インタビュー
「メモリーズ・コーナー」/阿部寛さん

阿部 寛 (俳優)
映画「メモリーズ・コーナー」について

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2013年2月23日(土)よりシネマート六本木、シネマート心斎橋他、全国順次公開

「メモリーズ・コーナー」は静かなる意欲作である。撮影後に東日本大震災が起きて公開が見送られていた。阪神大震災の被災者が住む仮設住宅に住む人物を訪ねるフランス人ジャーナリストと日本語通訳、仮設住宅に住む男性をメインの登場人物にストーリーが進む。阪神大震災を含む映画ながら奇しくも東日本大震災が起こり、公開に時間が経ったとはいえ、「震災後の日本」という現在の日本の状況を身近に考えさせることになっている。フランス人ジャーナリストをダルデンヌ兄弟の「ある子供」(05)で注目されたデボラ・フランソワが演じ、通訳を西島秀俊、仮設住宅に住む男性を阿部寛が演じる。監督はフランスの国立映画学校LA FEMISの脚本学科で学び、本作が脚本コンクールで受賞したことで監督デビューした新鋭オドレイ・フーシェ。実力派のキャストの好演と卓越した演出を是非、映画館のスクリーンで体感してほしい作品だ。 (取材:わたなべりんたろう)

阿部 寛 1964年6月22日生まれ。神奈川県横浜市出身。大学在学中にモデルデビュー。雑誌「メンズノンノ」創刊以来、3年6ヶ月表紙を飾る。大学卒業と同時に「ハイカラさんが通る」(87)で映画デビュー。つかこうへい作・演出の舞台「熱海殺人事件~モンテカルロ・イリュージョン」の主人公を熱演し話題になる。出演作は「凶銃ルガーP08」(94)、「トリック劇場版」(02)、「ハサミ男」「姑獲鳥の夏」(05)、「トリック劇場版2」「アジアンタムブルー」(06)、「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」「大帝の剣」「HERO」「自虐の詩」「魍魎の匣」(07)、「チーム・バチスタの栄光」「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」(10)、「天国からのエール」「ステキな金縛り」(11)、「麒麟の翼~劇場版・新参者」「テルマエ・ロマエ」「カラスの親指」「つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語」(12)他、多数。

STORY
西島秀俊×阿部寛 豪華キャストで贈る、奇跡のフランス映画――
神戸・淡路島を舞台に綴る、不思議な愛と希望の物語

フランス人ジャーナリストのアダ(デボラ・フランソワ)は、95年に起きた阪神・淡路大震災の式典を取材するために神戸を訪れる。街は復興し、誰もがかつての悲劇と決別し、豊かな暮らしを楽しんでいるかのように見える。通訳の岡部(西島秀俊)を伴い、かつての被災者の家を訪ね歩くアダの前に、いまだに後遺症に悩む寡黙な石田(阿部寛)が現れる。かたくなな態度をとる彼の心を開かせようとする彼女に、岡部は彼が現世の男ではないと忠告する。しかし彼女は不思議な石田に魅せられ、取材にのめり込んでいく。やがて彼が幻であることを悟った彼女は、岡部の故郷、淡路島の美しい風景の中に石田の記憶を見出していく……。


阿部寛さん――阿部さん演じる石田は阪神大震災後に家族を失い仮設住宅に住む孤独かつミステリアスな人物です。こちらとしては「ベルリン 天使の詩」の天使たちのように状況を見守る守護天使のようなキャラクターに感じたのですが阿部さん自身はどのようにとらえましたか?

阿部 感情もあまり表に出さない人物で、観る側は始め石田が何を考えている男か分からないと思うんです。感情を抑えて静かに演じましたが何かこの男にはあると思わせるように、今質問にあったミステリアスというかそういうことを思わせるように演じました。

――演じる石田の映画での登場のファーストシーンは仮設住宅を訪ねてきたフランス人ジャーナリストと通訳と案内者と対面するシーンです。ただ、石田の背中越しに撮られていて観客にはまずは後ろ姿から登場します。その後ろ姿の向こう側に訪ねてきた3人の困惑したような緊張した表情が映し出されます。この登場がとても印象的でした。

阿部 確かに背中が最初の登場シーンでしたね。あれでミステリアスさが伝わるとは思いますが珍しいファーストショットかもしれないですね(笑)。

――続くシーンで石田は相手の顔を見ずに「地震がどのように生まれるか知っていますか。ぼくは地震がどうやって生まれるか知ってます」の言葉を発して、よりミステリアスに思えます。

阿部 あぁ、そうですね(笑)。でもというのも何ですが、演じていて楽しいというか演じ甲斐がある人物でしたね。ストーリーのキーを握る人物でもありますし。

――フーシェ監督から何か参考に観るように言われた映画などはあったのでしょうか?

