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『祖谷物語-おくのひと-』初日舞台挨拶レポート

『祖谷物語-おくのひと-』初日舞台挨拶レポート http://iyamonogatari.jp/

2014年2月15日(土)より、新宿K's cinemaほか全国順次公開

昨年10月の第26回東京国際映画祭「アジアの未来」部門でスペシャル・メンションを受賞して話題を呼んだ『祖谷物語-おくのひと-』が、2月15日、新宿K’s cinemaにて公開初日を迎え、蔦哲一朗監督と主演の武田梨奈、大西信満をはじめ、村上仁史、石丸佐知、クリストファー・ペレグリニ、山本圭祐、森岡龍が舞台挨拶に登壇した。(取材:深谷直子)

蔦哲一朗監督
蔦哲一朗監督 武田梨奈
武田梨奈
徳島県・祖谷(いや)地方の四季折々の豊かな自然とそこに暮らす人々の姿を、監督がこだわる35mmフィルムで記録に残したいという思いから生まれた169分の大作。この日はあいにくの大雪に見舞われてしまったが、それにもかかわらず初回上映に駆け付けて観終えたばかりの観客を前にした蔦監督は「長い時間お疲れさまでした。大雪の中ありがとうございました。『祖谷物語』は2011年から撮影を始め、3年間の歳月をかけて、今日東京での公開を迎えることができました。僕にとっては人生のかかった映画を、多くの方々の協力に支えられて無事完成することができたことに深くお礼を申し上げたいと思います」と感慨深そうに頭を下げた。

その後は監督自らが司会を務めて舞台挨拶が進められた。大雪というこの日のシチュエーションが祖谷の厳しい自然を思い起こさせるとともに、俳優たちには撮影時の苦労も生々しく蘇らせテンションを高めるものとなったらしく、時おり若い監督への恨み節も炸裂する無礼講となっていった。
『ヌイグルマーZ』(13)も公開されたばかりのアクション女優として活躍する武田梨奈は、その身体能力を買われてヒロインの春菜役に抜擢されたが、大自然と体当たりで格闘するのはやはり苦しい体験だったよう。祖谷の印象を尋ねられると「日本にこんなところがあるんだっていうカルチャー・ショックがありました。自然はきれいだけじゃなく、厳しいところもあるんだなというのを実感して、ここにいる役者のみなさんは監督のことを恨んだ時期があったと思うんですけど(笑)、町の方々がすごくあたたかかったです。トイレもないところなので、民家に押しかけてお借りすると、お菓子までいただいたりとかして。町の人に支えられながら撮った映画だと思います」と、祖谷の人々の協力に感謝を語りながらも、無茶で壮絶な現場での体験に思いを馳せていた。

都会からやって来て、春菜がお爺と営む自給自足の人間らしい生活に感銘を受ける青年の工藤を演じた大西信満も、同様に祖谷について問われて「この作品は、まずタイトルの地名が読めないですよね。知り合いから『そやものがたり』ってどういう作品?とかよく言われたりしました。地元では有名なところかもしれないけど全国的にはあまり知られていなくて、大西信満 大西信満石丸佐知、村上仁史石丸佐知、村上仁史 山本圭祐、クリストファー・ペレグリニ山本圭祐、クリストファー・ペレグリニ 森岡龍森岡龍三大秘境の一つと言われているということも今回この作品に関わって初めて知ったぐらいだから、作品を通して祖谷という土地がみんなに知られることになればいいなと思います」と、率直ながらもまさに監督が作品に込めたであろう「祖谷の魅力を伝えたい」という願いを代弁して伝えた。

祖谷の住人であり、トンネル工事に携わる土建業者のアキラを演じた村上仁史は、方言の習得などのために撮影の2ヵ月前から現地入りして地元の土建業の手伝いをしていたとのこと。最寄駅からさらに車で1時間以上かかる人里離れた土地での生活に戸惑いつつ、「行ったときは雨が降っていて土砂崩れだらけだったんですよね。その復旧の手伝いとかもさせていただいて身体づくりをして、方言を耳で聞いて、何とか祖谷の人間になれるようにがんばりました」と熱く語った。春菜の親友の琴美役を演じた石丸佐知は徳島出身だが、実際に祖谷に行ったのはこの撮影が初めてだったとのことで、「自然ってこんなに大きいんだ!と自然の美しさをあらためて感じました」と目を輝かせていた。マイケル役のクリストファー・ペレグリニは「山ばかりの風景がすごくて、リフレッシュされる感じもありました」と語り、この日最初に監督への恨みを口にした張本人である田村役の山本圭祐も「星がきれいで心が洗われて、今もきれいなまんまです」と笑わせながら、口々に撮影を通して知った祖谷の大自然の美しさを讃えていた。

