大石 規湖 (監督)
映画『MOTHER FUCKER』について【5/7】
2017年8月26日(土)~9月8日(金) 渋谷HUMAXシネマ
他 全国順次公開
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――この介助の場面が撮れたのはすごくよかったですね。
大石 そうですね。実は私が自分でセッティングしたんじゃないんです。五味さんのおかげなんですよね。介助先で谷ぐちさんがライブをすることになっていたので、施設の職員である五味さんに「撮影してもいいですか?」ということを伝えて同行したんですが、障がい者の方たちを撮るというのは本人やご家族の方たちには嫌がる人もいるだろうから、「谷ぐちさんのライブ映像だけを撮って、障がい者の方たちは映らないようにします」と撮影前に言ったんです。そうしたら「いや、許可を取りましたから撮っていいです。顔もアップで撮っていいし、みんなの反応を撮ってほしいです」と言われて。五味さんの考えとしては、障がい者の施設に普通の人が来ることもあんまりないし、障がい者の方たちに接する機会があまりになさすぎるから触れ合う機会を作りたいと思っていたので、そのきっかけになるから撮影はどんどんしてほしい、ということで。私も給食を一緒に食べて、レクリエーションを一緒にして、脳性麻痺の方と話していたらとても楽しくてカメラを置いて話し込んじゃったりして、そのぐらい思いがけず撮れたシーンでした。
――これは本当にいいシーンですよね。谷ぐちさんがまったく偏見なく障がい者の方たちと接していて、障がい者の方たちがあんなに楽しそうにしているところを見せて、それが映画の中で他のシーンと同列に並べられているというところにも偏見がない。障がい者を題材にしたドキュメンタリーはありますけど、本当にいろんな人がいるその中のひとりとして描く映画というのは観たことがなかったなと。
大石 編集しているときに、この人たちを登場人物のひとりとして描いているだけにしたいなと思って。障がい者だから出したのではなくて、谷さん家族が全国各地に行って出会った人たちのひとりぐらいの感じで描きたいなと思っていました。それは本当に谷さんやLess Thanまわりの人たちが障がい者の人に対してそういうふうに接しているから、それをそのまま映画に落とし込みたいなと思って。障がい者だからタバコ吸わない、お酒飲まない、遊びに行かない、ではなくて、一緒に遊んで一緒に飲んで、バカなことも話せばすごく真面目な話し合いもする。その話し合いも、文字を目で追ったり、顔で文字を書いたりという方法でするから、ひとつの話をするのにものすごく時間がかかるんですよ。それでも話し合いをしているんです。そういう雰囲気とか態度とかも全部落とし込みたいなと思って。だから脳性麻痺号のヒラ山Shizu男さんと谷ぐちさんとの会話も、ちゃんと喋っているところを撮りたかったんです。ヒラ山さんが「もう一度生まれ変わっても脳性麻痺で生まれたい」って言っているのを、谷ぐちさんに通訳してもらってその言葉だけを使えばそれでもいいんですけど、頭で書いて喋っているところをちゃんと入れたくて。そういう姿ってなかなか見れない、という言い方はあれですけど、こうやってこの人は喋っているんだというのを伝えたくて。
――そうですよね。そこがとてもよかったです。谷ぐちさんも会話に夢中になっていて、内容は「女にモテたい」とかそういうお話なんですけど(笑)、まあふたりともいい笑顔で。
大石 ……ただ私はあの日、もっとまじめに谷ぐちさんが働いている姿を撮りたかったんです。ヒラ山さんの介助のお料理を作って、お風呂にもちゃんと入れて、というのを撮りたかったんですけど、行ったらヒラ山さんいきなり私を口説き始めて、「飲み会しよう」とか誘われて(苦笑)。お風呂のシーンもちゃんと撮りたかったんですけど、「脱いでるところから撮って」って言われて。お風呂の中でも私に見られているからすごく嬉しそうなんですよ。
――それはセクハラですね(笑)。
大石 完全にセクハラですよ。あれも泊りで撮影しに行ったんですけど、帰るときに「私は何を撮りに来たんだろう?」という状態でした。もう最高です、あの人は(笑)。ヒラ山さんは多分映画館に来ると思うしライブハウスにもよくいますから、映画を観て興味を持たれた方は話しかけてほしいなと思います。きっと楽しい会話ができると思います(笑)。
出演:谷ぐち順、 YUKARI、谷口共鳴(ともなり) 他バンド大量
監督・撮影・編集:大石規湖
企画:大石規湖、谷ぐち順、飯田仁一郎 制作:大石規湖+Less Than TV
製作:キングレコード+日本出版販売 プロデューサー:長谷川英行、近藤順也
配給:日本出版販売 © 2017 MFP All Rights Reserved.
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