群青いろ
高橋 泉 (監督・脚本)×
廣末 哲万 (監督・俳優)
第35回PFFプレ・イヴェント
ルネッサンスPFF「『群青いろ』のすべて」について
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2013年4月6日(土)~19日(金)、テアトル新宿にて連日レイトショー開催!
高橋泉と廣末哲万による映像ユニット「群青いろ」待望の特集上映が、今年第35回を迎えるPFF(ぴあフィルムフェスティバル)のプレ・イヴェントにて行われる。2004年のPFFアワードで高橋監督の『ある朝スウプは』がグランプリ、廣末監督の『さよならさようなら』が準グランプリを揃って受賞し、PFFスカラシップ作品『14歳』(06)が商業映画として広く話題を集めたあとも、彼らは初期と変わらずインディペンデントで撮り続けながら感覚を一層研ぎ澄ませてきた。作品を公開するためのエネルギーも惜しむようにひたすら純度の高い映画作りをしてきた彼らだが、近年の傑作『FIT』(10)、『あたしは世界なんかじゃないから』(12)で彼らの自信とファンの熱望も高まる中、最高のタイミングでの今回の企画となった。イヴェントの仕掛け人であるPFFディレクターの荒木啓子さんが急きょ立ち会ってくださる中、高橋さんと廣末さんに群青いろの道のりを振り返っていただいた。(取材:深谷直子)
高橋泉(監督・脚本)
『阿佐ヶ谷ベルボーイズ』――今回の上映会で特に観てほしい作品と言うか、なかなか観れない、これは貴重だぞ、というようなものはありますか?
廣末 そうですね、『阿佐ヶ谷ベルボーイズ』(04)、『むすんでひらいて』とか……。
高橋 全部です。
廣末 全部ですね(笑)。
――はい、もちろん待ち望んだ機会なので全部スクリーンで観たいです(笑)。『阿佐ヶ谷ベルボーイズ』はどんなところを観てほしいんですか?
廣末 これは1回アップリンクで松村くんの作品とカップリングで流したんですけど、それきりなんで。
――あ、でもそうやって公開はされたんですね。
廣末 公開、というか……。
高橋 まあねえ、だって廣末くんがトークショーに来ないって言って、代理で僕が行って、そしたら客が二人で(笑)。こっちも松村くんと二人で2対2で、廣末くんが来てたらこっちの人数が勝っちゃうからいなくてよかったっていう。
――囲まれてしまいますね(笑)。
高橋 でもまあそんなの慣れっこですからね。昔の自主上映のころにはお客さんがゼロのときもありましたよ。コヤを1日借りて3回とか4回とか回してたんで、回によっては5人とか10人とか来たりしてたけど、朝イチとか誰もいない。でもいいや、回しとこう、って(笑)。
荒木 そういう状態の上映会を何回ぐらいやってたの?
高橋 それが9回ですね。で、「群青いろ10」はぴあに入選したあとだったんで、割と入りましたけど。
廣末 まあまあ入りましたね、でも上映してたのがそんな大きいところじゃなくて30人で息苦しいというところでしたから。
――どんなところで上映していたんですか?
廣末 新宿の雑居ビルの3階にある「新宿Poo(プー)」っていうところですね。
高橋 最初は「新宿Fuー(フー)」でやってたんですけどね(笑)。今は完全に演芸場になっていて、人力舎のお笑いライブばっかりやってるところで。ずっとそこでやってたんですけど、お笑いブームが来て借りられなくなっちゃったので、新しいところを探したら「プー」っていうところがあって(笑)。雑居ビルの3階で、上映中なのに店員が新聞めくってガサガサ音立てる(笑)。客とかだったらまだ分かるけど、カネ取ってる店員がガサガサガサガサって。
荒木 ワイルドな場所だよねえ(笑)。
――凄まじい歴史ですね(笑)。あと、今回は唯一群青いろ作品ではない『パッション』(11)が特別上映されますが、これはどんな作品ですか?
