三浦 誠己 (俳優) 映画『木屋町DARUMA』について【4/5】
2015年10月3日(土)より渋谷シネパレスほか全国順次ロードショー
<関西>大阪:第七藝術劇場 京都:京都みなみ会館 兵庫(神戸):元町映画館
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――大変なシーンも多かったと思いますが、いちばん大変だったのはどんなことですか?
三浦 それはいつもインタビューで訊かれて困るんですが、大変だったことというのはゼロです。大変だけど、そういう仕事やん、っていうのがあるので。例えば川で寝ているシーンとか、撮ったのは6月でしたけど、そうは言っても川は川ですから水は流れていて冷たいんです。でもそれを不快と感じるのかというと、やっぱり演じているときはちょっとテンションが高くなっているのもあって。衣装を着て川で寝て冷たいなと思っても、川から出て休憩していても寒いのは寒いし、それで撮影がスムーズに行くなら、照明を作ってカメラポジションを決めて、というテスト段階から助監督が川に入ってやるよりも俳優が入ってやったほうが早いやん、っていう。それはいいものを作ろうというベクトルの中での作業のひとつとして普通のことかなと思うので、大変だったことというのはゼロです。まあ苦労したっていうのはあると思うんですけどね。
――一緒に映画づくりをしている中で俳優だけが大変だとは言えないと。それもそうですよね。私が観て印象に残ったのは坂本が泥酔するシーンですね。すごく長くて苦労したのではないかなと思いました。
三浦 ああ、そうですね。あそこがいちばん難しかったかもしれないな。やり直しも結構しましたね。酔っ払っている状態って本当に何を言っているか分からない状態だけど、それをそのままやると芝居にならないというか、映画作品として成立しないなあと思ったので。セリフはちゃんと言わなきゃいけないし、勝浦に向き合わなきゃいけないし、でも泥酔しているように見えなきゃいけないっていうところで加減が難しかったです。酔っ払うと同じことを何度も言ったりするじゃないですか? 俳優の生理としてはそれで成り立つとしても、観ているお客さんからしたら「もういいわ、こいつホンマに酔っ払ってんのか?」とか邪魔になるかなあって。あそこはもう1回やり直したいですね。もうちょっとやりようがあった気がするな。
――泥酔の演技ってそんなに難しいものなんですね。坂本がラグビーをあきらめてヤクザになった鬱屈を爆発させる、とても重要なお芝居で、私はちゃんと伝わったと思っています。このシーンの前には坂本と、風俗嬢になった友里と、もうひとりマルチに手を染めるろう者の女性が街で交錯するシーンもあるんですけど、この3人はみんな親の借金の犠牲者という同じ立場なんですよね。そういう歯車をなんとかしようというのがこの映画のメッセージのひとつであると思うんですが、三浦さんはそこはどう考えますか?
三浦 「自分」でしょうね。逆に言うと金持ちに生まれてすべてが満足な環境で育っても「こんな家に生まれへんかったらよかった」ってハングリーに生きてきた人を羨むやつもいるでしょうし、貧乏な家に育っても「こういう環境でよかった」って思うやつもいるでしょうし。僕なんか和歌山の地方都市の平凡なサラリーマンの家庭で生まれて、「こんな家に生まれへんかったらよかった」って思うこともあったし、「こういう環境でよかったな」って思うところもあるし。それを踏まえて大人になって思うのは、そこを「イエス」って言えなかったら人生おもろないんとちゃう?っていうことですね。箸の持ち方から飯の食い方から、生活習慣、考え方まである程度教えてくれたのが親であり、どんなに酷い親父だとしても自分にとって親父はひとりですし。自分の境遇というのは受け入れてどれだけそれをエネルギーに変えて生きていけるかということだけで、それがこの作品のテーマというか描いていることやと思いますね。勝浦なんてきっと何度となく死のうと思った瞬間があったはずだと思うんですよね。坂本もそれを感じ取って「この人を死なせたらあかん」って思った時間とかやり取りがあったんだろうと、やりながら思っていました。意外と難しいテーマですよね。
――そうですね。ヤクザの組長として闊歩していた勝浦にとっては手足を失うことも介護される身になるのもつらいことだったと思いますけど、それでも生き永らえる勝浦はまさにそういう境遇を受け入れたということで。坂本も勝浦がどんな境地にいるかをだんだん知っていって、そこにも葛藤があるわけですけど、本当にいろいろな感情が込み上げてくる作品でした。
三浦 そうですね。エグくてとっつきにくい映画かもしれませんけど、いろんなことを感じてもらえたらいいなと思います。
出演:遠藤憲一,三浦誠己,武田梨奈,尾高杏奈,趙珉和,勝矢,烏丸せつこ,木下ほうか,寺島進,木村祐一
監督:榊英雄 原作・脚本:丸野裕行「木屋町 DARUMA」(オトコノアジト電子書籍出版)
プロデューサー:榊英雄、丸野裕行 音楽:榊いずみ キャスティング:木下鳳華 撮影:今井裕二
美術:井上心平 照明:鹿野克巳 録音:山口満大 編集:清野英樹 助監督:山口雄也
ラインプロデューサー:氏家英樹 主題歌:「空が泣いている」masami
制作プロダクション:ファミリーツリー 配給:ファミリーツリー アークエンタテインメント
製作:「木屋町DARUMA」製作委員会 © 2014「木屋町DARUMA」製作委員会
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