――大西さんも別に今までそういう役をやっていたというわけでもないんですよね。でも去年の『日本で一番悪い奴ら』（16）でこういう狂犬みたいな男を演じていて、ワンシーンぐらいの出番なんですけどそれが強烈で。

奥田　ああ、それは観ていないんですよね。私は大西さんとは今回の現場で「はじめまして」だったんですけど、プロデューサーの村岡さんは荒戸映画事務所にいた方で、大西さんともずっと一緒に仕事をしていて、大西さんがいかに映画を大事にしていてまわりを引っ張っていってくれるかというのも知っていて、村岡さんが推薦してくれました。

――そうなんですか。このメインお二人の演出はどのように？

奥田　大西さんと渋川さんを大事にしたいな、魅力的に大きく描いてあげたいな……なんて偉そうで恐縮なんですけど、なんか立体的に映画に刻み込みたいという気持ちがずっとありましたね。二人で並んだときの画がとてもいいんですよ。同じ事務所で、もともと仲もすごくよくて。そういう空気を大事にして、映画の中では仲がいいんだか悪いんだか、ひろしのほうからの共感止まりみたいな、微妙な距離感。そういうものが出たらいいなと思いました。

――一真は途中までまったく言葉を発しませんね。

奥田　ああ、それは大西さんのアイディアです。現場でいろいろ言ってくれるから役が膨らんで、それも面白かったです。

――本当に映画愛のあるいい俳優さんですね。渋川さんもそうだと思うんですけど。

奥田　彼らはハードコアですよね。変わった人ですね、お二人とも（苦笑）。現場中に1回大西さんから夜中に「今からそっちに飲みに行くから！　店決めといて！」って電話がかかってきたことがあって。俺が住んでいるのは住宅街で、飲み屋なんてそんなにないところなんですけど、24時間やってる磯丸水産があるからそこに連れていって。でもすでにグデングデンで「酔っぱらった」しか言わない（苦笑）。すぐに寝てしまってタクシーに乗せて帰しました。それを「憶えていない」って言っていて。

――（笑）。大西さんには何度か取材をしていて、そういう豪快なお話もよく聞いているんですけど。昭和の監督たちのもとで揉まれてきましたからね。荒戸源次郎監督だとか若松孝二監督だとか。

遠藤祐美 上原実矩 奥田　そう、昭和の怪物たちと映画を撮ってきたから、そこらへんはやっぱりすごいですよ。今の若い俳優って昭和の怪物たちを知らないですよね。それってもったいないなと思うんですよ。俺が平成の怪物になってやろうって思います。

――（笑）。そうですよ、期待しています。キャスティングでは遠藤祐美さんと上原実矩さんも凄みのある表情が印象的でした。女優さんお二人はオーディションで選んだそうですが、逸材でしたね。

奥田　仕事柄、役者さんにはよく会いますけど、大体は「台詞言ってるな」ぐらいの芝居で。でもいい役者さんって、圧力というか殺気というか、よく分からないんですけど、その場を支配してしまうようなところがあるんですよね。二人からそれを感じました。