「お前、これごっついオモロイけぇ読んでみーやー」と高校二年のときに友達から手渡された本が「69」
だった。村上龍の名前すら知らなかったし、字だけの本を読むのは小6の読書感想文の課題本「イワンのバカ」以来二冊目という、
頭の中は女の子とオナニーのことだけだった筆者にとって、この本は面白くて面白くて朝まで夢中になって読んだ本だった。
そこにはまさに理想の高校生活が描かれており、「いけーん!このままじゃ、ワシらの高校生活いけーん!」
と激しい焦燥感にかられながらも結局は野球と告白と睡眠のみの学園生活を送るにとどまってしまうのだが、いつも頭のかたすみに「69」
のようなことしたーいと思っていた。
男子高校生の行動の9割は周囲の女子に向けてのものであると言っても過言ではないだろう。残りの1割はうんこしているときくらいのもだ。
去年、陣内孝則第一回監督作品の「ロッカーズ」という大傑作映画があったがその映画はまさに「モテるために」を実践したような映画で、
観ていてすこぶる気持ちがよくアドレナリン逆流しまくり映画だった。
この「69」も筆者にとっては同系列の映画である。あの時代をきっちり描けるのかなどといったことはさほど問題ではない。
おバカで元気の良い青春映画になっていてくれればそれでいい。そういう映画にするためのこの脚本家と監督の人選だろう。これは「ロッカーズ」
以上にスゲェ青春映画が観れかもと、クソワクワクしながら映画館に足を運んだのだ。
で、映画を観て・・・。がっかりした。正直言って退屈だった。確かに妻夫木の行動原理も言葉で言えば女にモテたいの一言なのだが、
なんだかこの映画は突き抜けていないのである。スコーン!としたモノがないのである。ガツンとした太い幹=俺はモテたい!
という気持ちがあんまり伝わってこないのである。「ロッカーズ」のバカ連中にはその太い幹があった。
これは作り手の意識の問題でしょう。「ロッカーズ」を作りたくて作りたくて、
もっと言ってしまえばモテたくてバンドをやっていた陣内が今度はモテたくて映画を作っちゃった。「ロッカーズ」はそんな感じすらしたのだが、
かたやこの「69」の作り手たちはどんな意識でこの映画を作ったのだろうか?少なくともモテたいがために作ったのではないだろう。・・・
当り前か。いや、でも「女にモテたい!」ということがテーマなのだからそんな気持ちで作ってもいーじゃん。作り手たちはこの「69」
で何をしたかったのだろう。すんげー楽しい高校生活見せてやらあとも思えんし。
下ネタやうんこネタもオンパレードなのだが、なんかこうハートにガツンときてしまうような下ネタ・・・なんてないんだろーけど、
そーゆーのがないんだよなぁ。なんつーか、ハメが外れてないと言うか、ネタのためのネタというか、うまく言えんが練習のための練習っつーか・
・・。不良性感度足りなか~!みたいな?つまりこう「男の子ゴコロ」にビシバシきてしまうのもが圧倒的に足りなかとですよ。
「GO」のときにもそう感じたのだが、クドカン節と監督のやりたいことが大幅にズレてるんじゃないだろうか。
ちっとも映画がハネてこんのだよね。
でもまあ、
そうは言ってもそれでもそこそこの映画になっているのはクドカン脚本の強引なまでの力強い構成力と魅力的な役者陣の力によるところが大きいのだろう。
特に妻夫木の笑顔はサイコーに魅力的で昔の映画スターのように銀幕が似合っていると思ったですよ。
そりゃこの笑顔見せ付けられたら女の子たちはオシッコちびっちゃうわなぁ。
しかしこの作品、今の高校生の男子が見てどうなのだろう?スッゲー楽しそうとか、こいつらムチャクチャやなぁとか思うのだろうか?「あー、
なんか知らんけど燃えた」とか思うのだろうか?思うとすればお先真っ暗だ。ますます出生率は低下していくだろう。なんつって。
(2004.7.15)
主なキャスト / スタッフ
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