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アトムの足音が聞こえる

http://www.atom-ashioto.jp/

2011年5月21日(土)より
ユーロスペースにてレイトショー他全国順次公開

INTRODUCTION

日本音楽史に唯一無二の天才として刻まれるべき音の魔術師と、日本映画史が持ち得た稀代のトリックスター 足る映画作家の、あまりにも意外過ぎる異次元格闘技。芸術の例外性をめぐる痛快で感動的なドキュメント!
――佐々木敦(批評家)

『アトムの足音が聞こえる』 未知の惑星の生態系をも見事に描き出す最新CG技術。1枚の写真から『ALWAYS 三丁目の夕日』のような、在りし日の昭和の下町風情を再現することさえ可能になった。しかし、観る者をスクリーンの中の物語に引き込む最大のファクターは、たった一つの「流行歌」だったりする。精巧に再現された長屋のCGのテクスチャーより、自動車がまばらに走っていた当時の街の静けさのほうが、より雄弁に昭和という時代を映し出す。
音は世界を支配する――その最たるものがアニメーションだ。同時録音された音が素材となる実写映画と違い、真っ白なキャンバスに音付けをして、ゼロからその空間を組み立てていく。まだモノクロで受像管が不鮮明だったテレビ放送黎明期に、今日のSFXクリエイターのような役割を果たしたのが音響効果だった。国産テレビアニメ第1号『鉄腕アトム』(63~66年)で、アトムが活躍する未来都市を音でデザインしたのが大野松雄だ。
オシレーター[編註1]とテープ・レコーダーを用いる、50年代に生まれたばかりの電子音楽のテクニックを用い、手塚治虫の原作には描かれていない<未来の都市の音>を創造した。しかし品行方正ではなく、暴走族のクラクションが「エリーゼのために」を奏でるようなアナーキーさ。合金製のアトムの足音に、大野はプラスチック素材のような「ピョコピョコ」という音を当てた。また、原作の「バキューン!」「ギョロギョロ」といった擬態語を、自らの声を素材にしたオーラルサウンドという手法によってサウンド化し、アニメにナンセンス漫画のノリを持ち込んだ。そんな大野のテレビ界のキャリアは、TBS開局時の国産SFドラマ『惑星への招待』[編註2](55年)に始まる。それは、ハリウッドで初めて本格的に電子音楽が使われた映画『禁断の惑星』[編註3]、米国初SFテレビシリーズ『ミステリー・ゾーン』[編註4]に先駆けるものだった。
『アトムの足音が聞こえる』2
(c)シネグリーオ 2010/創通・サンライズ
大野が第一歩を記した日本アニメの音響の歴史。しかし、その後『ルパン三世』(第1シリーズ)にクレジットを残したのみで、表舞台から姿を消してしまう。柏原満(『宇宙戦艦ヤマト』)、松田昭彦(『機動戦士ガンダム』)ら、音響マンの口から語られる大野の伝説。レイ・ハラカミら第一線で活躍する孫世代のクリエイターにも、大野松雄の影響を公言する者は少なくない。
菊地成孔、相対性理論のPVなどを手掛け、音楽にも造詣が深いことで知られる映画監督・冨永昌敬は、当時を知る者の証言を手掛かりに、大野の消息を辿るために西日本へと足を向けた。
音響効果にパードン木村、ナレーターに野宮真貴を交え、50年に及ぶ映像音響の歴史を辿る本邦初のドキュメンタリー。貴重なフィルム素材、秘蔵音源、2009年に実現したコンサートのリハーサル風景なども交え、時代背景や大野の人生哲学などをスクリーンに映し出す。

