大石 規湖 (監督)
映画『MOTHER FUCKER』について【3/7】
2017年8月26日(土)~9月8日(金) 渋谷HUMAXシネマ
他 全国順次公開
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――本当にいつも自然体だし、力を抜くことがない人たちだなあと。家で餃子を食べているときに夫婦ゲンカが始まっていくシーンもすごかったですね。
大石 あのときは二人とも私の存在を忘れていただろうなって(苦笑)。あれは明け方の3時とか4時で、最初は3人で話し合いをしていたんですよ。そうしたらYUKARIさんがヒートアップしてきて、谷さんもヒートアップしてきて、「私の存在がなくなってきたな……」と思って、ずっと静観しているという状態でした。撮影の中盤からは、たまに空気になったり、たまに家族みたいになったり、その塩梅が自分でも計算しているわけでもなく自然にできるようになっていました。撮影の最初のうちは、家に通ったり出かけるのに同行したりして撮っていたんですが、途中で「家に泊まりにおいでよ」と言われて、でもそれも気を遣うから遠慮していたんですが、3ヶ月ぐらい経ったころから泊りに行き始めたら、自然に家族の時間軸の中に溶け込むことができて、泊りに行かなかったらダメだったなと思いますね。
――谷ぐちさんたちもオープンマインドですが、大石監督も映画のためとはいえ、そこまで被写体の生活に入り込むというのは並大抵ではできないですよね。
大石 パンフレットのコメントで「生活が変わりました」って書いたんですけど、自分が撮ることイコール同じ生活軸を過ごすことになるから、自分の生活リズムも同じになってきて……。まあ、あんまりあの人たち寝ないんですけど(笑)、夜中の3時、4時まで話し合いとかして、朝の6時、7時には起きて、魚市場に観光に行くんですよ(笑)。それで朝早かったから家でお昼寝して、UNOやって、みたいな(苦笑)。その生活軸で私もなじんで生活するようになって、それが血となり肉となりではないですけど、この人たちの生活とか考え方とかものの見方とかがさらに溶け込みやすかったところがあって。私が体験したものがそのまま映画になったみたいな感じが、あとから見返すとありますね。
――バイタリティの塊みたいな家族なんですけど、女性としては特にYUKARIさんの生き方に心を動かされました。「子供のために音楽を犠牲には絶対にしたくない」、「音楽をやっていることで子育てにかけられる時間が他の子供よりも少ないのなら、残りの時間は2倍、3倍、子供のことを思っていたい」ということを言葉でもキッパリと言い、その表情がとても真剣で、実際にそのとおりのことをしていて。本当に力を抜くということがない。
大石 でもインフルエンザの共鳴くんを残して家を出るときの顔はとても優しくて、子供を心配しているただの母親の顔なんですよ。ライブのときの鬼気迫る顔とは真逆で、近場で見ていてどっちも全力でやっているのが伝わって、すごいなあと思いました。これを両立させるというのはパワーがないとできないと思うんですよ。家族に対しての時間を作って、仕事に対しての時間を作って、それがすべてで、自分のための息抜きをしていない感じが見えて。だから最初のうちはYUKARIさんに「この生活大変じゃないですか?」って質問をよくしていたんです。でも「え、大変じゃないよ。やりたいことがあるならそのために努力するのは当たり前でしょ」と言われて、「そうか~」と。それを間近でずっと見ていたので、人としてもそうですけど、女性として影響を受けすぎて。全力ですべてのものごとができるかと言ったら、できないこともあるかもしれないけど、こんなにいろんなことを楽しみながらやるという生活ができるんだというのを間近で見たら、考え方がまったく変わりました。撮影する前は、子供とか結婚とかまったく意識したことはなくて、まあ結婚はしたいなあと思うけど、子供はこの仕事だと経済的にも無理かなあ?と思っていたんですけど、途中からは、「いやあ結婚したいし子供ほしいわー!」という状態に(笑)。
――うん、確かに。どんな新しい世界が開けるのかな?って思いますよね。こういう生活ができるのも、「家族のために」という張り合いが出てきたからというのが大きいでしょうし。
大石 あとは、大変だったあとの喜びが、共鳴くんや谷ぐちさんと共有することで、ひとりでいるよりも何百倍も嬉しそうに見えて。大変かもしれないけどこんなに楽しそうだったら家族を作りたいって。
――やっぱり家族って特別なものなんですよね。音楽ドキュメンタリーを見ていると、バンドのつながりって家族みたいだな、と思うことが多いんですが、それともまた違って。
大石 ああ、でもバンドみたいだったんですよね(笑)。
――確かに(笑)。もう叱咤激励の嵐で。
大石 この家族がバンドメンバーみたいだし、一般的なバンドというのも家族のようだし。だから「家族でもありバンドでもあり」っていうのをいちばん体現している3人なのかなって。共鳴くんは生まれながらにそういう環境にあるからそんなに意識してはいないと思いますけど、見ていて「バンドみたいだなあ」と思いましたね。
出演:谷ぐち順、 YUKARI、谷口共鳴(ともなり) 他バンド大量
監督・撮影・編集:大石規湖
企画:大石規湖、谷ぐち順、飯田仁一郎 制作:大石規湖+Less Than TV
製作:キングレコード+日本出版販売 プロデューサー:長谷川英行、近藤順也
配給:日本出版販売 © 2017 MFP All Rights Reserved.
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