インタビュー
緒方貴臣監督『飢えたライオン』

緒方 貴臣 (監督) 映画『飢えたライオン』について【2/6】

2018年9月15日(土)より、テアトル新宿にてレイトショー!以降全国順次公開

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

『飢えたライオン』 『飢えたライオン』場面1 『飢えたライオン』場面2
――ここで描かれるいじめには、誰にとっても身につまされるものがありそうですね。学校でのいじめに関わってこなかったという人はいるかもしれないけど、SNS上などで見知らぬ人を叩くようなことはきっと誰もが身に覚えのあることだと思うので。

緒方 そうですよね。いじめって学生とか、あとは会社の中でもあるかもしれないけど、特別な人たちのすることで「自分には関係ない」と思う人もいるかもしれない。でも現代ってみんなが何かしら加担しているような気がしています。今日もあるタレントがいじめについて発言したのが炎上して、今謝罪とかしているようなんですが、そのタレントを社会がいじめているような構図になっていて。

――タレントばかりではなく一般人が起こした事件でも、すぐにSNSでは加害者の素性まで晒されますね。熱が冷めるのもあっという間で、次の日には誰も話題にしなくなっているようなことが多いんですよね。

緒方 何か起こるとすぐにネットに情報が集まって、テレビや新聞などの他のメディアよりも全然速いんですよね。しかもニュースの新鮮さが保たれる期間がどんどん短くなって、新しいものを次々に出していかないとみんな満足しないという感じになってきている気がします。そして常に誰かが叩かれている。ここ数年それが本当にすごいなあと。その人に非があったかもしれないけど、そこまでやるか?というぐらいの。

――みんな自分が正義の使者のつもりでいるように感じられますね。『飢えたライオン』というタイトルはまさに言い得て妙だなあと思います。

緒方 そう、タチが悪いのはみんな正義だと思っているところですね。いいことをしているつもりで私刑を行っている。僕はそれに対して違和感を感じながら遠目から見ていたんですが、僕の前の作品の『子宮に沈める』(13)という実際の事件を元にしたフィクション映画を公開するときに批判されたりしたんですね。「大阪2児放置死事件」という、二人の子供が本当にひどい亡くなりかたをした事件で、それを映画というのは一般的に、いかに社会問題を扱っているとしても商売として作られているものと思われているから、「人が死んだ不幸な事件を商品にしやがって」みたいなことをすごく言われた。僕自身もそれは感じていたんです。僕はこの映画を社会的に意味がある「善」として作っているんですが、人によってはそう思わない人もいるし、しかもその映画には僕のオリジナルの部分もたくさんあるんですが、観た人の中には実際の事件通りに作られていると思った人が結構いたんですね。僕がいくらそれについて発言しても、読まない人は読まないから作品が一人歩きしてしまって。「僕は間違った情報を流してしまったんじゃないか?」という罪悪感をずっと感じていました。そういうことも今回作ろうと思ったベースになっているんですよね。

――脚本を書く上で工夫したことはありますか?

緒方 僕はいつも「こういう題材の映画を作りたい」となったときに、その題材をどういう形で映画にしようか?ということをまず考えるんです。僕の映画は普通のストーリーだけの映画ではないと自分では思っていて、要するに「入れ物」が重要なんですね。主人公がいじめられ、何かがあって死ぬというのでは普通の映画じゃないですか。そこをいろいろ考えて、主人公の虚像と実像がひとつの主人公像としてつながりを持つという構造を思いつきました。そういう映画は今までにないもので面白いんじゃないかな?と。通常は主人公が死んだら新しい人物が主人公を担うとか、あるいはそこで映画が終わるものですが、今回は代理の登場人物も作らず、彼女が亡くなった後も虚像というものがどんどん社会によって作られていく、それをひとつの主人公にできないかな?と。僕のチャレンジでもあったんですけど、そういう構造にしようということが決まってから脚本を書き始めました。

――確かにそこが面白いところですよね。死んでから新たな主人公像が見えていって、しかもそれがひとつではない。テレビによって作られる虚像もあれば、ネットで作られる虚像もあり、それまで映画で見せていなかった瞳の別の一面も明かされて。

緒方 今の高校生にはSNSがあって当たり前のものじゃないですか。僕は高校に行っていないんですけど、その年頃のときは携帯も持っている人は少なく、PHSとかポケベルとかの時代だったので、そこはあんまりわからなかったんです。でも今の世代ならではのコミュニケーションの仕方があるので、そういうのをベースに書けないかなと。

――それを調べるためには高校生に取材をしたんですか?

緒方 取材はしていないです。SNSで高校生のアカウントを作って、ツイッターだったら高校生をフォローし、どういう会話をしているのか?とか、どんな人とつながっているのか?とか、どんな写真をアップしているのか?とか、言葉も含めて調べるということを半年から1年ぐらいやりました。そのうち理想的な4人組を見つけて、彼女たちを追ってそのまま脚本に落とし込んだりしました。あとは普通に街で高校生の会話を聞いたりしていましたね。

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飢えたライオン ( 2017年/日本/カラー/16:9/ステレオ/DCP/78分 )
出演:松林うらら 水石亜飛夢 筒井真理子 菅井知美 日高七海 加藤才紀子
品田誠 上原実矩 菅原大吉 小木戸利光 細川岳 遠藤祐美 竹中直人
監督・脚本・プロデューサー:緒方貴臣 脚本:池田芙樹 共同プロデューサー:小野川浩幸
撮影監督:根岸憲一 録音:岸川達也  編集:澤井祐美  音楽:田中マコト
配給:キャットパワー © 2017 The Hungry Lion
公式サイト 公式twitter 公式Facebook

2018年9月15日(土)より、テアトル新宿(東京)にてレイトショー!
10月13日(土)より、シネ・リーブル梅田(大阪)、元町映画館(兵庫)
10月27日(土)より、名古屋シネマスコーレ(愛知)
11月24日(土)より、小山シネマロブレ(栃木)
ほか全国順次公開

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  • 監督:緒方貴臣
  • 出演:伊澤恵美子, 土屋希乃, 土屋瑛輝, 辰巳蒼生, 仁科百華
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2018/09/14/20:22 | トラックバック (0)
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