キーワード
1 オシレーター:発振器のこと。電気から「ピー」というシンプルなサイン波を発生させる装置。放送局が検波用に用いていたこれを、前衛作曲家らが楽器として使い始めたことから、50年代にドイツで電子音楽の歴史がスタートする。本文へ
2 『惑星への招待』:KRテレビ(現・TBS)の開局記念番組として、56年に放送された初の国産SFドラマ“宇宙物語”の第3作。まだビデオテープのない生放送時代の作品に、毎回、音楽の代わりに劇中のサウンドトラックを大野が電子音で音付けしていた。本文へ
3 『禁断の惑星』:56年のアメリカ初の本格SF映画。アシモフ『われはロボット』の影響下にあるキャラクター、ロビーが人気を博した。オーケストラの代わりに、ルイス&ベベ・バロンによる電子音響を、ハリウッドで初めて本格的に使用。本文へ
4 『ミステリー・ゾーン』:59~64年にアメリカで放送されたSFテレビシリーズ。原題は「The Twilight Zone」。脚本家のロッド・サーリングが毎回ホスト役を務めた1話完結もので、バーナード・ハーマンらが電子音を使ったスコアを書き下した。本文へ

2011年5月21日(土)より
ユーロスペースにてレイトショー他全国順次公開

Story
『アトムの足音が聞こえる』3「映画における音響とは何か?」 観客が劇場で耳にしている音は、実際の音ではない。セリフと音楽、情景音によって組み立てられるサウンドトラックも、映像と同じく演出されたものだ。そして音響は、映像の付属物ではない。エコーの広がりひとつで舞台は四畳半からコンサートホールにまで変幻自在に変えられる――冒頭に登場する音響監督の第一人者・柴崎憲治は、自らのサウンド・ウィザードとしての役割を説明する。
音響の歴史は、フィルム以前の舞台演劇から始まる。歌舞伎の“鳴り物”のような効果音名人は、劇場や撮影スタジオには欠かせない存在だった。黎明期のテレビ界を支えた名匠も多い。「鳥笛」「カエルの鳴き声」を当時の手法で再現してくれるのは、初期NHKのドラマで活躍した大和定次。彼は同期入局しながら、すぐにNHKを飛び出した大野松雄という人物について振り返る。
「お兄さんって感じでね。(ところが)1年か1年半ぐらいで、いつのまにかいなくなっちゃったんですね」
それがこの映画の主人公、大野松雄である。彼は文学座の研究生としてこの世界に飛び込んだ。舞台美術などを担当していたが、音のセンスを見込まれて音響担当に。「波ざる」[編註5]などの伝統的な舞台効果を体験したのち、大和らと同時期にNHK効果部に入局する。そこで彼は、当時ドイツで生まれたばかりのシュトックハウゼンの電子音楽[編註6]の存在を知った。オシレーターとテープ・レコーダーを使った、この新しい芸術に感銘を受けて、わずか1年で退局しフリーランスの音響技師に。いくつかの実験映画に関わった後、ひょんなきっかけで63年に始まったアニメ『鉄腕アトム』の音響効果に抜擢される。
「手塚治虫さんが局に売り込んできた『鉄腕アトム』の企画を見て、これは普通の漫画じゃないなと。パッと閃いたのが、大野君のやっていた電子音楽だったんです」
『アトムの足音が聞こえる』4そう語るのは、大野の起用を発案した、文学座時代の先輩だったフジテレビ映画部の竹内一喜だ。
「大野君が手掛けた、アトム、御茶ノ水博士、ウランちゃん……みんな音が人格を持っていた。“人格を持つ音”というのは、日本ではこれまでなかったと思うんです」
21世紀を舞台にした『鉄腕アトム』に、竹内は最良のサウンド・クリエイターを引き合わせたのだ。同年『鉄人28号』、『エイトマン』が他局でスタートしているが、僕らはその印象を『鉄腕アトム』ほど強烈に覚えていない。それほど大野のサウンドは個性的だった。
大野が影響を受けたという電子音楽の歴史は、50年代にドイツの放送局で産声をあげた。日本でも54年よりNHK局内で実験が開始され、翌年、諸井誠・黛敏郎[編註7]「7のヴァリエーション」が本格第一作として生まれた。しかし、アカデミズムの世界で語られる電子音楽とは、厳格なスコア(数値、グラフなど)を元にした難解なもの。同時代にフランスで生まれた、感覚を重んずるミュージック・コンクレート[編註8]のような即興性を認めなかった。大野の電子音楽もまた、スコアなど無用。彼が影響を受けた、モダン・ジャズ、フリー・ジャズのフィーリングを持ち込んだ、即興的でユーモラスものだった。

