インタビュー
奥田庸介監督/『ろくでなし』

奥田 庸介 (監督)
映画『ろくでなし』について【1/5】

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渋谷ユーロスペース、新宿K's cinemaにて上映中!/名古屋・シネマスコーレ、大阪・第七藝術劇場、京都・京都みなみ会館、神戸・元町映画館、群馬・シネマテークたかさき、大分・シネマ5、横浜・シネマ・ジャック&ベティ ほか全国順次公開!

『東京プレイボーイクラブ』『クズとブスとゲス』で愛すべきダメ人間たちの群像劇を描いてきた奥田庸介監督の新作『ろくでなし』が、4月15日より公開されている。“命の具現化”のために映画を撮ると衒いなく語る芸術家肌の監督だが、往年のヤクザ映画のような手加減なしの暴力活劇は作り手たちの心も動かし、そのフィルモグラフィーは商業と自主を行き来するものになっている。本作は、やはり奥田監督の強烈な個性に目を留めた山本政志氏らとのタッグによって生まれた作品。シナリオ作りにおいて相当激しいやり取りがあったそうだが、思うがままの映画作りとならなかった苛立ちが作品に染み込み、大西信満、渋川清彦らまたとない顔ぶれ演じる“ろくでなし”たちが渋谷の街で繰り広げる欲望のドラマは、ひときわ人間臭く、胸に迫るものになった。奇才という呼び名が似合う奥田監督は、これからも苦悩しながら驚きの作品を生み出してくれるだろう。そんな奥田庸介監督に、本作についての率直な気持ちを語っていただいた。 (取材:深谷直子)
奥田 庸介 2008年、早稲田大学川口芸術学校卒業。卒業制作作品『青春墓場』が08年と09年にゆうばり国際ファンタスティック映画祭入選。10年に『青春墓場~明日と一緒に歩くのだ~』が同映画祭3度目のノミネートでグランプリを獲得。その他にもぴあフィルムフェスティバル入選、ロッテルダム国際映画祭やプチョン国際映画祭で上映される。11年には『東京プレイボーイクラブ』で商業映画監督デビュー。同作品は全国公開が決まり、釜山国際映画祭や東京フィルメックスで上映、ロッテルダム国際映画祭ではコンペティション部門であるタイガー・アワードに出品されるなど、24歳にして華々しいデビューを飾る。数年後、クラウドファンディングで資金を集め『クズとブスとゲス』を監督。同作では自ら主演も担い、強烈なインパクトのある演技力で大いに注目を集め、15年東京フィルメックスにて、異例の「監督・奥田庸介」本人にスペシャル・メンションが授与された。
STORY 馬鹿で、無様で、愛おしい。大いなる勘違いからはじまる危ない純愛映画。
主人公の一真(大西信満)は、流れ着いた渋谷の街で優子(遠藤祐美)に出会い、一方的に運命を感じる。不器用だが、まっすぐな想いを貫く一真と、 裏社会を飄々と生きるひろし(渋川清彦)、クラブオーナーであり裏の顔を持つ不気味な存在の遠山(大和田獏)。渋谷の街を舞台にそれぞれの思惑が交錯し、追いつめられた“ろくでなし”たちが暴走していく――。
奥田庸介監督1 『ろくでなし』
――『ろくでなし』も前2作と同じく裏社会に生きる人たちの群像劇ですが、今回はちょっとクールで、血気盛んというよりは無常観漂うところが強い印象を受けました。ストーリーを作る上でポイントにしたのはどんなことですか?

奥田 まず今回のきっかけは、シネマ☆インパクトというワークショップで山本政志さんに声をかけていただいて映画を1本撮ることになったという、まあ棚ボタだったんですよね。だから当時シナリオがなくて、で、書こうと思って書くんですけど、私はわりと降ってくるのを持つタイプなんです。あるひとつのモチーフが降ってきてそれを膨らませていく、その「降ってくる」というのを非常に大事にしているんですけど、初めてケツがあるシナリオで、降ってくるのを待たずして書いた。さらに、事前に山本さんから「シナリオについて言うことは言うからな」と言われていたので相当やり取りをして、私が書いた第1稿からは結構変わっているんです。背骨の部分、根幹から変わっていることがあるので、シナリオに関しては、一概に「今回どうだった」と語るのはなかなか難しいですね。

――一昨年の東京フィルメックスで『クズとブスとゲス』(15)を上映したときに監督にインタビューして次回作のことを訊いたら、やはり「降ってきたものを撮ります」とおっしゃっていましたよね。でもそういう作り方にはならなかったと。

奥田 私は自称“インチキアーティスト”で、自分を芸術家だと思っているんです。映画って芸術になり得ないメディアだとよく言われるんですけど、私はそこにも「ふざけんなよ、芸術だよ」と反抗したいんです。ただ、前回の『クズとブスとゲス』であまりにも芸術を突き詰めるあまり、唯我独尊だとも言われました。私はそれでもいいと思っているんですけど、ただ10年以上面倒を見てもらっている映画監督の先生に、今回まったくゼロの状態から1本撮るということで相談したところ、「お前は技術で映画を撮るなんてクソだと思っているから嫌かもしれないけど、今まで蓄積してきた経験の引き出しを開けるときが来たんじゃないか?」ということを言われたんですよね。で、今回は自主映画じゃないし、私のお金ではないし、プロデューサーの村岡伸一郎さんに「今回はオープンマインドでいこう」と言われて。だから今回は「映画」ということを意識して撮ったんですよね。自分の意見を最初から決めて現場に入るのではなく、現場で作っていこうというスタンスでやりました。

――シナリオも山本さんと意見を交わしながら書いて。

奥田 でもやりたくないものは絶対やりたくなかったです。そこでモメてしまったんですよね。

――その「やりたくないこと」を、最終的には受け入れたんですか?

奥田 半々……、7割ぐらいはやりましたね。私の書いた第1稿からかろうじて残っている部分は、二つの恋愛を同時進行で見せていきたいということです。群像をやりたかったんです。まあ群像しか撮らないですけど。でも今回はオープンマインドということで現場の空気や意見を取り入れて、男性キャラクター二人に寄せていったかなと思います。

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ろくでなし (106分/アメリカンヴィスタ/カラー)
監督:奥田庸介
プロデューサー:村岡伸一郎 アソシエイトプロデューサー:山本政志 撮影:高木風太 照明:秋山恵二郎
録音:根本飛鳥 美術:黒川通利 音楽:しゅんすけフリーローダー スチール:江森康之​ 編集:小野寺拓也
出演:大西信満,渋川清彦,遠藤祐美,上原実矩,毎熊克哉,大和田獏
配給宣伝:C・C・P  ©Continental Circus Pictures
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2017/04/18/17:01 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー

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