――（笑）。本当に分け隔てなく、いろんなことありの映画になりましたね。もちろんライブシーンも大きな見どころで。これはどこを見せるか選択が難しかったと思います。

大石　1年間ぐらい撮影していて、ライブとしては150本ぐらい撮っていたんですよ。その中からどう選択しようかな？と思って。Less Than TVって東京にいながらいろんな地方のバンドのリリースもしているし、リリースだけではなくいろんな形でつながっているから、日本の地下を全部つなげているみたいなのを見せたいと思い、地方のライブに絞りました。それでも全部は難しかったので、私が印象に残ったものをセレクトしましたね。バンドも「これを入れてください」みたいなのはなかったのでそこはありがたく思いつつも、カッコイイライブばかりだったので最後まで悩みながら。

――すごくバラエティに富んでいて、ハードコアの激しいライブももちろんあれば、すごく聴かせるものもあって。一口には言えないLess Than TVの魅力が表れていたと思います。いろんなバンドを発見できました。

大石　ジャンルも全然関係ないし、誰かひとりでも気になってくれたらなと思います。あとは有名な人がひとりも出ていないじゃないですか？　この人が好きだから映画を観に行こう、というのじゃなくて、どのバンドも平等に見てほしいなあと思って。本当にこの時期に出会ったバンドしか入れていないんです。ライブもそうですし、インタビューもそうしました。

――確かにそうですよね。立ち上げに関わったDMBQだとかも出てくるのかな？と思ったんですけど。

大石　そうなんですよ。先日のメテオナイトでお会いしたギターウルフのセイジさんには「Less Than TVの映画になんで俺が入ってないの？　いちばんLess Than TV愛が強いのは俺なのに！」と言われてしまって（苦笑）。そういう有名な人たちを入れたらもしかしたらもっと興味を持ってくれる人がいっぱいいるのかもしれないんですけど、本当に今リアルタイムで谷ぐちさんたちが会って影響し合っている人たちで今の日本のアンダーグラウンドの音楽を見せたかったので、あえて昔の人たちに話を聞きに行ったりはしませんでした。撮影時期が1年ずれていたら話も違うし、出てくるバンドもまたまったく違うものになっていたと思います。

――ライブ映像がすごく迫力ありました。目線も低く、モッシュの中に飛び込んでいる感じで。ひとりで撮っているんですか？

大石　はい、ひとりで1日に18バンドとか。岡山のメテオティックナイトに行ったときは、夜走りで10何時間移動して、18バンド撮って、そのまま打ち上げにも出ずまた夜走りで帰って。もうギックリ腰になりましたね（笑）。

――それはバンド以上にキツイですね。

大石　でもライブがいいので、それで夢中になっちゃうんですよね。ちょっと休憩しようかと思って見ていても「すごい！撮影しなきゃ」って。

――映画全体を通して撮影で意識したのはどんなことですか？

大石　谷ぐちさん一家っていつもバタバタしているんですけど、家に3人でいるときはすごくほんわかしているんですよ。緊張感があるだけの人たちではなかったので、そういう優しいところも見せたいなあと、生活のシーンでは柔らかめのレンズを使ったり、編集のときの色味でライブシーンと差が出るようにしました。で、ライブはバキバキに（笑）。ライブシーンは音のミックスに関してもボアダムスなどを手がけている方にお願いしてかなりこだわりを持ってやっていますので、デカイところで観てもらいたいなあと思います。