緒方貴臣監督『飢えたライオン』

緒方 貴臣 (監督) 映画『飢えたライオン』について【6/6】

2018年9月15日(土)より、テアトル新宿にてレイトショー!以降全国順次公開

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

緒方貴臣監督3
――監督の映画の特徴として、シーンの間の黒味というのがありますね。

緒方 過去3作を通して試行錯誤していて、秒数とかも実験してきたんですが、今回はだいぶ上手くいったなと思っています。黒味を入れるって編集者からしたら結構嫌なものなんです。基本的にはつながりを大事にしてやっていて、それを壊すわけですから。編集の澤井とは今まで結構ケンカをしながらやっていたんですが、今回は彼女がかなりわかっていて、彼女の感覚で入れているところが結構ある。黒味の長さも実は細かく調整していて、すごく上手くいっているんじゃないかなと思いますね。

――黒味が入るたびに我に返って「映画を観ている」ということを意識させられますね。

緒方 映画館で観ると、黒味のところで本当に真っ暗になるじゃないですか。あの真っ暗な状態って日常であんまり経験しないんですよ。だからあそこで「次はどういうことが来るのか?」と考えることができるし、そこで感情が途切れるから感情移入がしにくいんです。あと視覚的には瞬きを表現したいと。この映画はファーストカットを除くと目のカットとレンズのカットで映画自体が挟まれているんです。目とレンズは一緒だと僕は考えてやっているんですけど、その合間に黒味が入ることで、瞬きで現実のいろんな断片が見えていくということを表現しています。そして、シーンとシーンの間以外にも実は2箇所で黒味を入れていて。お風呂のカットと、4人組が駅のエスカレーターを上がっていくカット、そこはカットの合間にあえて黒味を入れています。この映画は4、50代の男性に観てほしいと思って作っているんです。自分も含め、女子高生を消費している層だと思うから、そういう人たちにそのことを意識させたいと。高校生の4人組がエスカレーターで上がっていくシーンを僕が観たら「もしかしたら下着が見えるかもな」と一瞬思っちゃうんですね。そういうところに黒味が入ることによって我に返らせたいというか。女性が観るとまったく意味がわからない黒味かもしれないんです。

――この映画はいろんな層の観客がそれぞれ何かを考えるものになっていると思いますが、監督としては中年の男性に向けて作ったところが大きいと。

緒方 ターゲットをひとつに絞れと言われたらそこなんです。でも海外の映画祭で上映したら観てくれているのは全然そういう人じゃなくて、オランダやイタリアでは学生向けの上映会をしたいと言われましたし、ドイツのフランクフルトでは授業に使いたいと言われました。それはとても嬉しいことなんですが、元々はそういう男性に観てほしいと。日本って女子高生を消費しているなとすごく思うんですよ。風俗もそうだしアダルトビデオでも「JKもの」というジャンルがある。テレビの世界はどうかというと、アイドルグループは高校生のようなコスチュームで踊っていて、あれが本当にダンスと歌だけでやっているかと言ったらそうじゃなくて、やっぱりおじさん向けに性的にアピールしていると見えるわけです。年齢的には小学生とかもいたりして、短いスカートを穿いて、危ないと思うんですよ。そういうものが日常的に至るところにある。日本にいたら普通のことになってなんとも思わないかもしれないけど、世界的に見たらありえないし、本当に許されないことだし、異常だと僕は思っているんです。

――日本は本当に女性差別が強いですね。女子高生を搾取していることも、年齢や容姿で差別することもひどいなと思います。

緒方 高校生であることに価値があるんですよね。海外だったら年齢を重ねるほど経験値が上がって成熟するということになるのに、日本は若いときがピークでどんどん落ちていくと。中身なんてどうでもよくて見た目だけ、若ければいいというのは絶対おかしいと思います。それで4、50代男性をターゲットにしています。

――ぜひそういう人たちに観に来てほしいですね。そして自分を振り返ってほしいと。

緒方 そうですね。僕自身が、もしかしたらそういうふうに人を傷つけることがあったのかもしれない……と常に考えているんですよね。わからないじゃないですか。いつも映画の最初はそこから始まるんです。さっき話したように、前の作品で人を傷つけたかもしれない、嘘の情報を流してしまったかもしれない、というのがこの映画の発端ですけど、映画の中のいろんな部分に「自分が加害者だったのかもしれない」ということが散りばめられています。この映画には「飢えたライオン」というべき人がたくさん出てきますけど、その全部に僕がいる、みたいな感じで作っています。

( 2018年8月29日 青山で 取材:深谷直子 )

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飢えたライオン ( 2017年/日本/カラー/16:9/ステレオ/DCP/78分 )
出演:松林うらら 水石亜飛夢 筒井真理子 菅井知美 日高七海 加藤才紀子
品田誠 上原実矩 菅原大吉 小木戸利光 細川岳 遠藤祐美 竹中直人
監督・脚本・プロデューサー:緒方貴臣 脚本:池田芙樹 共同プロデューサー:小野川浩幸
撮影監督:根岸憲一 録音:岸川達也  編集:澤井祐美  音楽:田中マコト
配給:キャットパワー © 2017 The Hungry Lion
公式サイト 公式twitter 公式Facebook

2018年9月15日(土)より、テアトル新宿(東京)にてレイトショー!
10月13日(土)より、シネ・リーブル梅田(大阪)、元町映画館(兵庫)
10月27日(土)より、名古屋シネマスコーレ(愛知)
11月24日(土)より、小山シネマロブレ(栃木)
ほか全国順次公開

2018/09/14/20:26 | トラックバック (0)
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