砂田 麻美 (監督)
映画「夢と狂気の王国」について
2014年3月2日(日)より、深谷シネマにて上映
スタジオジブリを題材にしたドキュメンタリー映画「夢と狂気の王国」は傑作である。監督は「エンディングノート」の砂田麻美さん。公開ギリギリに完成した作品のインタビューをおこなった。
(取材:わたなべりんたろう)
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――詳細は書けないんですがラストシーンに驚いたんです。かなり後ろの背景にお葬式のような布が見えます。あれは意図的なんですか?
砂田 そんなのありましたか?覚えていないです(笑)。ただ、あのシーンは宮崎監督の日常なんですね。あのシーンを撮った時にラストに使いたいと思いました。宮崎監督らしさがよく出ているんです。
――確かに今まで見たことのない宮崎監督を見ることが出来る長回しのシーンでした。庵野さんが「風立ちぬ」の主演の声優として抜擢される過程だったり貴重な瞬間も収められています。でも、宮崎監督の引退会見の前に2時間2人きりで一緒にいても撮影しなかったとか。プロデューサーの川上さんによると「何か違うから」という理由だったからと。その撮影する/撮影しないの選択の視点も興味深いです。
砂田 確かに貴重な瞬間だったのかもしれないですが「何か違うから」という理由だけではありません。その時点で、ここは監督が何かを話しても構成上編集に入れることはないだろうと想定できたし、この瞬間カメラを取り出すことで関係性が壊れてしまうことのリスクを考えたんです。結果的に、そのあと会見場のホテルで宮崎監督から大切な言葉を聞くことができました。
――宮崎吾朗監督が川上さんとミーティングで激しくやりあっているシーンも今作には入っています。 もちろん許可があって収録しているのですが驚きました。あそこで宮崎吾朗監督は2世であることの苦しみも話しています。
砂田 あのシーンは物作りをする人、クリエイターと言ってもいいですがそういう方の思いというか、そういうものが強く出ていました。吾朗さんはあそこしか出てこないですがスタジオジブリをドキュメンタリーで描く、そのうえでジブリの後継者の問題はいつもあるわけで。それは息子の吾朗さんだけでなく、他のアニメーターも含めてそうだと思うんですけれども、そのことに触れるシーンなんです。
――今作の公開初日のカウントダウン最速上映の24時からの上映会に参加して砂田さんや鈴木さん、川上さんの舞台挨拶を見ました。そこで砂田さんは「公開ギリギリまで映画が完成しなかったこと」を鈴木さんや川上さんから愛のあるツッコミを入れられていましたが、どのあたりにこだわって完成させたんでしょうか?
© 2013 dwango砂田 今のバージョンになるまでに何バージョンもあるわけです。ドキュメンタリーを作られるのなら分かると思いますが、撮った素材から取捨選択して作り上げていくわけです。そして出来る限り作為的なことはしないでドキュメンタリー映画として作り上げる。始めは依頼されて始まった仕事ですが、これだけ長期に渡って撮影すると何で自分がジブリのドキュメンタリーを作っているかいろいろと考えるんです。完成させた今もそれは分かりません。きっとかなり時間が経ってから分かるんだと思います。自分の感覚をもとに作るのですから、そこに自分の思いは表れていると思いますが本当に今はまだ分からない。これだけ自由に作らせてくれた鈴木さんには感謝していますし、鈴木さんは映画でも分かりますがどの人に対しても的確な距離感で接して、しかも的確なアドバイスを誰に対してもできる方なんです。鈴木さんがいて川上さんもいて、もちろん宮崎さんを始めスタジオジブリの方と多くの協力があって出来た作品です。
――ポスターやチラシにある「ジブリにしのび込んだマミちゃんの冒険。」のとおりなんでしょうね。
砂田 あぁ、そうですね。
――鈴木さんがつけたコピーで「こうすれば映画が失敗しても砂田監督の責任だから」と舞台挨拶で言っていましたが(笑)。
砂田 鈴木さん流の冗談でしょうが(笑)そうですね。ちなみに川上さんは、このコピーまではマミでなくアサミだと思っていたようですが。
――このような見応えのある傑作を続けて砂田監督が作ったことで次回作をとても楽しみにしています。次は2作目に本来予定していたフィクションを撮る予定でしょうか?
砂田 いろいろ考えていますが、まだ分かりません。「エンディングノート」の後は燃え尽きたというか、いろいろ思うことがあって神奈川の海の見える場所に引っ越したんですが、また少し期間は空けるかもしれないですけど..まだ分からないですね。
――楽しみにしています。
砂田 はい。いつになるか分からないですが待っていていただけたらと思います。
( FM TOKYOにて 取材:わたなべりんたろう 撮影/girl_akichi )
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