『大都会―闘いの日々―』年末年始・前半一挙放送
正味45分の間に登場人物全員の人生を崩壊させまくる暗黒刑事ドラマの金字塔『大都会―闘いの日々―』。その仄暗いカタルシスが日本全国を感動の渦に包んで、はや4ヶ月。相変わらず気が利きまくるCS局・日テレプラス&サイエンスの『大都会―闘いの日々―』年末年始 前半一挙放送を欠かさず観た。全話録画済なのに…。コンナ俺も、もはや33歳。ココロの風穴Windyな33歳。モチロン独身。
12月22日(土)#1「妹」(脚本:倉本聰、監督:小澤啓一)記念すべき第一話。黒岩君の恵まれた環境を簡潔に提示しつつ、おやっさん刑事・丸山米三=高品格が戦中派の心情を吐露。「あんたの兄貴は善良じゃない!それをかばうアンタも善良じゃない!」――しみるセリフだ。無言で不幸に立ち向かう黒岩君の雄姿がよいです。ゲスト、水沢アキもおぼこいぞ。
#2「直子」(脚本:倉本聰、監督:小澤啓一)幸薄という言葉を身にまとう本作のヒロイン、篠ヒロコ初登場。登場して3分も経たないうちに、いきなり恋人にだまされ、ヤクザに輪姦され、ブルーフィルムに撮られるという、倉本節爆発な展開に、幼少期のオレはチャンネルを他局に回し、以降の展開を記憶から抹消したのだが、観直してみれば、いやいやどうして、やはりとことん鬱になる。ちょうどこの日、職場の同僚達が誕生会を催してくれたのだが、そんな楽しい記憶も吹き飛んだ。
12月23日(日)#3「身がわり」(脚本:斎藤憐、監督:降旗康男)名手・斎藤憐登板。組長の身代わりとして何の見返りも得られなかった三下ヤクザをお宅訪問の渡辺篤史が好演。悩める刑事・黒岩の“刑事とは何ぞや”の問いに“ゴミ箱の蓋”と即答する我らが高品格の雄姿が胸を撃つ。
#4「協力者」(脚本:倉本聰、監督:村川透)ゲスト松田優作好演。さんざっぱら復讐劇を盛り上げた末に優作も黒岩君も徒労に終わる空しいエンディングにニューシネマ魂が爆発。名手・村川透の演出が冴えまくる。
12月29日(土)# 5「めぐり逢い」(脚本:斎藤憐、監督:降旗康男)詳細は以下を参照。感激のあまり、放送終了後、蟹江敬三祭りを実施。
#6「ちんぴら」(脚本:永原秀一、監督:村川透)柴田恭兵、中西良太、山田辰夫らの偉大な先達として、すなわち、"ちんぴら"を演じれば天下一品の役者として、オレの胸に深く胸に刻まれている、GS・ヴィレッジ・シンガーズ(「亜麻色の髪の乙女」!)のドラマーであり、奈美悦子の元ダンナであり、50'sバー「ケントス」の社長であり、日活ロマンポルノの"ポルノ"から絶望的に逸脱した問題作にして大傑作『暴行切り裂きジャック』の主演・林ゆたかの魅力あふれる好編。
12月30日(日)
#7「おんなの殺意」(脚本:大津皓一 塩田千種、監督:小澤啓一)身勝手な男=岡崎二郎の理屈と甘え、それに抑圧されたおんな=赤座美代子が爆発させる殺意。黒岩君の無力ぶりにも唖然呆然。ある種の日活ロマンポルノが肌触りもそのまま、茶の間に殴りこんできたかのような趣。
#8「俺の愛したちあきなおみ」(脚本:倉本聰、監督:村川透)詳細は以下を参照。散々に切なくさせた上で、さらなる不幸を予感させつつシャットダウンと、『大都会』の醍醐味を存分に味わえる逸品。
1月05日(土)# 9「解散」 (脚本:永原秀一、監督:小澤啓一)ナチュラル・ボーン・ハードボイルド青木義郎の魅力炸裂。ワケありなオトナのムードが全編を覆う。