阿部 4本あって「雨月物語」「怪談」「24時間の情事」「幽霊と未亡人」でしたね。見ましたが、どの映画も興味深かったですね。

――その監督のセレクションで気付くのが始めに挙がった「雨月物語」「怪談」は海外で知られた日本映画なのも興味深いですが、どの作品にも共通してゴーストというか人間以上の霊体のようなものが登場する、もしくは示唆された作品だということです。海外の方から見たら日本は幽霊が日常に共存している国のように見えるのかもしれないと思いました。

阿部 監督はとても映画に詳しい方なのでこれらの4本をすすめてくれたのですが、そうかもしれないですね。

――海外の方から見ると、日本は街中に寺社や神社がありお地蔵さんや墓地もあるのでそのように感じるようです。「千と千尋の神隠し」に通じる世界観を日本に持っているのかも。

阿部 あぁ、それはあるようですね。監督と話しましたが、日本の描写でちょっとおかしいなと思うことがあれば伝えて映画の中でそうならないようにはしましたね。

――フーシェ監督の演出はどのようなものだったのでしょうか?

阿部 俳優に任せっきりでなく、きちんと指示してくれる方でした。若いのにしっかりした方でした。

「メモリーズ・コーナー」撮影風景
撮影風景 「メモリーズ・コーナー」
――今作でとても印象的なシーンがあります。回想で震災前日に石田がまだ小さな自分の娘と一緒に過ごしているシーンです。この回想シーンは色調は暖色系で照明も明るく演出されています。このシーンで写真を並べ替えて娘にストーリーを語ります。

阿部 あのシーンは即興なんです。あの場で作り上げたストーリーを娘に語っているんです。だから、「犬がラーメンを食べてしまいました」など突飛なんですけど(笑)。娘役の女の子もとても上手でしたね。

――あのシーンで人間味を失う前の石田が唯一描かれます。阿部さんはこちらの印象ですとエキセントリックなキャラクターを演じることが割とあると思うのですが、こういう普通な人物のシーンを演じるととても魅力的だなとあらためて感じました。

阿部 ありがとうございます。監督はフランスでも公開された是枝監督の「歩いても 歩いても」のぼくを見てぼくに興味を持ったようなのですが、あの映画でも普通の役なので、そのあたりは共通していますね。

――最後の質問ですが今作は二回目に観たほうがより良かったんです。1回目はスクリーンで観て、2回目はサンプル盤で見たのですが監督の意図、つまりフランス人監督が撮る阪神大震災後の被災者のストーリーもより伝わりました。演出、特に編集が秀逸なことにも気付きました。阪神大震災の仮設住宅に住む男を演じた映画が3.11の東日本大震災後の現在に上映されることも含めて、そのことはどう思いますか?

阿部 3年前に撮った作品だから時間は経っていて今こうやって話しているのが何だか不思議な気持ちもするんです。公開はもうされないのかもと思った時期もありましたし、とても難しい問題を扱っているとは思うんです。だからこそ、俳優として演じ甲斐もありましたし、海外の方と組むのも初めてでした。今作の後に撮った「テルマエ・ロマエ」でイタリアの撮影所でイタリアのスタッフと仕事をしましたが、もちろんそれは違う体験でしたし、何というか……海外の監督、しかも若い女性のフランス人の監督に俳優として身をあずけてみたいと思ったんです。映画は人との出会いですし、それはもちろん縁ということですし、今作を観る方もどこかで今作を知って映画館に観に来てくれるわけですが、それも縁ですし、エンタテインメント作品ではないかもしれないですがスクリーンで観ていただけたらと思います。

――今日はありがとうございました。

阿部 こちらこそありがとうございました。

インタビュー:わたなべりんたろう 撮影:辻岡朔実
2月15日 原宿シェアハウス THE SHAREにて

メモリーズ・コーナー 2011年/フランス・カナダ/カラー/82分/
監督・脚本:オドレイ・フーシェ
撮影:ニコラス・ゴラン 美術:アンドレ・フォンスニィ 音楽:ザ・べナール・レイクス
編集:ニコラス・ドメゾン 、マキシム・クロード・レキュヤ―
出演:デボラ・フランソワ、西島秀俊、阿部寛、フランソワ・パピニュ、國村隼、塩見三省、倍賞美津子
配給:ディンゴ 配給協力:アンプラグド
©NOODLES PRODUCTION, FILM ZINGARO 2 INC., FRANCE 3 CINEMA, 2011
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2013年2月23日(土)よりシネマート六本木、
シネマート心斎橋他、全国順次公開

2013/02/22/20:16 | トラックバック (1)
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