インタビュー
大石規湖監督/『MOTHER FUCKER』

大石 規湖 (監督)
映画『MOTHER FUCKER』について【1/7】

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2017年8月26日(土)~9月8日(金)
渋谷HUMAXシネマ 他 全国順次公開

1992年の設立以来、実に四半世紀にわたって日本の音楽シーンを地下道でつなぎ続けてきたレーベル、Less Than TV。基本パンク、ハードコアだがその振れ幅は広く、雑多な音楽同士が家族のように共鳴し合うのを私自身も楽しんできたが、恐らくはコアなファンにも正体不明だったその全貌が、大石規湖監督による本作『MOTHER FUCKER』でついに明かされた。想像をはるかに超える自由さ、激しさ、楽しさ、カッコよさに満ちた世界がそこには広がり、何よりも”普通”で”家族”であることに驚きもすれば納得もした。今はフォークシンガーFUCKERとして活動するレーベルの主宰者・谷ぐち順、その妻でありLimited Express (has gone?)の激情のヴォーカリストYUKARI、両親に振り回されつつ自身のバンド、チーターズマニアでデビューの日に備える共鳴(ともなり)くん一家と、全国各地のバンドマン、お客さん、障がい者といった人たちが、みんなひとつながりの世界の中で、それぞれ人として尊重し合って生きている。映画を観終えたあとは知らない人とも笑顔を交わしたくなっていることだろう。女性映像作家としての悩みに日々ぶつかりながら谷ぐち一家に魅せられ、生活全部を追いかけ、彼らが奏でる強弱付けないフルテンションの轟音を、ぬくもりある音の粒として見せてくれた大石監督にお話をうかがった。 (取材:深谷直子)
大石 規湖 フリーランスとして、SPACE SHOWER TV や VICE japan、MTV などの音楽番組に携わる。また、トクマルシューゴ、 DEERHOOF、BiS階段、奇妙礼太郎など国内外問わず数多くのアーティストのライブ DVD やミュージックビデオを制作し、女性でありながら男勝りのカメラワークで音楽に関わる作品を作り続けている。映画『kocorono』(2010年・川口潤監督)では監督補助を担当。また谷ぐち順の初MVの監督も務めている。 youtubeリンク
作品概要
Less Than TVって何なんだよっ!?<最低>だから<最高>すぎる! 面白い事だけを追求して25年。
あなたはご存じだろうか?知ってる人は知っている。知らない人はもちろん知らない。名前は知っているけど何をやっているのか良く分からない、そして、虜になった人もその魅力を説明できない……。 25年の間、ある意味で正体不明、謎の音楽レーベルであり続ける集団がいる。1992年、とにかく面白い事を探していた北海道出身で GOD'S GUTS の “谷ぐち順”を代表に U.G MAN の UG KAWANAMI、 DMBQ の増子真二を中心とした仲間たちがノリと勢いと情熱でアメリカの BLACK FLAG のレーベルSST や Shimmy Disc などに憧れ立ち上げた世界的にみても奇妙奇天烈な音楽レーベル、 それが“Less Than TV”だ。パンク、ハードコアを基本としつつも彼らの感性の下、あらゆるタイプのアーティストが紹介されてきた。 bloodthirsty butchers、ギターウルフ、 DMBQ、 BEYONDS、ロマンポルシェ。…等。“Less Than TV”が音源をリリースしてきた一癖も二癖もあるバンドたちは異彩を放ち、その後メジャーデビューしたものも少なくない。しかしレーベル自体は今もなおアンダーグラウンドを暴走し続けている。
大石規湖監督1 『MOTHER FUCKER』
――まず、この映画を撮ることになったきっかけを教えてください。

大石 Less Than TVは、大学に入ったころにfOULとbloodthirsty butchersのスプリット・アルバムとの出会いがあってそのころから知っていて、ライブを見に行ったりしていたんです。その後、音楽の映像の仕事をするようになり、あるときLimited Express (has gone?)のライブを撮る機会があって、たまたまリハから行ったら、そこで見た光景が衝撃的で。YUKARIさんがおんぶひもで共鳴くんをしょって、ベースをかついでステージ上で演奏してて、「え~っ!」と思って(笑)。そしてそのときはリミエキのメンバーではなかった旦那さんの谷ぐち(順)さんが、ベースアンプのところで「もうちょっとベースの音硬くした方がいいよー」とか言いながら調節していて。それを見て私は「なんだろうこれは?」って。そこでフッと思ったんですよ、「この人たち撮ってみたいなあ」って。

