『華魂 幻影』
大西信満さん×川瀬陽太さん×佐藤寿保監督
トークイベントレポート【1/3】
佐藤寿保監督の『華魂 幻影』の封切り館である新宿ケイズシネマで、5月18日、佐藤監督と、主人公の映写技師・沢村役を演じた大西信満さん、劇中劇『激愛』主演男優役の川瀬陽太さんが登壇するトークイベントが行われた。
閉館直前の映画館に謎の少女が現れ、主人公である映写技師をはじめ劇場で働く人々、観客たちが次々に惑わされていく恐怖を描いた本作。欲望を露わにした人間の姿を妥協なく描き、消えゆこうとする映画に対して感傷ではない愛を注いだ映画の面白さが、公開以降じわじわ評判になっている。
若松孝二監督作品や『さよなら渓谷』(13)等で知られる大西さんは、今まで佐藤監督とはそれほど接点がなく、一方成人映画出身で、今や名バイプレイヤーとして活躍する川瀬さんも、意外なことにこれが佐藤監督作品への初参加となる。佐藤監督ご自身も含めたそれぞれのスタンスから、情熱ほとばしる映画作りについて的確に和やかに解き明かされていき、とても充実したトークとなった。(取材:深谷直子)
「男3人でむさくるしい中で真ん中って嫌だな……」と渋りながら登壇した佐藤監督だったが、川瀬さんから映画を作った経緯を尋ねられると真顔になり、「『華魂』というシリーズの第2弾になるんだけど、今どんどんなくなっている映画館を舞台にしました。表層的には映画館だけど、そこで働いている人が見捨てられていくことに対しての危機感が前からあって。映画館は自分自身もガキのときから楽しませてもらった場所であり、これはやらざるを得ないと舞台を映画館にしました」と語った。
佐藤組初参加の大西さんは、「すごく楽しい現場で、あっという間に終わってしまいました。ネット上だとこの映画は“川瀬陽太がグルグル回ってる映画”っていうことになっているらしいですよね」と、規格外な本作の中でもいちばんの驚愕シーンについてさっそく言及。劇中劇『激愛』で川瀬さんが繰り出すアクロバティックな技には当然仕掛けがあり、佐藤監督は衣装合わせの前にそれを試させたそう。とてもアナログな装置を使っていることを川瀬さんが明かしてしまったが、佐藤監督は、このシーンの仕掛けとは、装置を使っていることが分からないよう神経を注いだ「特殊撮影」なのだと説明した。
大西信満「装置を試すときにちゃんとカメラアングルも試して『これだとバレない』というところを確認している。大西さんも『キャタピラー』(10)をやったけど、俺も同じ題材で『乱歩地獄・芋虫』(05)を撮って、大森南朋が演じたんだけど、そのときも手足がない表現は一切CGを使わずに、やっぱりアングルでそう見せた。衣装合わせよりも先にやったのは、時間のない現場だから準備万端で行かないと、って。現場がスムーズに行くように考えているんですよ、考えていないようでいて」と語った。
出演:大西信満 イオリ 川瀬陽太 愛奏 吉澤健 真理アンヌ 三上寛 他
監督・原案:佐藤寿保 プロデューサー:小林良二 脚本:いまおかしんじ 音楽:大友良英
共同研究:東京工芸大学 制作・配給・宣伝:渋谷プロダクション 製作:華魂プロジェクト
© 華魂プロジェクト
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