昨年はドラマ「あまちゃん」に出演して注目され、蔦監督とは同年代の監督同士でもある森岡龍は、登壇者の中で唯一祖谷には行っていない。監督からそう話を振られて「そうですね、僕だけ東京での撮影で、ロケ地は用賀でしたね。と言うか台本をもらったときに季節ごとの台本で東京パートだけのものだったので、そもそも『祖谷物語』の全体像が掴めなくて、完成した作品を観たときはびっくりしました」と答えると、蔦監督は「僕としては森岡くんを軽くだますような形で台本を渡したというところがあって。狙いどおりに森岡くんは東京編ではっちゃけてくれて、東京で春菜をたぶらかしている彼氏役みたいな感じでやってもらえたのでありがたかったなあと思っています」と、作品のテーマがより強まる東京編で、祖谷と東京の空気の違いを出すための演出であったことを明かした。

蔦監督の演出については大西も絶賛。「季節ごとに3週間とか1ヵ月とか祖谷に行って、本当に何もなく飲料水ひとつ買えないようなところなんですけど、スタッフもみんな出払って自分だけ出番がないというときがあって、待てども暮らせども弁当が届かず、まわりに商店もなくて、俺はこのままどうなるんだろう?って。そういう不安が後半の自分の役にうまく投影できていたらいいなと。(客席から「カップラーメンが……」という声があがり)あれ本当に美味しかったですよ(笑)。思っている以上に田舎暮らしは大変だなと、身を持ってやってみなきゃ分からないところってたくさんあるし、監督の演出は見事だったんじゃないかと思っております」と皮肉交じりのものであったので、蔦監督が「あ、ありがとうございます、狙いどおりということにしていただいて……。僕も撮影スタッフも20代で若いので、プロでやられているみなさんからしたらグダグダな撮影だったと思いますが」と恐縮すると、すかさず「出来上がった画を観たら、やっぱりこれはなかなか撮れるものじゃないと思うので。芝居云々以前に35mmフィルムで撮ったということもあるし、事件や事故がたくさんありましたけど、確かに監督のこと嫌いでしたけど(笑)、最終的に出来上がったものを観て力強い何かが刻まれていればすべてが報われるのかなあと先ほど控室でみんなで喋っていました」と、やはり辛い口調ながらも型にはまらない魅力に満ちた作品を撮り上げた監督に、感銘と愛情のこもった賛辞を送った。

最後に蔦監督からの「自然はきれいなだけではないという映画を撮ったのですが、大雪でまさにそういうことを感じさせるような公開になったなあと思います。今日から1ヵ月間K's cinemaさんで上映していますし、今後全国で公開されていきます。海外のいろいろな映画祭にも招待されていますので、ぜひまわりの方に伝えていただき、今後も『祖谷物語』の活動に注目していただけたらなと思います。どうもありがとうございました」との言葉で舞台挨拶は締めくくられた。

(2014年2月15日 新宿K’s cinemaで 取材:深谷直子)

Story

女子高生が山から降りてきました――。

『祖谷物語 -おくのひと-』場面ある夏の日、川を遡るようにボンネットバスに乗って東京から青年・工藤がやってくる。自然豊かなこの田舎村で、工藤は自給自足生活を始めようとしていた。ところが、一見平和な村では、地元の土建業者と自然保護団体との対立や、鹿や猪といった害獣から畑を守ろうとする人々と獣の戦いなど、様々な問題が起こっていた……。
そんな中、工藤は人里離れた山奥でひっそりと暮らすお爺と春菜に出会う。電気もガスもなく、物もほとんどない質素なこの家の生活は、時間が止まったかのようにゆっくりしている。お爺は毎朝、山の神様が祀ってある社まで山を登ってゆき、 お神酒を奉納する。春菜は一時間かけて山を下って学校に通い、放課後はお爺の畑仕事を手伝う。効率とは無縁の2人の生活は、工藤の心をゆっくりと浄化していく。
しかし、季節が巡るにつれ、おとぎ話のようなお爺と春菜の生活にも変化が起きる。進学に悩む春菜と体調が悪化していくお爺。ずっと続くと思っていたお爺との生活がズレ始めたことに不安を抱く春菜だが、お爺は春菜の心配を余所にいつものように山に出掛けていく。田舎での生活に期待を寄せていた工藤も、 厳しい自然との共存に限界を感じ、自分は所詮文明社会の下でしか生きられないということに絶望を隠せないでいた……。

CREDIT
祖谷物語 -おくのひと- 2013年/169分/35mmフィルム/シネマスコープサイズ/ドルビーSR
監督/製作/脚本/編集:蔦 哲一朗
撮影監督:青木 穣 録音:上條慎太郎 制作/脚本:上田真之 監督補:竹野智彦 音楽:川端啓太
出演:武田梨奈、田中 泯、大西信満、村上仁史、石丸佐知、
クリストファー・ペレグリニ、山本圭祐、森岡 龍、河瀨直美
配給:一般社団法人ニコニコフィルム
http://iyamonogatari.jp/

2014年2月15日(土)より、新宿K's cinemaほか全国順次公開

2014/02/19/22:51 | トラックバック (0)
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