インタビュー
園子温監督

園子温(映画監督)

映画『ちゃんと伝える』について

公式 youtubeリンク

8月22日(土)より、シネカノン有楽町1丁目ほか全国ロードショー

「ちゃんと伝える」は園子温監督が余命をテーマに描いた秀作である。余命を扱った日本映画は多いが、園監督らしいテイストもありながら、今までの作品である意味で一番開かれた作品ともいえる出来なので是非多くの人に観てほしい。(取材:わたなべりんたろう
園子温(映画監督)
愛知県豊川市出身。1987年に「男の花道」で、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)のグランプリを受賞。代表作には、海外での評価が高い「自殺サークル」(01)などがある。最近は、テレビ朝日系列の金曜ナイトドラマの「時効警察」(06)の第4話及び第6話に脚本と演出で参加する。「奇妙なサーカス」(05)はカナダのファンタアジア映画祭で作品賞受賞、「紀子の食卓」はカルロヴィヴァリ国際フィルムフェスティバル特別賞賛賞及びFICC受賞、プチョン国際ファンタスティック映画祭観客賞&主演女優賞受賞などと国際的な評価も獲得。その後、「HAZARD ハザード」(02年製作だが06年公開)、「気球クラブ、その後」(06)、「エクステ」(07)など意欲的に作品を発表。「愛のむきだし」でカリガリ賞、国際批評家連盟賞をダブル受賞した。現在、初のハリウッド作品を準備中である。
園子温監督2
――前回インタビューしたときに、「今日、このインタビューの後に新作「ちゃんと伝える」の衣装合わせがあって撮影もすぐ入る」と言っていましたが、脚本はいつ頃書き上げたのでしょうか?

3稿ぐらい書いて撮影の2ヶ月前に脚本は出来ていましたね。2稿目に「ちゃんと伝える」のタイトルも思い浮かんだ。このタイトルが決まってからテーマが 見えてきた部分もあった。『釣りがモチーフ』というのは決めてあった。釣りは好きじゃないんだけど、だからこそ釣りに興味を持っていたので。

――タイトルがいいですね。

父と子の関係はもちろん、主人公と結婚相手の恋人との関係にも“伝える”という問題が含まれている。つまりこれは余命ものでありながら死を描いた作品ではなく、親と子、または男と女がちゃんと気持ちを通じ合わせているか、というのがテーマ。『メメント・モリ』って言葉があるでしょう。『死を意識して生きろ』という意味だけど、人間なんていつでも死に向かっているという意味では余命を生きているんです。限られた時間をどう生きるかということは、いつも考えていますね。

――小道具としてのセミの使い方が「おくりびと」の小石の使い方を想起させたのですが、同じ「父親の死」を扱った作品として意識はしていたのでしょうか?

おくりびと』は観ていないので違いますね。

『ちゃんと伝える』
――キャスティングはどのようにして決めたのでしょうか?

AKIRAくんは主演に決まっていました。素直に役に取り組んでくれたし、ガッツがあってよかったです。奥田さんは「愛のむきだし」がフィルメックスで上映されたときに安藤サクラさんが出演していた縁で、上映後に飲む機会があったんです。そこで一緒に何かやろうという話しにもなり実現しましたね。実現が早かったですが(笑)。

――日本映画では病気や死を扱った、いわゆる感動作が多く作られていますが、これらの作品に対する挑戦はあったのでしょうか?

確かに僕は意図的にアンチ日本映画的な作品ばかり作ってきましたし、登場人物を死なせて観客を泣かせようとする日本映画を“余命もの”とジャンル付けして茶化してきました。しかし前作「愛のむきだし」を完成させてヘトヘトになっていたせいもあって、今回は少しライトな感じでいきたかった。だからあえて、これまであまりやらなかったワンシーン・ワンカットや引きの絵、きれいな風景ショットなどを含む伝統的な日本映画のタッチでいこうと撮った。ただし主人公が死にゆく親父に抱きついて泣き叫ぶとか、お決まりのシーンはやりたくなかったんです。主人公がガンの痛みに苦しむようなシーンも幾つか撮りましたけど、最終的には全部カットしたんです。

――奥田さん演じる父親のサッカーでの十か条が園さんらしい言葉ばかりだと思いました。

あれは鬼コーチと言われるサッカーの鬼コーチの人を取材したんです。そのときにいろいろサッカーの練習のことを知ったし、映画にも取り入れました。その鬼コーチの方は、現場にも来てくれました。あの十か条は現場で急に思いついて作ったんです。そんなに「らしかった」?。

――らしかったです(笑)。初期の作品の「俺が園子温だ」や「自転車吐息」のテイストを感じました。

やはり消せない独特のものがあるんだな。それがあったほうがいいと思うけど(笑)。

――お棺にサッカーボールを入れようとして断られるシーンのユーモアも園さんならではと思いました。
園子温監督3

あれも取材して分かったことなんだけど、面白いなと思ったから入れたんだ。

――次回作の「Lords Of Chaos」はハリウッドデビュー作になりますが、どのような作品になるでしょうか?

まだ撮影前だし、あまり話せないんだけど、「愛のむきだし」の何倍も凄いものになると思う。今までハリウッドからは「ヘルレイザー」の続編などのオファーがあったけど断ってきた。でも、この作品を選んだのには撮る理由を感じたからなので、楽しみに待っていてほしいです。

取材:わたなべりんたろう

ちゃんと伝える 2009年 日本
脚本・監督:園子温 撮影:上野彰吾(J.S.C.) 照明:鳥越正夫 美術:大庭勇人
音楽:原田智英 録音:西條博介 編集:伊藤潤一
出演:AKIRA,奥田瑛二,伊藤歩,高橋惠子,高岡蒼甫,吹越満,綾田俊樹,諏訪太郎,佐藤二朗,でんでん
(c)2009「ちゃんと伝える」製作委員会
公式 youtubeリンク

8月22日(土)より、シネカノン有楽町1丁目ほか全国ロードショー

 イントゥ・ザ・ブルー(Blu-ray Disc) 愛のむきだし
  • 監督:園子温
  • 出演:西島隆弘, 満島ひかり, 安藤サクラ, 渡辺真起子, 渡部篤郎
  • アミューズソフトエンタテインメント
  • 発売日: 2009-07-24
  • おすすめ度:おすすめ度4.5
  • Amazon で詳細を見る
2009/09/01/09:59 | トラックバック (1)
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ちゃんと伝える E ★試写会中毒★

満 足 度:★★★★★☆☆☆☆☆    (★×10=満点)     試写 にて鑑賞     2009年8月22日公開  監  督:園...

Tracked on 2009/10/12(月)09:48:51

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Tracked on 2009/10/12(月)09:48:51

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