大石 規湖 (監督)
映画『MOTHER FUCKER』について【2/7】
2017年8月26日(土)~9月8日(金) 渋谷HUMAXシネマ
他 全国順次公開
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――機が熟すのを待って近くで地道に努力をしていた大石監督の熱意が谷ぐちさんに伝わったんでしょうね。
大石 でも、どうして私に声をかけてくれたのかは正直わからないんですよ。谷ぐちさんもたくさん映像作家さんを知っていますから。ありがたいお話ではあるんですけど。ありがたいお話だし、そこから巻き込まれていくお話になるんですけど……(苦笑)。
――巻き込まれていくんですね(笑)。谷ぐちさんのほうでも、映画のコンセプトとしてはバンドやレーベルなどの音楽活動だけではなく、生活全部を見せていくようなものを考えていたんでしょうか?
大石 ヒストリーもののような普通の映画がイヤだというのはあったようです。Less Than TV自体も、CD1枚出すにしても、”ゴミ仕様”といって、レジ袋にCDをに入れてリリースとか、ポスターを折りたたんでジャケットに入れるんですけど大きすぎて収まり切らないとか、普通の作品を出さないんです。映画としてもスタンダードなドキュメンタリーなら作りたくないというのがあって、家族のドタバタならいいと。その初めての電話で谷ぐちさんから「家族のドタバタを撮ってほしいんですよね」と言われ、「私も家族の映画を撮りたいんですよ!」と言って、想いが合致して「撮りましょう」ということになりました。その電話で話が決まると、あとはどんな映画にするかなどの話し合いもまったくしないまま、「家族のことは何でも撮っていいですよ」という状態で始まっていきました。
――まさに何でもありの開けっぴろげさで撮らせてくれていますよね(笑)。大石監督もお風呂にまで入り込んで……。
大石 そうそうそうそう……(苦笑)。最初のうちは、「撮っていいよ」と言われてはいても一応プライバシーもあるので様子を見ながらだったんです。でも2月の頭に共鳴くんの誕生日の旅行があって、家族水入らずのところを邪魔しに行くのは気が引けて、谷ぐちさんに「何か撮ってきてもらってもいいですか?」とカメラを預けたんですよ。そうしたら戻ってきた素材にそれこそお風呂の中でモッシュしている全員裸の映像が映っていて、「ああ、いいんだ!」って(笑)。他にもYUKARIさんと共鳴くんがお風呂の中で会話しているものもあって、扉で裸は見えないようになっているんですけど、「これって盗撮に近いんじゃないか?」と思って(苦笑)。
――「盗撮しているのかな?」と思うような映像が結構ありますよね。私が「あれっ?」と思ったのは、病気になった共鳴くんを家に残してライブに出かけていったYUKARIさんが、心配しながら帰宅するところが映っているということで。カメラが先に待ち構えていたということですよね。
大石 あれは、私がYUKARIさんと一緒に大阪でのライブに行く前に部屋にカメラを置いておいて、留守中に共鳴くんの面倒を見ていた友人に「YUKARIさんが帰ってくるタイミングでRECボタンを押してもらっていいですか?」と頼んでいたんです。それでああいう監視カメラっぽい映像に。
――やっぱりそういう撮り方なんですね。これがこういう画を撮るために監督が先回りして部屋に入っていたとなるとちょっとヤラセのようになってしまいますが、そういうものではないんですよね。
大石 ええ。サービス精神が旺盛な人たちだから、逆にヤラセっぽくならないようにという加減も最初は気を遣いましたね。この家族と一緒にいる間、ずっと面白かったんですけど、「カメラが回っているから面白いことを言っているんじゃないかな? これが自然な姿じゃなかったらどうしよう?」って当初は心配していて。カメラを回していることを意識されない状況で撮ることを研究して、撮っているか撮っていないかわからないような状態で撮影を進めたんですが、結局変わらなくて(笑)。いつも自然なままだったんです。
出演:谷ぐち順、 YUKARI、谷口共鳴(ともなり) 他バンド大量
監督・撮影・編集:大石規湖
企画:大石規湖、谷ぐち順、飯田仁一郎 制作:大石規湖+Less Than TV
製作:キングレコード+日本出版販売 プロデューサー:長谷川英行、近藤順也
配給:日本出版販売 © 2017 MFP All Rights Reserved.
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