江本 純子 (監督) 映画『過激派オペラ』について【2/5】
2016年10月1日(土)よりテアトル新宿にて過激なレイトショー公開中
10月29日(土)より第七藝術劇場にて、11月12日(土)より名古屋シネマテークにて上映
以降順次全国公開予定
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――劇団員たちの日常が描かれる中、キャッチコピーに「15分に1度の剥き出しの愛」とあるように、感情を剥き出しにするところもありますし、濡れ場の描写も大胆ですよね。特に冒頭の絡み合ったまま床を転がるというラブシーンなんかはすごく動的に見せてくれる部分で。
江本 ああ、あれは「コンテンポラリーダンスだと思ってやってください」と言った覚えがありますね(笑)。
――(笑)。俳優さんにとって演技の振り幅が求められる作品だったのではないかと思うのですが、演出はどうされているのですか?
江本 台詞を喋ってどうとか、物語を作ってどうとかいう以前に、「彼女たちはこの工場跡地の稽古場で演劇を作っている人たちである」というリアリティが生まれるためのリハーサルをしていたんですね。そのリアリティさえ生まれれば何をしてもいいと。だから今回に関しては、演技への具体的な演出を付けることはあんまりしていないと思います。この毛布教の劇団員たちが本当にいる人たちであり、お客さんにはドキュメンタリーのようにその人たちを観察するように見てもらえたらいいなと思っていて。そこで彼女たちが台詞を言うと、それはもう嘘だし作られたものになってしまうので、脚本は忘れてもらってなるべく彼女たちの言葉で喋ってもらうようにしたし、「自分たちの思うままの態度でお互いに接してください、関係を作ってください」ということをずっとリハーサルで言っていました。
――それは今回映画の演出ということでそうされたのでしょうか?
江本 そうですね。みんなで脚本を読む時間もあったんです。それはそれなりの会話になっていたし、みなさんのお芝居が下手ということは全然ないんですが、私には何だか物足りなくて。書いてある台詞を言ってカメラで撮るということが。結局目の前にあることが生で起こっていないと嫌というのがあって。私が演劇を選んでいるのが多分そういう理由なんですよね、常に生のものを見ていたいという。それが映画になったときに、芝居をフレームの中に収めてしまうというのは私にとって魅力的じゃないんです。だからお芝居で私が欲している臨場感を映画でどうやって出すか?と考えたときにこういう方法を取ったということなのかなと思います。もちろん演劇でも、台詞どおりに言うことを極めていくという作品もありますよ。でもこの映画に関しては、ドラマを撮ることよりもこの人たちがボロボロになっていく生々しさを撮りたいと思って、ずっとそういう環境作りというか、内面作りというか、そんなことをやっていた気がしますね。
――俳優さんたちの生の葛藤が刻まれているんですね。そういう表情を美しく捉える映像も素晴らしかったです。風景などはとてもやわらかに撮られていて、シーンによって映像にメリハリがありました。
江本 ありがとうございます。撮影の中村夏葉さんのおかげですね。
出演:早織、中村有沙、桜井ユキ、森田涼花、佐久間麻由、後藤ユウミ、石橋穂乃香、今中菜津美 / 趣里 /
増田有華 / 遠藤留奈、範田紗々 / 宮下今日子、梨木智香、岩瀬亮、平野鈴、大駱駝艦 / 安藤玉恵 / 高田聖子
監督:江本純子 原作:『股間』江本純子(リトルモア刊)
脚本:吉川菜美、江本純子 製作:重村博文 プロデューサー:梅川治男、山口幸彦 音楽:原田智英
撮影:中村夏葉 照明:大久保礼司 美術装飾:SAORI 録音:深田晃 編集:小林由加子
企画・製作プロダクション:ステューディオスリー 製作:キングレコード、ステュ-ディオスリ-
配給:日本出版販売 宣伝:キャットパワー ©2016 キングレコード
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