いまおかしんじ (映画監督)
映画『百日のセツナ 禁断の恋』について
2012年 9月29日(土)より1週間、池袋シネマロサにて公開
ピンク映画の巨匠・いまおかしんじ監督が、日独合作のピンク・ミュージカル『UNDERWATER LOVE ~おんなの河童~』(11)に続いて贈る純愛ファンタジーの『百日のセツナ 禁断の恋』が、「ラブ&エロス・シネマ・コレクション」で公開される。天真爛漫なヴァンパイア少女の成長をエッチに優しく描き、『河童』でいまおか作品を知った女性客にもぜひ観てほしい作品だ。初めてのアクション・シーンや王道エンターテインメント的なストーリーとも格闘しつつ、ほのかな「ラブ」と切ない「エロス」を見事に描いたいまおか監督に作品について伺った。(取材:深谷直子)
いまおかしんじ 1965年生まれ。大阪府出身。獅子プロダクション入社後、瀬々敬久監督や佐藤寿保監督らの作品のほか、神代辰巳監督の遺作『インモラル 淫らな関係』(95)の助監督を務める。1995年、『獣たちの性宴 イクときいっしょ』で監督デビュー。脚本家としても才能を発揮しながら、2009年には初の一般館用映画『白日夢』を愛染恭子と共同監督。翌2010年の『島田陽子に逢いたい』も同じく一般館で公開。その後もクリストファー・ドイルをカメラマンに迎えた日独合作のミュージカル『おんなの河童』(11)、山下敦弘監督の『苦役列車』(12)脚本など幅広く活躍中。
――この『百日のセツナ 禁断の恋』は『おんなの河童』に引き続き異界のキャラクターを主人公とするファンタジーですね。ただ無害な河童と違って今回のヴァンパイアにはホラー的要素も入ってくるので監督の作品の中でもちょっと異色作だと思いましたが、ヴァンパイアものを撮ろうとしたのはどういうきっかけからですか?
いまおか これは「ラブ・アンド・エロス・シネマ・コレクション」という企画の1本なんですが、プロデューサーが劇団四季とかの真正面のエンターテインメントが好きな方なんですよ。だからこのシリーズも結構ベタな分かりやすい世界をやって、その中にラブとエロスがあるというものになっているんですよね。俺には最初『バーレスク』(10)みたいなダンサーの話ができないかと話が来て、上手く書けずに煮詰まってたらまたプロデューサーから呼び出されて、「全然違うんだけどヴァンパイアものはどう? 『トワイライト』(08)とかヒットしてるじゃん」と(笑)。入口はそういう軽いノリで、そんなヴァンパイアものなんかやったことはなかったし面白いんじゃないかと思って、それが始まりでしたね。
――キャストが多彩ですが、まず主演の由愛可奈(ゆめかな)さんがとても可愛い方なのにビックリしました。生まれ立てでできそこないのヴァンパイアという役にもすごく合っていましたが、AVの方なので私は知らなくてプロフィールを調べたら、静岡の山奥の出身で、早熟で中学生のときから性的なことへの関心が強くて、とか、とても面白い経歴の持ち主で。元々彼女自身が天真爛漫な方なんだなとも思いましたが、キャスティングのポイントはどういうところなんですか?
いまおか シナリオを書き始めて、イメージキャストと言うかストーリーの作り方を含めて考えていたときに、俺はフェリーニの『道』(54)がとても好きなんだけど、「あれ、これ『道』できんじゃん!」と途中で思ってテンションがグッと上がったんですよ。あの役はジュリエッタ・マシーナが演じたジェルソミーナのイメージでやりたいなと、そういう純真無垢なキャラクターで行きたいなということを思ったんです。で、女優さん何人かに会って、来る人が結構ロリっぽいと言うか子供っぽい人が多かったんですけど、由愛可奈さんは容姿がめっちゃロリータな感じじゃなくて大人っぽいところもあったので、最初は子供みたいだったのがちょっとずつ大人になっていくという変化が付けられるなと思って。それで、役に合うかなと。あの子はオタクっていうのかな、マンガとかがすごく好きらしいんですよ。面接のときもマンガの話で盛り上がって、「手塚治虫先生が~」とか、漫画家の名前にみんな「先生」を付けるんですよ。なんかそこだけオッサンみたいな感じで、それが面白かったですね。
――もう一人のヒロインの辰巳ゆいさんは対照的にカッコイイ感じの人でしたね。日本人離れしたようなルックスでボンデージ・ファッションが似合いますし、アクション・シーンもありますが、すごくハマっていましたね。
いまおか 辰巳さんは前に1本やってるんだけど、元レースクイーンなんですよね。ゴージャスな感じで。彼女も何人か会った中から残った感じです。由愛可奈さんがまずいて、そのキャラクターとぶつけるのにはやっぱ強い感じの方がいいかなと。アクション・シーンは今までちゃんと撮ったことがなくて、やってみて、自分はこういうのすごく苦手なんだなあと思いましたよ。どう撮っていいか分からなくて。普通は細かくカットを割ってテンポよく撮っていくんだろうけど、あんまりそういうことができなかったですね。俳優さんにお任せでしたが、みんな多分アクションをどこかでやってたんでしょうね。辰巳さんも和田(聰宏)さんも忍成(修吾)さんもすごく勘がよくて。僕は何にもしないんですけどみんなどんどんやってくれて助かりました。
――今名前の出た男性二人はとてもイケメンな俳優さんで、こういうエロティックな作品にはあまり出ることのないような方たちですが、このお二人を選ばれたのは?
いまおか まあ最初は『トワイライト』のようなノリがあったので、三枚目よりかは二枚目がいいなと思って、こういう作品だけど出てもいいですよというお二人に出てもらいました。ブラド役の和田さんは瀬々(敬久)さんのエロスっぽい映画(=『刺青 堕ちた女郎蜘蛛』・06)に出てたこともあったんだけど、実はカラミと言うかセックス・シーンは初めてだったんだよなあ。「どうしたらいいですかねえ?」って聞かれて(笑)。「まあ普通に」って答えました。
――そのカラミのシーンというのはとても美しく撮られていて、しかもその後まで長いワン・カットで撮られていますよね。和田さんのほうは経験もなかったとのことですが、何回かやり直したりもしたんですか?
いまおか いや、しなかったね。元々は夜がだんだん明けていくギリギリのところで撮影したいというのがあって、夜中に準備していたのをカメラマンからの要請でもう少し朝に近い時間の方がいいんじゃないかということになってあの時間になったんだけど、要はカットを割らずに自然の夜が明けていくっていう動きと芝居の動きを連動させるということがやりたかったんですよね。
――ひと続きの時間の中で世界が一変していくというシーンですよね。海もとても穏やかでしたが、あれは本当に夜明けだったんですね。
いまおか そうです。あんまりそうは見えないですけどね。太陽が陸側から上がるんで。本当は海から上がればそれっぽかったんですけど、選んだ場所が逆だったんで、しょうがねえなあって(苦笑)。
- 監督:キャサリン・ハードウィック
- 出演:クリステン・スチュワート, ロバート・パティンソン, テイラー・ロートナー, ビリー・バーク, アシュリー・グリーン
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- 監督:フェデリコ・フェリーニ
- 出演:ジュリエッタ・マシーナ, アンソニー・クイン, リチャード・ベースハート, アルド・シルヴァーナ
- 発売日:2009/02/20
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