岩井俊二監督/『リップヴァンウィンクルの花嫁』

岩井 俊二 (監督)
映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』について【3/8】

2016年3月26日(土)より全国公開中

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:わたなべりんたろう)

『リップヴァンウィンクルの花嫁』場面1――岩井さんはやはり自らの感覚、直感に忠実ですよね。初めて1人で観に行った映画である『犬神家の一族』を観に行ったときにお金の節約もあるけど、直感的に気に入ったのもあって2回連続で観たこととか。

岩井 映画というものに取り組み続けて何十年と経つわけだけど映画の佇まい、すなわち映画はどうあるべきかをいつも気にしていて。ある種の映画道なんだけど、映画道とは何によるのか?という。作り手の独自のこだわりだけでいいのかとか、観客に振り回されていいのかとか、いろいろなことがある。その中でどこかに自分の濃度と観客の濃度の中間に結ばれる約束事があるとすると、約束事と違う完成形があって、それが映画の佇まいとして残るだろうという。作り手側でもなければ観客側でもないという考えというかイメージが自分の中でしっくり来ているんだなと。

――そのことが今作『リップヴァンウインクルの花嫁』は一番出来たと思った作品であると。

岩井 いや、それは常々思っていることで。そう思っている中で『リップヴァンウインクルの花嫁』はいろいろな格闘をした作品です。正直、自分の中であまりよく分からなかった作品だったかもしれない。

――それはまだ整理しきれていなくて3か月、半年、1年経ってくると分かってくるかもしれないと。

岩井 分かりやすい話だけど分かりにくい話でもあるし。自分にとっては『Love Letter』が同じ感じで、自分の中ではあまりしっくりはきていないという。ただ、そういう作品のほうが多くの人に受け止められたりする。自分の作品に対する自分の解釈が間違っているかもしれないと思うことがあるけど。

――インタビューの前にロックウェルアイズの方とも話していたのですが、アジアで今作の宣伝と上映をやってきて好評で、日本でも試写上映が同じく好評でした。「泣いた」「岩井作品らしく映像が綺麗だった」との感想もあるけど、実はそうではない『リリイ・シュシュのすべて』ともまた違うダークな面もあるじゃないですか。でも、そこだけでなく感動できる二重性というか。それは岩井さんが言った『Love Letter』もそうだろうし。そこが岩井映画の面白さの大きな1つだなとずっと感じていて。

Love Letter [Blu-ray]岩井 全てのエレメントがこの映画を成立させるために機能しているのかどうかというのが気になりすぎているのかもしれない。それは作ったばかりの作品でもあるので。電気屋さんが死んでいる回線は無いか配線をチェックしているようなものなんだけど(笑)。だからしっくり来ていないところも無きにしもあらずなんだろうけど。さっきも言ったけど半年、1年経って何が残っているんだろうと。おそらく多くのお客さんがさらっていくのもそこだろうし。ディープに入っていって今作の世界観に迷い込んで来るお客さんもいるんだけど、大概は1回観て「こういう映画なんだな」と認識して終わるのが映画というメディアだから。そこで言うと『Love Letter』とか『 リップヴァンウインクルの花嫁』は自分の中ではもう少しすっきりできなかったのかなと思う部分もあるけど、そこはあまり重要でないのかもしれない。

――3時間の上映時間でゴツゴツした箇所が幾つもあるのが今作の良さであり、そのすっきりしてなさを岩井さんがやりたかったことだと思っていました。

岩井 小説のほうが何やっても許される感じがあって。それは語り手がいて語り手自身が話しているから、時々脱線しようが文脈がつながっていればある程度の振り幅をもっていろいろなことをやっても許されるという。例えていえば映画って自分の中でインテリアだとも思う。バランスがとても重要だという意味なんですけど、気になるところとか小説の比じゃないぐらいすぐ出てくる。「このシーンいらなかったな」とか「このシーンではなくて、こうしたらどうなったんだろう」とかすごく考えてしまうんです。小説界全体のことではなく、自分が書いている小説のことだと、そんなことはあまり考えない。ただ、そういう境地に自分が達していないのか、あまり堅苦しくそこまで気にしない。むしろ、そこは楽しんでしまうところがある。だって今そう思ってしまうんだからしょうがないよという。映画だと3つのA,B,Cのカットで出来たシーンがあったとして3つでもいいんだけど、2つで出来なかったのかなとか。それは3つがなぜダメだったのかというより、映画と言う部屋の中に配置されているインテリアとしてちょっとここは多いなと。物語として成立しているけどまだ多いと思う気がするとどうかなと考える。『ヴァンパイア』とかはそういうストレスが無くて、自分の中ではとても納得ずくで出来たという。

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リップヴァンウィンクルの花嫁
監督・脚本:岩井俊二
エグゼクティブプロデューサー:杉田成道 プロデューサー:宮川朋之,水野昌,紀伊宗之
原作:岩井俊二『リップヴァンウィンクルの花嫁』(文藝春秋刊)
撮影:神戸千木 美術:部谷京子 スタイリスト:申谷弘美 メイク:外丸愛 音楽監督:桑原まこ
出演:黒木華,綾野剛,Cocco,原日出子,地曵豪,和田聰宏,金田明夫,毬谷友子,佐生有語,夏目ナナ,りりィ
制作プロダクション:ロックウェルアイズ 配給:東映 © RVWフィルムパートナーズ
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2016年3月26日(土)より全国公開中

2016/03/31/19:13 | トラックバック (0)
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