スコット・マクギー
&デヴィッド・シーゲル
(映画監督)
第25回東京国際映画祭
コンペティション部門出品作品
『メイジーの知ったこと』について
離婚した両親の親権争いの板挟みとなった小さなニューヨーカー、メイジーの災難を軽快なタッチで描いた『メイジーの知ったこと』が東京国際映画祭コンペティション部門で上映され、好評を博した。ヘンリー・ジェイムズの1897年の名作を、気鋭のスコット・マクギーとデヴィッド・シーゲル監督コンビが巧みに映像化。少女の目を通して人間の本当の姿を浮かび上がらせながら、爽やかな感動を呼ぶ極上のドラマに仕上がっている。ダメ母ぶりが最高なジュリアン・ムーアやアレキサンダー・スカルスガルドなど人気俳優たちのアンサンブルが冴え、彼らに負けない輝きを放つメイジー役オナタ・アプリールのいとけなさに魅了された。子供の視点で映画を撮ることを見事に成功させた才気溢れるお二人の監督に、作品について伺った。(取材:深谷直子)
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デヴィッド・シーゲル監督――大人4人の、世代によるキャラクターの違いというのも面白かったです。メイジーの両親のスザンナとビールは華やかな職業に就き、中年になってから生まれた子供に対して責任感が持てないダメな親の極端な例のようでこれも面白い設定ですが、一方のマーゴとリンカーンという若い二人の人物像は新鮮でした。彼らは子守とバーテンダーという腰掛け的な仕事をしていて、おカネもそんなに持ってなさそうですよね。普通だったら育児放棄の話というと、こういう若い人たちが子供を持つことで途方に暮れて、というものになりそうですが、彼ら自身弱い立場ながら赤の他人であるメイジーに愛情を注ぐというキャラクターは意外性のあるものでしたし、とても力強く思う部分でした。
マクギー 最初にリンカーンやマーゴが出てくるあたりでは彼らの欠点というものも見せたつもりなんだ。彼らも決して親として適切ではない。それは彼らとスザンナやビールとの関係がどんなものであるかというところで感じると思う。でも人は成長して責任を持てるようになる。彼らにはメイジーを育てるという責任が芽生えるわけだけれど、それはある意味メイジーが彼らをそこまで育てたとも言えるんだよね。メイジーが彼らを必要としていたので、その必死な思いを受けて彼らは成長するんだ。
――そんな切迫した感情を表現するメイジー役のオナタ(・アプリール)ちゃんの演技がとても自然で見事でした。今回の東京国際映画祭ではニック・カサヴェテス監督の『イエロー』にも主人公の子供の一人として出ていましたが、こういう重要な役をやるのはこの作品が初めてですか?
シーゲル うん、初めての大役だった。とてもキュートで素晴らしかったね。
――オナタちゃんの素晴らしさを感じた撮影中のエピソードをお聞きしたいです。
マクギー マーゴ役のジョアンナ(・ヴァンダーハム)が初めて撮影に加わったとき、既にメイジーとリンカーンの二人の撮影はだいぶ進んでいたので、リンカーン役のアレキサンダー(・スカルスガルド)とオナタはとても仲がよくなっていたんだよね。で、マーゴとメイジーの最初のシーンというのは、学校にメイジーとマーゴが一緒にいるところにリンカーンが迎えに来て、メイジーはリンカーンのことは知らないのでマーゴにくっ付いて離れたがらないというシーンだったんだ。でも実際にはオナタはアレキサンダーと仲よしでジョアンナとは会ったばっかりだったから、状況が逆だったんだよね。そのシーンの説明をしたら、彼女は「あ~あ、逆だったら完璧なのに!」とため息混じりに言ったんだよ。子供なりに状況を理解して皮肉だなあと感じたんだね。
――ちゃんと客観視しているんですね。じゃあそのシーンを演じるときは役を逆に考えるようなことをして切り替えたんでしょうかね?
マクギー そう、それができたんだよね! 実際撮影したらとてもうまく演じていたよ。でも「ジョアンナと行きたくないよぉ」って言いたいような居心地悪そうなところもあったけどね(笑)。ジョアンナともあとでとても仲よくなっていたよ。
シーゲル とにかくオナタは毎日毎日撮影現場に行きたくてたまらない、現場にいることが大好き!という感じだった。その元気さとか嬉しさが伝染して、まわりにいる者がみんな元気づけられるという感じだったね。毎日の撮影がとても特別なものになって、僕も彼女と会えるのが本当に楽しみだったんだ。特別な存在感のある子供だよ。
――この作品が日本で公開されることを願っていますが、そのときにはぜひオナタちゃんも日本に連れてきてほしいなあと思います。学校もあるので難しいかもしれませんが。
マクギー 彼女も日本にはきっと来たがるだろうと思うよ。おばあさんが日本人だから。
――だそうですね。おばあさんは日本に住んでいるんですか?
シーゲル いや、「危険な」NYに住んでいるよ(笑)。でもおばあさんの親戚が日本に住んでいると思う。
――(苦笑)。日本に縁があるということでますます親しみを感じています。ぜひあらためてこの作品とオナタちゃんを紹介してくださるのを楽しみにしています。
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( 2012年10月27日 六本木アカデミーヒルズ49にて 取材:深谷直子 )
監督:スコット・マクギー,デヴィッド・シーゲル
脚本:ナンシー・ドイン,キャロル・カートライト 原作:ヘンリー・ジェームズ 製作:ダニエラ・タップリン・ランドバーグ
製作:ダニエル・クラウン,ウィリアム・ティートラー,チャールズ・ウェインストック 撮影監督:チャールズ・ナットゲンズ
出演:ジュリアン・ムーア,アレキサンダー・スカルスガルド,オナタ・アプリール,ジョアンナ・ヴァンダーハム,スティーヴ・クーガン
©Red Crown Productions USA
- 監督:スコット・マクギー, デイビッド・シーゲル
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- 監督:スコット・マクギー, デイビッド・シーゲル
- 出演:リチャード・ギア, ジュリエット・ビノシュ, フローラ・クロス, マックス・ミンゲラ, ケイト・ボスワース
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