の人生がよみがえる。 まるで寓話に満ちた彼の絵のように……。
1900年。保守的なウィーンでは彼の描く裸の女性がスキャンダルとなっていた。対照的に、先進的なパリでは絶賛され、 パリ万博で金賞を受賞する。
その会場でスクリーンに映る美しい女性レア(サフラン・バロウズ)に心奪われたクリムト。彼は嫉妬する恋人ミディ(ヴェロニカ・フェレ) をおいたまま、文化省の書記官(スティーヴン・ディレイン)の計らいで、レアと密会を果たし、彼女の肖像画の依頼を受ける。
ウィーンに戻ったクリムトは、大臣から助成金を打ち切られたことを聞き、ますます反抗的になる。そんなとき、 クリムトのモデルをしていたミッツィ(アグライア・シスコヴィチ)が彼の子どもを産んだことを聞き、会いに行く。 彼にはモデルたちとの間に、すでにたくさんの子どもがいたのだ。恋人ミディにプラトニックな愛を求め、 モデルたちに肉体的な愛を求めるクリムト。しかし彼の魂が求めるのは、ファム=ファタル宿命の女レアだけ。
書記官にレアと会うことを促され、彼女の居場所を教えられる。しかし、周囲の人には書記官の姿は見えず、 クリムトの独り言にしか見えない。そう、謎の書記官はクリムトのもう一人の自分、心の声だったのだ。心の声に導かれるままに、 彼はレアの庇護者である公爵(ポール・ヒルトン)に会いに行く。しかしレアは死んだと告げる公爵。虚構と現実が入り交じり、 深まるパラノイア。自分の存在さえはかな儚くなる──。レアを求め、雪の中クリムトはアトリエに戻るのだが…。

Cast/Staff Profile

クリムト : ジョン・ マルコヴィッチ

クリムト41953年12月9日、アメリカ・イリノイ州生まれ。
  大学卒業後、シカゴで劇団ステッペンウルフ・カンパニーの創設に参加。76~82年に50本以上の公演に出演、演出、 美術を担当し、数々の賞を受賞した。84年に『プレイス・イン・ザ・ハート』(ロバート・ベントン監督)に起用され、 映画初出演にしてアカデミー助演男優賞にノミネート、『キリング・フィールド』(ローランド・ジョフィ監督) との2作で全米映画批評家協会助演男優賞に輝いた。
  その後、『太陽の帝国』('87/スティーヴン・スピルバーグ監督)、『ガラスの動物園』('87/ポール・ ニューマン監督)、『危険な関係』('88/スティーヴン・フリアーズ監督)などに出演し演技派の地位を確立、93年には『ザ・ シークレット・サービス』(ウォルフガング・ペーターゼン監督)でアカデミー助演男優賞とゴールデン・グローブ助演男優賞候補になった。 また88年、『偶然の旅行者』(ローレンス・カスダン監督)で初めて製作総指揮を担当しプロデューサーとしても名を馳せている。
その他の主な出演作品に『シェルタリング・スカイ』('90/ベルナルド・ベルトルッチ監督)、『ウディ・アレンの 影と霧』 ('92/ウディ・アレン監督)、『愛のめぐりあい』('95/ミケランジェロ・アントニオーニ監督)、『コン・エアー』 ('97/サイモン・ウェスト監督)、『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』('00/E・エリアス・マーヒッジ監督)、 『とわ永遠の語らい』('03/マノエル・ド・オリヴェイラ監督)など多数。巨匠、名匠からは出演を、名優たちには共演を望まれている。 最近では、ジョニー・デップに主演をオファーし、自ら製作に携わった伝記映画『リバティーン』('05/ローレンス・ダンモア監督) で演じたチャールズⅡ世が記憶に新しい。
  本作では、梅毒に冒されたクリムトの危うくも難解な精神世界を見事なまでに理解し、 その演技を銀幕で見せつけてくれている。