廣末 元々監督の南部(充俊)さんと知り合いで、これをやりたいから群青いろに手伝ってほしいって言うので、高橋さんが粋に感じて「南部さんが次に進むための道だから」ということで力を貸すことにしたんです。僕も出ることを決めて、カメラとかも任せたいというのでこういうことになったんですが。
『パッション』――群青いろと並べて違和感がないような作品なんですか?
廣末 いやいや、脚本・監督が南部さんですから彼の作品です。
荒木 廣末くんの演技が相当すごいですよ。純粋な人の役です。
廣末 これも家族の話ですね。
――廣末さんは俳優としても他の人にない強烈な個性を持っていますけど、他の監督の作品にも出たいと思っているんですか?
廣末 もちろん出たいです。今度白石(和彌)さんの『凶悪』(13)に出ます。
――山田孝之さんと共演ですね。
廣末 はい、リリー(・フランキー)さんとも。
――すごいキャスティングですね。『海燕ホテル・ブルー』(12)でも持ち味が表れた強烈な役どころでしたが、他の監督の演出を受けるというのは刺激になりますか?
廣末 そうですね、独特な緊張感の中でやれるので。特に若松(孝二)さんのは何も考える暇がないぐらいスピードが速いので面白かったです。
――ぜひいろいろな監督と組んでほしいですね。上映会でいろいろな演技が見られるのも楽しみです。
廣末 あとはどんどん愛枝さんの存在が大きくなっていく。愛枝さんもこの流れで観ていくと面白いと思いますよ。
――そうですね、並木さんも群青いろをすごく支えている感じがします。女優としてもスタッフとしても。群青いろは本当にスタッフもキャストもお二人が好きで集まっている感じがしますよね。長い歴史をお持ちですけど、こうやって撮り続けているというのは映画でしか伝わらないというような強い想いがあるからですか?
廣末 やっぱり表現として映像がいちばんしっくりくるというのがもちろんあって、あと『あたしは世界なんかじゃないから』からは、まあ今までもずっとそうなんですけど、いいのを撮り終えたその日の夜のお酒が美味過ぎるんですよ。特に新作の『あした家族』では、撮ったらまた観て、って初期にやってたようなスタイルでラッシュをやって、飲みながら観てたんですけど、この感じいいなあと思って。いいのが撮れてたら次にまた撮りたくなるし。
――初期衝動を持ち続けているなと思っていましたが、またそれが強まってきた感じですね。
廣末 でも今回はちゃんと一から脚本を一緒に作っているし、そういうところが変わってきてるんですよ。
特集上映「群青いろ」のすべて 上映日:4月8日(月)~12日(金)および15日(月)~18日(木)
『ある朝スウプは』監督:髙橋 泉(PFFアワード2004グランプリ、バンクーバー国際映画祭グランプリ)
『さよならさようなら』監督:廣末哲万(PFFアワード2004準グランプリ)
『阿佐ヶ谷ベルボーイズ』監督:廣末哲万(UPLINK Xにて劇場公開)
『鼻唄泥棒』監督:廣末哲万(ロッテルダム国際映画祭NETPAC賞受賞)
『14歳』監督:廣末哲万(第16回PFFスカラシップ作品、ロッテルダム国際映画祭NETPAC賞受賞)
『夕日向におちるこえ』監督:廣末哲万(ベルリン国際映画祭フォーラム部門)
『むすんでひらいて』監督:髙橋 泉(ベルリン国際映画祭フォーラム部門)
『FIT』監督:廣末哲万(ベルリン国際映画祭フォーラム部門)
『あたしは世界なんかじゃないから』監督:髙橋 泉(東京フィルメックスコンペティション 学生審査員賞)
特別上映『パッション』監督:南部充俊(PFFアワード2011審査員特別賞)※撮影:髙橋泉 主演:廣末哲万