江本 純子 (監督)
映画『過激派オペラ』について【4/5】
2016年10月1日(土)よりテアトル新宿にて
過激なレイトショー公開中
10月29日(土)より第七藝術劇場にて、
11月12日(土)より名古屋シネマテークにて上映
以降順次全国公開予定
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――本当にあたたかみのある素敵な映像ですよね。ロケーションもよかったです。海辺にある春のおばあちゃんの家や、二人が住む古い家など、建物もすごく味があって。
江本 ロケハンはすごく楽しかったですね。制約もいろいろあったんですが、ロケハンを重ねる中で、スタッフのみなさんがだんだんと私の好みを理解してくださって、そこからはいいところがどんどん見つかっていきました。二人の家は墨田区で撮りました。私は場所や美術に関しては、錆びたような質感を求めてしまうんです。稽古場もそういう感じじゃないですか。
――そうですね。私は今年、『二月のできごと』(台本・演出・出演/江本純子 2月24日~29日、池尻大橋・104Rmondで行われた演劇)を拝見したんですけど、それもこの稽古場のようなガレージを会場にしていましたよね。しかも2本のお芝居の間に客席の椅子の向きを変えて、ひとつの空間をそれぞれで別のセットのように使うアイデアに驚きました。
江本 ああ、そうでしたか。『二月のできごと』でのアイデアは一緒にプロジェクトを行った佐久間麻由さんによるものが大きいです。私にとって、演劇を上演する場所はとても大切なんです。俳優の状態も場所も再現できるものではなく、特別性を感じたい。そこでしか表現することができないものを作ること、それが可能なのは、世の中に既に存在している唯一の場所で、そこで作品を作り、上演することだと思うようになりました。場所が見つかったら、今度はそこで、その場所から生まれる作品をどのように観客に提示していくか、一緒に作る仲間と共に、劇の時間が流れていく空間を作っていきます。このような、場所と作品とのつながりについての考えは、映画を作るときにもありました。この映画は基本ロケだったので、カメラと人の距離という制約はたまにありましたが、その場でしか生まれない時間や状態を、ロケをした場所ごとに、俳優やスタッフと共に、常に追求できる面白さがありました。
――ずっと演劇を作ってきた江本監督ならではの、細やかさが行き届いた映画になったと思います。作品の印象としても、観る前のイメージとは少し違い、狂おしくも瑞々しい青春映画になっているなと感じました。監督がこの映画でいちばんのテーマとしたことは何ですか?
江本 「テーマ」を語ることはいつも難しいなと思ってしまうんです。作品を作っていくときのテーマと、お客さんにそれを見せてどうこうしたいというテーマというのは何となく離れていて。私としてはお客さんに見せる前のテーマで止めておきたいんですよ。「これは演劇というひとつのものに夢中になっている人たちの姿を捉えた作品です」という言い方で終わればいいんですけど、お客さんに送るテーマとしては、「それをどういうふうに受け取ってほしいか?」と、もうひとつ言葉を加えなければいけない。それも言うには言えるんですけど、作り手がどこまでそれを言うべきなのかな?と。それは観客が好き好きに、勝手に捉えていくことなんじゃないかなぁと思っています。私にとってはやっぱり映画の中で起こっている現象が全てです。その現象の見え方は観客のひとりひとり、捉えていくことや捉え方が違うと思いますが、それでよいと思います。
出演:早織、中村有沙、桜井ユキ、森田涼花、佐久間麻由、後藤ユウミ、石橋穂乃香、今中菜津美 / 趣里 /
増田有華 / 遠藤留奈、範田紗々 / 宮下今日子、梨木智香、岩瀬亮、平野鈴、大駱駝艦 / 安藤玉恵 / 高田聖子
監督:江本純子 原作:『股間』江本純子(リトルモア刊)
脚本:吉川菜美、江本純子 製作:重村博文 プロデューサー:梅川治男、山口幸彦 音楽:原田智英
撮影:中村夏葉 照明:大久保礼司 美術装飾:SAORI 録音:深田晃 編集:小林由加子
企画・製作プロダクション:ステューディオスリー 製作:キングレコード、ステュ-ディオスリ-
配給:日本出版販売 宣伝:キャットパワー ©2016 キングレコード
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