グスタフ・クリムト(1862-1918) Gustav Klimt
 7月14日、ウィーン郊外バウムガルテンに生まれる。父親は彫金師であった。 1876年、ウィーン美術工芸学校(現・ 美術工芸大学)に入学。卒業後の81年には弟のエルンスト、友人のフランツ・マッチュらとともに「画家カンパニー」を設立、 室内装飾家としての成功を収める。88年、ブルク劇場に施した壁画の装飾が認められ、 26歳にして皇帝より最高の表彰である黄金功労十字勲章として王冠を授与される。 97年4月3日、「オーストリア造詣芸術家連盟」 として分離派設立のために集結、6月21日に総決起集会を開催、改革の先鋭となり機関誌「聖なる春ヴェル・サクルム」 を刊行するなどウィーン世紀末、アール・ヌーヴォーを語るに忘れてはならない画家のひとりである。

 

ミディ(エミーリエ・フレーゲ) : ヴェロニカ・フェレ

1965年6月10日、ドイツ・ゾーリンゲン生まれ。
  85年よりバエルン・ステート・オペラなどを中心に数々の舞台を踏んだのち、映画出演2作目にしてヘルムート・ ディートル監督の「Schtonk!」('92)でドイツのバンビ賞受賞を果たす。その後も持ち前の語学力を活かし舞台、映画、 TVと活躍の場を拡げ続け、2002年には最も有名なオーストリア人女優の証であるロミー賞を受賞する。主な出演作品に『 悦楽晩餐会/または誰と寝るかという重要な問題』('99/ヘルムート・ディートル監督/独)、「レ・ミゼラブル」('00/ジョゼ・ ダヤン監督/仏)などがある。
  本作では、クリムトに最も近しい場所にいたにも関らず、生涯プラトニックな関係を守り続けた当時の前衛的女性ミディを、 切なさをもって演じている。

エミーリエ・フレーゲ (1874-1952) Emilie Floge
 ウィーンで建築物装飾のための石材工場を経営する家庭に生まれる。クリムトとの出会いは、彼の弟・エルンストとエミーリエの妹・ ヘレーネとの結婚がきっかけだった。
 1905年、妹と一緒に高級モード・サロン「カーサ・ピッコラ小さな家」を開く。それは、インテリアにヨーゼフ・ ホフマンとコーロー・モーザー、調度品一式をウィーン工房、ショップカードはクリムトが手がける、という贅沢なものだった。 彼女は新しいトレンドを飽くことなく追求し続け、そのデザインをクリムトが手がけることも度々だった。 コルセットを脱ぎ捨て女性が精神的に自立し始めたころ、彼女はまさに、時代の先駆けとなった女性である。

 

レア・デ・カストロ : サフラン・バロウズ

1973年1月1日、イギリス・ロンドン生まれ。
  15才の時にナオミ・キャンベルと同じスカウトマンに見出され、シャネル、イヴ・サン・ローラン、ヴィヴィアン・ ウエストウッドなど名だたるデザイナーのモデルとして成功を収める。
  93年、ジム・シェリダン監督作品「父の祈りを」でスクリーン・デビューを果たし、「サークル・オブ・フレンズ」 ('95/パット・オコナー監督)で注目を浴びる。映画、TVを中心にアメリカ、ドイツ、フランス、 スペインと世界を股にかけて活躍中である。主な出演作品に『エニグマ』('01/マイケル・アプテッド監督)、『フリーダ』 ('02/ジュリー・テイモア監督)、『トロイ』('04/ウォルフガング・ペーターゼン監督)などがある。本作では、 クリムトが描き続けた「宿命の女ファム=ファタル」の象徴という難しい役どころに挑戦、その美しさを惜し気もなく披露している。

エゴン・シーレ : ニコライ・キンスキー

1976年7月30日、フランス・パリ生まれ。
  父に怪優クラウス・キンスキー、義姉にナスターシャ・キンスキーという芸能一家で育つ。89年、13才の時に父親が監督・ 主演を務めた『パガニーニ』でスクリーン・デビューする。幼少期はカリフォルニアで過ごし、2003年に拠点をベルリンへと移す。 現在は主にドイツ、アメリカを中心に活躍している。
  主な出演作品に「恋のトルティーヤ・スープ」('01/マリア・リポル監督)、『イーオン・フラックス』 ('05/カリン・クサマ監督)など。
  本作では、エゴン・シーレという癖のある人物像を、その才能を存分に活かして見事に再現している。