#10「憎しみの夜に」(脚本:野上龍雄、監督:村川透)日活ロマンポルノの茶の間殴りこみシリーズ第二弾。なんと、ゲスト・芹明香!内容としては、正直アベレージ以下で、情念派野上の脚本と村川演出が噛み合っていないが、逆にそのせいか、企画書の文言そのままといった趣の長セリフにこの番組の理念のようなものが伺え、興味深い。
1月06日(日)#11「大安」 (脚本:倉本聰、監督:降旗康男)詳細は以下を参照。親分の気持ちを汲み怒りに震えるフトコロ刀・清水健太郎が好演。既にある種の不安定さをみにまとっている辺り、この人も業が深い。
#12「女ごころ」(脚本:大津皓一、監督:降旗康男)中尾ミエ、モロボシ・ダンと濃い味付けのアベックが演じる、社会の、組織の末端も末端、最末端の男女のトラジコメディ。とは言え、ほのかな希望の感じられるラストを良しとするか否かで評価も変わろう。
1月12日(土)#13「再会」 (脚本:永原秀一、監督:澤田幸弘)関西ロケ敢行。サッポロ一番・藤岡琢也が黒岩君の先輩刑事を好演。所轄の縄張り争いで崩れかける男の友情をふとつなぎとめる手際の良さで、永原秀一脚本の妙に酔う。
#14「もう一人の女(ひと)」(脚本:大津皓一 永原秀一、監督:澤田幸弘)関西ロケ第二弾。欽ちゃんファミリー、真屋順子の醸し出す生々しい女性像に、何か見てはいけないものを観た気になる同世代人多しと観た。
1月13日(日)#15「前科者」 (脚本:倉本聰、監督:村川 透)黒岩君が更正させた前科者・室田日出男にふたたび嫌疑が…まさかそうはならねえだろうと思う方向にガンガン話は転がり、室田夫人・春川ますみはじめ、登場人物全員の希望が打ち砕かれる。観念した室田の背景に赤ん坊の産声がかぶる悲痛な演出は脚本にはなく、村川独自のもの。
#16「私生活」(脚本:斎藤憐、監督:村川 透)詳細は以下を参照。「ジャニスを聴きながら」「君にささげるほろにがいブルース」と、荒木一郎の楽曲を全編にフィーチャー。――と、実に精神力を消耗する耐久マラソン。視聴するほうも命がけである。一方で週一回のレギュラー放送(毎週金曜9時。他にリピートあり)は、高橋悦史がヤクザ志願のボンクラ中年を好演する。
#17「約束」(脚本:斎藤憐、監督:小澤啓一)#18「少年」(脚本:倉本聰、監督:村川 透)詳細は以下を参照、シリーズの中でも一、二を争うバッド・エンドぶりで悪名高い#19「受難」(脚本:永原秀一 峯尾基三、監督:小澤啓一)と絶好調の中、#20「週末」(脚本:倉本聰、監督:村川 透)へと至った。――所は熱海。伴淳三郎の客引きが案内するイカガワシイ遊び場。そこに現れたブルーフィルム屋・橋爪功が“いいモンあるんですよぉ”と観光客に上映したのは、すでに4ヶ月のときを経て視聴者も存在を忘れかけていた篠ヒロコの暴行現場――!…今になってコレかよ!という視聴者の思いもよそに、倉本節は炸裂。黒岩君の懸命の努力も空しくフィルムの行方は不明なまま。終盤の更なる不幸の予感が視聴者のココロによぎったところでテーマ曲が盛り上がって警視庁~新宿の空撮となりエンド・ロール。
――残り1クール。更なる不幸に向け、獣道を突っ走る『大都会―闘いの日々―』!
見逃すな!!
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