大石 規湖 (監督)
映画『JUST ANOTHER』について【3/5】
2020年10月24日(土)より新宿K’s cinemaにてロードショー、以降全国順次公開!
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――大石監督はTAYLOWさんを撮影するのに緊張しなかったんですか?
大石 すごく目上で”レジェンド”と言われている方なので最初のうちは緊張しましたけど、そんなことを言っていたら撮れないので、途中から思うことを素直に全部伝えていくようにしました。基本的にTAYLOWさんもあんまり自分の内を話してくれる人ではないので、最初のうちはカメラとかこっちを見て話してくれないことが結構あって。今池CLUB UPSETでのライブのときの映像がそうです。対バン相手を選んだ意図を質問しても全然こちらを向いてくれなかった。これは自分から開いていかないとTAYLOWさんも開いてくれないなと思って。
――スタジオでの練習のシーンでは、練習前に雑誌を読んでいるTAYLOWさんに、うるさがられながらも食い下がって質問していましたね。
大石 こっちは聞きたいことがたくさんあるのにTAYLOWさんは雑誌を読むことしか頭にない感じで、行くしかないなって思いました。
――見ていてヒヤヒヤするような、居心地悪い思いになる映像ですよね。あえて入れているんですか?
大石 そうです。メンバーに対しても素っ気ないし、私に対しても素っ気ないし。スタジオ練習に対して「うるさいじゃん」って言っちゃうのがTAYLOWさんらしいというか。いろいろ見透かした上で自分がやるべきことしかやりたくない、みたいなわがままな感じ、本当に自分がやりたいことだけをやるんだという姿勢がわかりやすいなと思って。
――EDDIEさん、JOHNNYさんの印象は?
大石 EDDIEさんはすごくロックな人。いわゆるロックスターのイメージに憧れて、そういうところに行きたいと思ってやり続けている人だなというのを感じました。「名古屋パンクの元祖は俺だから」と自分で言うだけあって本物だなと。自分のイメージをすごく大事にしていて、カメラの前では必ずサングラスというのが徹底されていました。JOHNNYさんはふざけたことを言ってくることが多いんですけど、お子さんがいるのもあって、家族のことやご時世のことなども考えながら、「じゃあどういう立ち位置で音楽をやればいいか?」というのをいちばん考えているのかなと思いました。家族の時間を大事にしながら、ドラムがすごく好きだから練習も毎日して、内に秘めたものを感じました。結構前に腰痛でドラムが叩けない状況になって、それでもライブをやったことがあったらしいんですけど、本人たちが「何も起こらないバンド」みたいなことを言っても、事件にはならないけど自分たちの中では山をたくさん超えてきたんだろうなということも感じましたね。
――映画の中でTAYLOWさんが53歳のときに仕事を辞めていたことを語っていて、やっぱり山あり谷ありだなあと。奥さんやバンドの仲間が支えてくれたという言葉を聞いたとき、大石監督はとても感動しているようでした。
大石 TAYLOWさんが体調を悪くしたときに奥さんが「バンドだけは続けなさい」と言ったというのを聞いて、そんなふうに人から「生きていてこれだけはやめない方がいい」と言われるのってなかなかないよなあと思って。TAYLOWさんは「そのときバンドを辞めていたらボケていただろう」ということも言っていたので、バンドをやることってTAYLOWさんにとって生きるに等しいのかなあと思ったりもして。
――なるほど。それを理解している奥さんも素晴らしいですね。
大石 そうですね。TAYLOWさんは奥さんの詳しいことは教えてくれないんですけど、ただ奥さんの自慢はめちゃくちゃしてきます(笑)。「奥さんの理解があるからできるんだよ~」って。すごく好きなんだろうなと感じました。
――SHINOBUさんのパートが映画の中で一つ大きなトピックになっていますね。やっぱりあのバンドに後から若い人が加わるというのは大変そうですね。
大石 最初はSHINOBUさんはちょっと疑問を持ちながらthe原爆オナニーズをやっているのかなと思ったんですが、そうじゃなくてバンドへの愛があるからこそ迷ったり悩んだりしているというのがだんだん見えてきて。なおかつTAYLOWさんがSHINOBUさんに厳しくするのも、ちゃんと愛情を持った上での厳しさで、「こいつはこういうふうにしたらダメ」という計算もあったりするんですけど、表には出てこないところでちゃんと意思疎通ができている。この人たちならではの人間関係なんだろうなと思いましたね。
――そういう関係ってどのバンドにもあるんじゃないかなと思うんですが、いろんなバンドを見てきている大石監督から見てどうなんでしょうか?
大石 映画の中で「バンドでしか理解できない人間関係ですよね」と私が自分で発言しちゃっているんですけど、バンド特有の人間関係というか、バンドのメンバー同士には独特の絆があって、この人たちじゃないとこんなふうにはならないという人間関係があるんだろうなと思います。だからやめられないんだろうなとも思いました。
――TAYLOWさんはSHINOBUさんに厳しく接しながら実力を認めているし、SHINOBUさんにもそれは通じているんですもんね。本当に以心伝心のようですね。
大石 SHINOBUさんにTAYLOWさんの厳しさについて質問したら「気持ちいいときもある」って言ってた時点で、もう私にはわかんないわ~(苦笑)。男同士とかいうことじゃなくて、やっぱり個々がすごく独立してやっているからかなと。それぞれがやりたいことをまずやった上で4人が集まっているからこそ、逐一話し合わずともお互いを尊重し合える。あんまり仲よく見えないみたいなことを含めて絶妙な人間関係の距離だなと思います。SHINOBUさんは一人だけ下の立場のわけだから遠慮はありつつもがんばっている。
出演: the 原爆オナニーズ < TAYLOW、EDDIE、JOHNNY、SHINOBU >
JOJO 広重、 DJ ISHIKAWA、森田裕、黒崎栄介、リンコ 他
ライブ出演: eastern youth、 GAUZE、 GASOLINE、 Killerpass、 THE GUAYS、横山健
企画・制作・撮影・編集・監督:大石規湖 スチール:菊池茂夫
配給: SPACE SHOWER FILMS © 2020 SPACE SHOWER FILMS
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