松本 卓也 (映画監督)
映画『花子の日記』について
2011年11月26日(土)より、オーディトリウム渋谷にて公開!
ブランド牛の精子を取り戻せ!日韓親娘のハートフルな変態風味コメディ・映画『花子の日記』
(取材/文:デューイ松田)
地味溢れるリブロース/キュートなおじさま軍団について
――普通の映画であればヒロインたちがメインのはずなんですけど、松本監督の場合はおじさまたちが隠れメインで非常にキュート。今回は特に日韓の2人の父親や、その他のおじさまのキャラクター造形に監督のおじさまフェチ振りが炸裂していました。
松本 これはどう切っても切り取れないものですね。僕は男なんでぐっと感情移入するのは男性。もちろん女性を描くときはリサーチするんだけど、男性だと自分のことのように入っていける。思い入れ強いですね。
――男性の中でも、歳の近い人よりおじさまに肩入れしているのは何故ですか。
松本 ジャンプ世代というか、集英社で育った世代でして。僕の中のヒーローはカメ仙人だったり、昔のカンフー映画の師匠だったりするんです。年配の方の魅力って非常に大事で、そういうところを徹底的に描きたいんです。
――花子のお父さん・吾郎役の永島敏行さんと言えば、デビュー当時の『遠雷』(81)とか『サード』(78)のイメージが強いんですが、『花子の日記』では粗野で偏執的、でも憎めない。あまり見たことがないようなお父さん像が楽しかったです。
松本 キャスティングの方が脚本の段階で、絶対永島さんが合うと思うって推薦してくれたんです。僕は逆に永島さんのイメージが固まってない状態だったんで、お会いしたときの永島さんから飛躍させてキャラクター造形をしていきました。お尻を出してもらったり、間抜けに見えるけども本人はいたって真面目で真剣、周りから見ると非常に滑稽。そういう役が合うんじゃないかと思って。
――キムスメちゃんのお父さん、キムさんこと金守珍さんはいかがですか。
松本 優しいお父さんのイメージで、俳優だけでなく素人の韓国人のおじさんも含めて、リサーチも兼ねて会った候補は何人もいたんです。金守珍さんはアングラ演劇界の重鎮なので怖い人かなと思っていたんですが、会ってみると非常にユーモラスでまろやかな方で、会話がツボを突いてくる。脚本の段階で気に入っていただけたようです。金守珍さんのユーモラスな部分を広げて、優しいだけでなく、おっちょこちょいで娘を思うあまりに周りが見えなくなるそんなキャラクターに仕上げていきました。上映の時に劇団員の方に、「よくうちの主催にメイド服着せたなぁ!」って言われたんですが、そんなにヤバかったのかなって(笑)。
――よく分かってないからこそ出来たんですね(笑)。儒教の国・韓国のお父さんって非常に厳しいイメージがあるんですが、そこを優しすぎるお父さんにした訳は?
松本 1つは花子・吾郎親子との対比ですね。実は韓国パートは、大好きな韓国映画に対するアンサーソングなんです。ソン・ガンホが好きで、『グエムル-漢江の怪物-』(06)『大統領の理髪師』(04)の優しいお父さん像からインスピレーションが沸きました。
――一番好きな韓国映画は何ですか。
松本 これ決め辛いんだよね。キム・ギドク監督の『サマリア』(04)かな。面白いつまらないよりもオンリー・ワンなんですよね。最近の作品も金太郎飴みたいでどこ切ってもキム・ギドク(笑)。ジャンルは変わっても根っこの部分は変わらないってのを自分も目指していて。監督で言えばリュ・スンワンで『クライング・フィスト』(05)。もちろんポン・ジュノも好きだし。隠れワードとしては、韓国人の登場人物の名前、監督の苗字にしてるんです。キムさんに、ポンさんも出てくるし、リュ組長!(笑)
――言われなければ分からない(笑)。韓国映画にはまったきっかけは何だったんですか。
松本 元々『シュリ』(99)なんかは観てたんだけど、『大統領の理髪師』に衝撃を受けて、そこからキム・ギドクや『おばあちゃんの家』なんかを観てはまっていきましたね。
映画の中核・ヘレ/
松本監督が固執する人間に固執するワケ
――では次はヘレの部分。監督の人間観察について。松本監督の作品は常に“固執する人間”を徹底的に表現しています。前作『グラキン★クイーン』ならグラビアアイドルに対して、『花子の日記』なら牛肉や精子に対して。その辺はいかがでしょう。
松本 ニッチなところを取り上げたいっていうのがありますね。自分は元芸人で、映画の勉強をまともにして映画を撮り始めた訳ではないんです。自分が変化球であり色物であるのを自覚した上で、人とは違うものを取り上げたい。“お笑い”の原則ってそこにあって、ネタはできるだけ新しいものがいいし、見たことがないものがいい。
『グラキン』で言うと、グラビアアイドルって世間からあまりいい印象ないんですね。おおっぴらに取り扱った映画もないし。まず男女の会話には出ないよね。
――有吉弘行さんがよくネタにしてますよね。
松本 実はグラドルと芸人は凄く共通していて、道具なしで体1つで勝負しないといけない。芸人の場合はしゃべりですけど。気持ち悪い話、男がグラドルたちに応援歌を謳ってもいいじゃないかって。『花子の日記』についても“牛の精子”を追い掛け回す映画を見たことがなかったんですね。日本のイチゴのブランド(レッドパール、章姫)が盗まれて、韓国では実際に8割はそういうものが出回っているらしいです。きちんと法整備されてなかったから。それは他人事じゃなくて、映画や音楽も著作権で守られてはいるけど、時には侵害されることもあります。イチゴのことはたまにニュースでやってるんだけど、周りに聞いても知らない。自分がアウェイだから(笑)アウェイな人達に勝手な共感を持っているんです。
――元芸人という立場から疎外感を感じることがテーマ選びに反映されている?
松本 そうなのかなぁ。ここ近年お笑いブームがあったけど、芸人の地位って上がってないし。アウェイな場所からの応援歌。“牛の精子”って実は重要じゃない?それだけを高らかに謳っても面白くないんで家族ドラマにしたんです。
――主役の半分は韓国の親子で、それに対してこのネタを持ってくるのはやりにくくなかったですか
松本 あくまでフィクションですからね。未来こういう事が起きてもおかしくないってギリギリのところで、ヤクザという存在を使って全てリュ組長のせいにしました(笑)
――松本監督もニッチなモノに固執している訳ですね!
出演:倉科カナ 永島敏行 金守珍 SORA 水野美紀 脚本・監督:松本卓也
企画・制作:シネマ健康会 ©2011「花子の日記」製作委員会
|▶公式twitter|
2011年11月26日(土)より、オーディトリウム渋谷にて公開!
- 監督:キム・ギドク
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