エゴン・シーレ(1890-1918) Egon Schiele
 6月12日、ウィーンに程近いトゥルンに、オーストリア・ハンガリー帝国国有鉄道運営局幹部職員の長男として生まれる。  1905年1月1日、父親が死去、初の自画像を含め多数の絵を描く。06年ウィーン・アカデミーのクリスチャン・ グリーペンケルルの教室に入学、翌年クリムトに出会い、彼の様式および「ウィーンゼツェッション分離派」の影響を受ける。09年、 友人たちと「新芸術家集団」を設立、第1回目の展示会を開催する。11年、ミュンヘンの芸術家連盟「SEMA」に入会、以降、 意欲的に作品を発表するも、作品を不道徳と見なされ度々勾留される。18年、クリムトの死後、 3月に開催されたウィーン分離派展に参加、成功を収めるが、同年10月31日、スペイン風邪のため死去。

 

監督・脚本:ラウル・ルイス

1941年7月25日、チリ・プエルトモント生まれ。
  舞台の脚本を書くことを主とし、56年から62年の間に手がけた作品は100本を超える。68年、「Tres tristes tigers」で監督デビュ ー、一躍チリ映画の第一線におどり出た。 しかし73年チリの軍事政権交代によりパリへ移住、その活躍の場もそれに伴い移行することに。78年、ピエール・クロウスキー原作の 「L'Hypothese du tableau vole」がヨーロッパでヒットし、 夢とうつつ現の狭間を移ろう様を描ける映像詩人としての地位を不動のものとした。その後も続々と作品を発表し続け、 20年間で50本という驚異の多作ぶりを見せている。日本初公開となった『見出されたとき―「失われた時を求めて」より―』('99) を始め、4作品がカンヌ国際映画祭でパルムドールにノミネートされている。本作では得意の映像詩と「クリムト」 という題材を見事に融合させ昇華させている。

コメント
 『クリムト』はグスタフ・クリムトの人生や彼の生きた時代を順番通りに追っている単なる伝記映画ではない。もっと空想的で、 幻想的な映画と言えるだろう。画家クリムト自身から素材が螺旋(ルビ:らせん)状に渦を巻き、溶け合う、 まるで彼の作品のような映画である。独創的な作品の特徴、卓越された美意識、多様な色彩、空間的なゆがみ、 クリムト特有の複雑なものの見方を映像の中に生かすようにした。そして豊かだがどこか不気味な19世紀末を再現し、 その背景を明らかにしようとした。
 本作は夢とうつつ現、正気と狂気が入り混じった作品である。さらに、この作品はあらゆる意味でワルツなのだ。 止まることなく回転し、どんどんスピードに乗り、目がくら眩むほど陽気にテンポを刻み続ける。事実、 私の頭の中にはクライマックスが近づくにつれて不気味にテンポが速くなっていき、 思いもかけないところで唐突に終わってしまうラヴェル作曲の「ラ・ヴァルス」という曲が流れていた。
 そして、梅毒によってクリムトの情緒が不安定になっていったことが痛烈に示しているように、安心できる不変的なものなどない、 ということを私は言いたかった。物や壁の動きによって空気は微妙に変わる。照明の当て方も変わってくるし、 もちろん役者たちの動き方も変わってくる。
 物語の舞台はハプスブルク家の衰退と、慌しく揺れ動く19世紀末のウィーン。ほとばしる感情と秘密の恋愛、 性的欲望を持っていると注目の的になってしまうような時代だった。激動の時代、芸術的な個性が芽生えたとされる時代である。 新しい時代を開拓するためにクリムトは社会的風潮と自国の制約を打破しなくてはならなかった。彼はロマンチックな恋愛と、 時には正反対である普遍的な家庭生活からそれらを模索した。しかし、皮肉にも危険な恋愛が優先となり、 家庭は彼にとって波乱に満ちたものとなってしまう。
 クリムトが全体よりも細部に、総合的な表現よりもディティールにこだわったように、私も細かい部分に対する欲求を持っている。 この作品は美と喜び、そして19世紀末の頽廃的な美意識にあふれていると同時に、死に対する意識と死への予言もはら孕んでいる。 この映画がクリムトの生きた時代をうまく映し出せていることを願っている。
 まさに、この映画の中で死は喜びである。
 最後にカール・クラウスの言葉を引用して――「死のみが嘘をつかない」