キーワード
5 波ざる:長方形のザルの中に、小豆、大豆、米などを入れて「ザザザーッ」という波の音を表現する舞台用の音響装置。その振り方で、さまざまな波を描き分ける職人芸が決め手。西洋にもオーシャン・ドラムという類似楽器がある。本文へ
6 電子音楽:検波用のオシレーターとテープ・レコーダーを使った新しい音楽表現として、50年代初頭にドイツで誕生。初期は難解なメロディーの作品が多いのが特徴。楽団演奏ではなく、テープ・コンサートの形で作品が発表された。本文へ
7 諸井誠・黛敏郎:ともに戦後の日本の現代音楽シーンの開拓者。NHK音楽部長だった諸井は、ドイツの電子音楽のノウハウを日本に紹介。NHKに電子音楽スタジオを作った。55年の黛による習作を経て、翌56年に2人による第1作が完成。本文へ
8 ミュージック・コンクレート:40年代にフランスで誕生した、テープ・レコーダーを使った即興による作曲法。理論を重んずるゲルマン民族的なドイツの電子音楽と違い、シュールレアリズムを背景にした、ラテン民族的な感性による芸術を目指した。本文へ

Cast Profile

大野松雄:音響デザイナー

1930年東京神田出身。府立六中を経て旧制富山高等学校(富山大学の前身)中退。
文学座、NHK効果団を経て、フリーの音響クリエーターとして独立。
TVアニメ『鉄腕アトム』の音響デザインを担当。前衛音楽の小杉武久、『宇宙戦艦ヤマト』の音響で知られる柏原満も参加。
音響を手がけた映像作品は、勅使河原宏監督「いけばな」(57)、松本俊夫監督「安保条約」(59)、真鍋博製作アニメ「潜水艦カシオペア」(64)、東宝映画「惑星大戦争」(77)など多数。
タージ・マハル旅行団の記録映画「旅について」(72)を制作。東京・青山の大野スタジオ(綜合社)は 60年代から 70年代にかけて、アヴァンギャルド芸術家が集う梁山泊となっていたという。
68年以来、滋賀県の知的障害者施設では 40年以上にわたって演劇活動に協力、知的障害者と施設の記録映画も自ら制作した。つくばEXPO’85、未来の東北博覧会 (87)、アジア太平洋博覧会福岡(89)など、パビリオンの空間音響システム・デザイナーとしても知られる。

C R E D I T
監督:冨永昌敬
ナレーター:野宮真貴 音響効果:パードン木村
撮影:月永雄太・冨永昌敬 助監督:原田健太郎 仕上担当:田巻源太
企画・プロデューサー:坂本雅司 プロデューサー:大野敦子 企画協力:奥村健
出演:大野松雄
柴崎憲治 竹内一喜 大和定次 杉山正美 高橋巖 柏原満 桜井勝美
田代敦巳 町田圭子 小谷映一 ひのきしんじ 松田昭彦 Open Reel Ensemble
齋藤昭 涌井康貴 村上浩 由良泰人 レイ・ハラカミ 金森祥之
製作:シネグリーオ 配給・宣伝:東風 助成:文化芸術振興費補助金 協力:アリオン音楽財団
2010/82分/16:9/ステレオ/日本/(c)シネグリーオ 2010
公式サイト:http://www.atom-ashioto.jp/ 予告編:youtubeリンク

2011年5月21日(土)より
ユーロスペースにてレイトショー他全国順次公開

乱暴と待機(初回限定版) [DVD]
乱暴と待機(初回限定版) [DVD]
  • 監督:冨永昌敬
  • 出演:浅野忠信, 美波, 小池栄子, 山田孝之
  • 発売日: 2011-05-11
  • おすすめ度:おすすめ度5.0
  • Amazon で詳細を見る
[大野松雄の音響世界(1)] 「鉄腕アトム・音の世界/大和路/Yuragi・他」
[大野松雄の音響世界(1)] 「鉄腕アトム・音の世界/大和路/Yuragi・他」

2011/05/04/13:07 | BBS | トラックバック (0)
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