グッドモーニング!ラピュタ阿佐ヶ谷
第六回

槙原 啓二

南風(1951年・松竹)
■スタッフ
監督 : 岩間鶴夫 イワマツルオ
製作 : 小出孝 コイデタカシ
原作 : 富田常雄 トミタツネオ
脚色 : 沢村勉 サワムラツトム
撮影 : 森田俊保 モリタトシヤス
音楽 : 万城目正 マンジョウメタダシ
美術 : 平高主計
■キャスト(役名)
若原雅夫 ワカハラマサオ(濱誠一郎)
高峰三枝子 タカミネミエコ(添島環)
吉川満子 ヨシカワミツコ(母そみ)
柳永二郎 ヤナギエイジロウ(津田青峯)
平野郁子 ヒラノイクコ(妻雪江)
岸恵子 キシケイコ(娘美彌)
伊沢一郎 イザワイチロウ伊澤一郎(伊丹眞之助)
安部徹 アベトオル(秘書木島)
川村禾門 カワムラカモン(事務員)
奈良真養 ナラシンヨウ(橋田九段)
坪内美子 ツボウチヨシコ(女給真弓)

■あらすじ
柔道界の雄、O大学の濱誠一郎は九州からの東京へ帰る列車中で、歌手添島環に出会い、 一目ボレ。環も誠一郎に心をひかれるようになったが、 金の力に任せて強引に環に求婚をしている柔道六段で土建会社の社長の伊丹眞之助という男に彼女は付きまとわれていた。 伊丹は環と誠一郎との接近を不愉快に思い、借金を傘に彼女との結婚を迫るが、思い余った環は、 「柔道選手権試合に勝った人と結婚する」と口から出任せを。 神聖な試合に女性を賭けるなどということは誠一郎の意に染まなかったが、環への愛情のためには後へはひけなかった。 二人の果し合いは二転三転する。

 女々しい姿三四郎。そんな形容詞がピッタリの映画。 一人の美女を巡って二人の愚か者が柔道で果たし合いをするというB級メロドラマの域に収まっている。若原雅夫には珍しい好漢ぶりと思いきや、 そこは所詮「上原謙の補欠」。話が進むに連れて本来の煮え切らなさを発揮している。高峰三枝子はここでも歌手の役どころだが、前前回の 『想い出のボレロ』と違ってそれが物語に全く重きをなさず、一人で悲劇のヒロインを突っ走っている。原作には失礼だが、タイトルの「南風」 も物語からすれば的外れ。若原演じる主人公のニックネームをタイトルにするのがそもそも無理というもの。 タイトルを背負わされるのは彼には荷が重過ぎる。
 戦前の姿三四郎では戦意高揚のために描かれた柔道も、戦後民主主義の本作では自由恋愛の一局面にスケールダウンしている。 そういう意味では民主主義礼賛の映画かもしれない。
 岸恵子の初初しさと、戦後間もない銀座界隈の味わいが見所といえば見所。路地裏の流しが『悲しき口笛』を弾いているのも聞き逃せない。

2005/10/05/11:08 | トラックバック (0)
槙原啓二 ,グッドモーニングラピュタ阿佐ヶ谷
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