ラウル・ルイス(今は亡き故カール・クラウスとともに)2004年3月

 

C R E D I T

―CAST―
クリムト : ジョン・マルコヴィッチ
Klimt : John Malkovich
ミディ : ヴェロニカ・フェレ
Midi : Veronica Ferres
レア・デ・カストロ : サフラン・バロウズ
Lea de Castro : Saffron Burrows
エゴン・シーレ : ニコライ・キンスキー
Egon Schiele : Nikolai Kinski
書記官 : スティーヴン・ディレイン
Secretary : Stephen Dillane
公爵 : ポール・ヒルトン
Duke Octave : Paul Hilton
セレナ・レデラー : サンドラ・チェッカレッリ
Serena Lederer : Sandra Ceccarelli
アウグスト・レデラー : カール・フィッシャー
Augusut Lederer : Karl Fischer
ベルタ・ズッカーカンデル : イリーナ・ワンカ
Berta Zuckerkandl : Irina Wanka
フーゴー・モリッツ教授 : ヨアヒム・ビスメイアー
Hugo Moritz : Joachim Bismeier
ミッツィ : アグライア・シスコヴィッチ
Mizzi : Aglaia Szyskowitz
アドルフ・ロース : デニス・ペトコヴィッチ
Adolf Loos : Dennis Petkovich
ヘルテル大臣 : エルンスト・ストッツナー
Minister Hartl : Ernst Stotzner
クリムト(ダブル) : ライナー・フリードリッセン
Double Klimt : Rainer Friedrichsen
メリエス : ギュンター・ジリアン
MELIES : Gunther Gillian

―CREW―
監督・脚本 : ラウル・ルイス
Director & Author : Raul Ruiz
製作代表 : ディエター・ポホラトコ
Delegate Producer : Dieter Pochlatko
製作 : アルノ・オートマイアー
Arno Ortmair
マシュー・ジャスティス
Matthew Justice
アンドレアス・シュミット
Andreas Schmid
撮影監督 : リカルド・アロノヴィッチ
Director of Photography : Ricardo Aronovich
セット・デザイン : ルディ・ツェッテル
Production Design : Rudi Czettel
カタリーナ・ウォッパーマン
Katharina Woppermann
絵画制作 : フランツ・ヴァナ
Art Painter : Franz Vana
衣装 : バージット・フッター
Costume Designer : Birgit Hutter
スチール : ベルンハルト・バーガー
Stills Photographer : Bernhard Berger

EPO-Film/Film-Line Productions/Lunar Films/Gemini Films/AND Andreas Schmid
KLIMT
A Viennese Fantasy a la Maniere de Schnitzler
international distribution, independent film sales
Financially supported by: Austrian Filminstitute Vienna Film Fund Filmstiftung NRW ARD
/Degeto FFF ORF Film/Televisionagreement Eurimages

2006年/オーストリア・フランス・ドイツ・イギリス合作/97分/カラー
35mm/アメリカン・ヴィスタ/Dolby SRD/原題:Klimt
字幕翻訳:古田 由紀子
編集協力:植田 泰
(C) epo-film, Bernhard Berger. All Rights Reserved.

後援:オーストリア大使館、ウィーン代表部、オーストリア政府観光局
配給:メディア・スーツ

公式HPhttp://www.klimt-movie.com/

10月28日より、Bunkamuraル・シネマ、
シネスイッチ銀座ほかにてロードショー!

2006/10/07/13:54 | トラックバック (0)
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