――この家族の姿に惹かれたのが映画づくりの発端だったと。

大石 はい。なんでそこに惹き込まれたかを考えると、私はそのとき25、6歳ぐらいで、自分のやりたい映像と生活とのバランスが全然うまくできていなかった時期だったんですよね。夜遅くまで編集をしていたので、朝起きてご飯を作って洗濯をして……ということがちゃんとできていなくて、それでやりたいことと生活のバランスが取れている人への興味がすごくあったんです。音楽を聴くときも、働きながら音楽をやっているヒップホップの人たちだとか、シェラックのスティーヴ・アルビニも自分のスタジオまで持って音楽をやりつつ、仕事を別に持って両立させている、そういうのがカッコイイなってすごく惹かれてて。そんな中で目にしたYUKARIさん、谷ぐちさんの、音楽と家族が同居している空間がものすごく不思議で、「なんでこんなものが一緒の場所にあるんだろう?」とすごく惹かれて「撮りたいな」と思ったんです。

――映画を撮るのも初めての経験ですよね。

大石 はい。私が映像の仕事を始めたのは、映画が撮りたいからとかいうのは一切なくて、自分の好きな音楽を友達に「こんなすごい音楽があるよ」と伝える延長で、人に音楽を伝えるお手伝いになれたらなあというぐらいの感じだったんです。あともうひとつは、すごく音楽に救われて生活をしているというのが自分の中ではあったので、おこがましいですけど、音楽に恩返ししたいという気持ちで始めました。そんな中で『kocorono』(10)という川口潤さんの映画のお手伝いをして。川口さんはその前に『77BOADRUM』(08)も作っていて、音楽の映像の仕事をしている人が映画を作るというのも私は見たことがなかったんですけど、川口さんはすごくフラットにMVとか番組とかを作りながら、その延長線上で映画をやっているという感じだったので、「ああ、映画という手段で音楽を伝えるという方法もあるんだ」というところに意識が向いて、そういうのが組み合わさって「この人たちを映画にしたいな」というところにつながったんですね。

――なるほど。いい師匠に恵まれましたね。

大石 でも、それを5、6年前に考えてから実際に動くまでには結構ブランクがありました。いきなり「撮りたいです」と言えるような間柄ではなかったんです。それまで何も作っていないというのもありましたし、これは外堀から埋めていこうと、Less Than TVまわりの人に「谷ぐちさんのこと撮ってみたいんですよね」とか相談したら、「そういうことを言うときっと避けるから言わない方がいい」と言われたりして。どうしたらいいんだろう?と悩みながら、メテオナイト(Less Than TVが主催するイベント)に行ってコソコソとライブ映像を撮ったりしていました(苦笑)。そうしたら2015年の年末にいきなり谷ぐちさんから電話がかかってきて、「俺たちの映画を撮りたいって言っていると聞いたんだけど、やりませんか?」と言われて。多分そのとき谷ぐちさんがやりたいことが映画にはまって、で、私がそういうことを言っているという噂がどこかから回ってきていたんでしょうね。長い間撮りたいなと思っていてもなかなか実現しなかったのに、「撮ろう」となったら1ヶ月後にはもう撮り始めていたと、そんな流れでした。

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MOTHER FUCKER ( 1:1.78|カラー|ステレオ|98 分|2017 年|日本 )
出演:谷ぐち順、 YUKARI、谷口共鳴(ともなり) 他バンド大量
監督・撮影・編集:大石規湖
企画:大石規湖、谷ぐち順、飯田仁一郎 制作:大石規湖+Less Than TV
製作:キングレコード+日本出版販売 プロデューサー:長谷川英行、近藤順也
配給:日本出版販売 © 2017 MFP All Rights Reserved.
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2017年8月26日(土)~9月8日(金)、渋谷HUMAXシネマ
9月9日(土)~15日(金) シネマート心斎橋、9月16日(土)~22日(金) シネマート新宿、
9月23日(土)~29日(金) 名古屋シネマテーク、9月30日(土)~10月6日(金) 広島・横川シネマ、
10月14日(土)~20日(金) 横浜シネマ・ジャック&ベティ、
10月21日(土)~27日(金) 仙台・桜井薬局セントラルホール、
10月28日(土)~11月3日(金) 京都みなみ会館 以降 神戸・元町映画館 他 全国順次公開

2017/08/28/18:51 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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